大田区の高校生がA380「ホヌねぶた」制作中 リアルさ追求、“ANA公認”で間もなくデビュー

羽田空港にほど近い大田区の都立六郷工科高校で、全日本空輸(ANA)のエアバスA380型機「FLYING HONU(フライングホヌ)」を題材にした「ねぶた」が制作されている。特徴的な4発エンジン、主翼先端のウイングレットまで再現した“本格派”で、ANAの公認も得ている。

同校の定時制課程では「総合的な学習(探求)の時間」の活動の一環で、毎年11月に「六郷ねぶた祭」と銘打ち、生徒が主体となって制作したねぶたを地域の商店街で運行している。ねぶたは本場・青森と同様に、角材や針金、和紙を使って一から手作りする。題材は定番の武者だけでなく、大田区のPRキャラクター「はねぴょん」など、地域にちなんだものも取り入れている。

フライングホヌのねぶたを提案したのは、ともに飛行機好きだという生産工学科4年生の倉田幸紀さんと、国語科主任でねぶた制作を指揮する石川英臣教諭。元々は撮り鉄だったという倉田さんは、羽田空港の新飛行ルート導入で着陸機が自宅近くを通過するようになったことから飛行機にも興味を持った。一方の石川教諭は、物心ついたときから飛行機のおもちゃに囲まれていたという筋金入りの航空ファンで、ANAの機体工場見学にも何度も参加しているという。

▲同校の倉庫に保管されている過去の作品

飛行機のねぶたを作るのは初めてだったが、倉田さんと石川教諭は「作るなら大型機」、「男のロマンは4発機」と意気投合。エアバスA380型機の中でも、国内で唯一の同型機であるフライングホヌを題材に選んだ。制作にあたってANAに問い合わせると、「羽田空港の近くの高校行事に協力できるなら」と快諾された。唯一の条件として、「リアルなものを作ってほしい」という注文がついた。

ねぶたは実機の50分の1スケールで、全長約1.4メートル。ANAが公開している諸元表や寸法図を参考に設計し、寸法が判明しない部分は写真やイラストを見て全体の大きさから推測したという。制作には倉田さんのほか、3名の生徒有志も携わる。8月下旬から放課後などの空き時間で作業を進め、10月中旬に骨組みが完成した。倉田さんは「主翼が大きいので、針金を固定するのが難しかった」と通常のねぶた制作との違いを振り返る。

▲フラップトラックフェアリングの形状が難しく、何度も作り直したと話す倉田さん

祭り本番に向け、現在は紙貼りや色付けの真っ最中だ。10月下旬には、ANA社員や客室乗務員が同校の作業現場を訪れた。客室乗務員の柳原苑果さんは「フライングホヌを選んでくれてうれしい。とてもリアルにできている」と精巧さに目を見張りながら、胴体左側の紙貼りを手伝った。

ところで、実物のフライングホヌはANAブルーの1号機、エメラルドグリーンの2号機、サンセットオレンジの3号機の3種類あるが、ねぶたはどのカラーになるのだろうか。倉田さんに聞くと、「個人的には2号機が好きなのですが」と笑いつつ、ハワイの夕陽をイメージした3号機にする予定だと教えてくれた。石川教諭と、色付けを担当する普通科3年生の白田亜沙子さんから、「オレンジは光を入れたときに色が映える」と提言を受けたのだという。

今年の「六郷ねぶた祭」は11月19日。2020年と2021年はコロナ禍で運行中止。2019年は雨天中止だったため、4年ぶりの復活だ。フライングホヌの登場を予告するポスターも作った。久々の地域運行とフライングホヌの“羽田飛来”に、地元住民も期待を寄せているに違いない。

▲紙貼り作業を手伝うANA客室乗務員の柳原さん(左)

▲ANA社員も作業に参加

▲紙貼りの途中で試験点灯したフライングホヌのねぶた

▲倉田さんが試行錯誤したフラップトラックフェアリングの骨組み

▲(前列左から)制作チームの倉田さん、小原優大さん、白田さん、前川力斗さんと、制作指揮の石川教諭(後列右)