コロナ禍のハワイ、レンタカー高騰やPCR検査施設不足に懸念も 日本人観光客の回復を期待【レポート】

5月24日午前、ダニエル・K・イノウエ国際空港の到着出口を出ると、これまでとは一変した光景が広がっていた。

まず、これまでは旅行会社やホテルの係員が待っていたエリアには、わずか3人しかいなかった。そのうち1人は、私を迎えに来て頂いた、この後のインタビュー先の方。これにはとても救われていたことに、滞在中に知ることになる。あれだけ車がたくさんいた到着階には、ほんの数台しかいない。

ハワイ州の統計によると、この日のフライトには乗員12人を含めた74人が搭乗し、うち25人が観光、5人が出張、3人が親族訪問だった。5月の航空便による到着者数は、羽田発が1,366人、成田発が947人、関西発が184人だった。いずれも乗員を含み、一部の数字には不審な点がある。

アメリカ本土でハワイが大ブームに!

一方、アメリカ本土でのハワイブームは顕著だ。5月の航空便によるハワイへの到着者数は92万人で、そのうち59万人が観光、10万人が親族訪問。到着地ごとにみると、ホノルルには約40万人、カフルイには約26万人、コナには約12万人、リフエには約9万人が訪れている(これには州内の航空便利用者数も含まれている)。出発地別では、ロサンゼルスから約18万人、シアトルから約9万人、サンフランシスコから約8万人が訪れている。日本人に人気のあるワイキキ周辺は、本土からの観光客が多くみられ、カリブのリゾート地と勘違いするほどだ。

アメリカ本土からハワイへは、PCR検査の陰性証明書があれば、気軽に訪れることができる。クルーズは禁止されており、人気があるカリブのリゾートに行けない状況が続く。そんな中で、日本で沖縄、韓国で済州がコロナ禍でも人気であるように、気軽に行けるディスティネーションであるハワイに集中しているという。

現地の人に聞くと、必ずしもホテルが潤っているというわけではないという。「本土の富裕層からは、マウイ島が一番人気、次がハワイ島。オアフ島に来ても、ノースショアなどの郊外に行ってしまい、Airbnbなどの民泊を利用する傾向にある。ワイキキに集まっているのは、富裕層ではない」(旅行業関係者)。1泊1,000米ドルでも、満室の状況が続いているホテルもあるといい、主に西海岸のIT企業でリモートワークができる人の利用のようだ。

出発前に検査を受けていることや、ワクチン接種が進んでいることからも、安心してリゾートを満喫している人が多いように見受けられた。マスクの着用率は、屋外では8割程度だったが、屋外での着用規制が解除されると半分くらいになった。一方で、屋内での着用は義務化されている。

レンタカー不足が深刻化

アメリカ本土でのハワイブームは、思わぬ弊害もある。コロナ禍で保管場所に困ったレンタカーが、船でアメリカ本土に送られたり、売却されたりしたことで、台数不足が深刻化しているのだ。新車の導入も、半導体不足による生産縮小により難しい状況だといい、「引っ越し用トラックで観光している人があちこちにいた。アメリカ人は逞しい」(ホテル関係者)と話す人も。

運良く借りることができた場合でも、通常の数倍であったり、予約ができないケースもあるという。ハワイ島では1日600ドルと、ホテル料金を超えたという話も聞いた。市内のレンタカー会社は休業中のところも多い。

また、オプショナルツアーの送迎を中止しているところが多く、足がないケースが増えている。現地の旅行代理店関係者は、「目的がある場合には、日本出発時に確認や予約をおすすめしたい」と話している。

UberやLyftなどのライドシェアサービスも、コロナの影響で台数が少ない状態が続いており、ピーク時間帯にはなかなか捕まらない状況だ。筆者はアラモアナのウォールマートからホテルまで移動する際、40分待ちだった。空港に向かう際には、Lyftで時間指定予約をしたところ、割安に済んだ。賢く利用したい。

州の規制に注意

筆者が滞在中、屋外でのマスク着用規制が撤廃された。これまでにも、6フィート以上離れることで、屋外での着用制限は緩和されていた。アメリカ本土では、ワクチンの接種が進んでいることから、すでに撤廃されている州もあり、観光客の中には制限を守らない人もいたという。筆者も翌日に聞くまで、規制が緩和されたことは知らなかった。

制限が緩くなる場合は良いが、厳しくなる場合には情報をいかに得るかが重要だろう。簡単なものでは、外務省のメール情報サービス「たびレジ」への登録や、日本人が多いホテルに宿泊したり、パッケージツアーに参加することが一番良いと感じた。

PCR検査施設の不足を危惧

これまで、ハワイ州内の移動でもPCR検査を受ける必要があったが、アメリカ疾病予防対策センター(CDC)のワクチン接種証明で代替ができるようになった。ハワイでのワクチン接種率は50%を超えていることから、検査ニーズが徐々に減っている。

一方で、日本への帰国時にはPCR検査が義務化されており、現地の検査会社が減ってしまえば、日本人の渡航が増えた際に、検査能力が足りなくなってしまう可能性があるという。

HIS(エイチ・アイ・エス)は、自社の検査施設を開設。併設されているホテルもあり、値段や所要時間もまちまち。筆者が行った、シェラトン・ワイキキ併設の検査施設では、15分ほどで検査証明を受け取れ、料金は220米ドルだった。他の施設も概ね300米ドル以下に抑えられているようだ。一部の旅行会社では、検査付きのツアーを販売することも計画しているという。

日本への渡航では、出発72時間以内のPCR検査が必要。厚生労働省の指定フォーマットを利用すると、検査方法に間違いがない。ちなみに筆者が受けた検査では、鼻に綿棒を突っ込む方式だったが、日本のように奥底まで突っ込まれず、中途半端なところでグリグリするので、くしゃみを頻発した。しかも左右両方という念の入れよう。苦痛だ。

夕食は計画的に

今回滞在した、シェラトン・ワイキキ周辺では、ほとんどのレストランはオープンしていた。現在も閉まったままなのはごく一部で、日本人向けのレストランは厳しい状況が続いている。一方で、丸亀製麺は長蛇の列だった。

開いているレストランも、座席の間隔をあけていることから、収容人数が限られ、特に夕食時には客回転が悪い。人気レストランはこれまで以上に長蛇の列になっている。ピーク時間を避ける、事前に予約をするという対策をとりたい。昼食時にはさほどの混雑は見受けられなかった。

この他にも、アップルストアやブランドショップでは入店のための列が見受けられた。買い物や移動には時間に余裕を持っておきたい。

日本人の訪問を待ちわびる観光業関係者

「これだけ賑わっているのであれば、日本人が戻ってこなくてもいいのでは?」と話を振ると、全ての人に否定された。現地在住の日本人は、「日本人がいつ戻ってくるのか、コンビニの店員にも聞かれる」という。筆者の滞在中にも、ホテルのスタッフや本土から訪れている観光客にすら、日本の状況を尋ねられることが度々あった。

ホテル関係者は、「日本人は、景色が良い部屋にお金を払ってくれるなど、単価アップに貢献している側面もあった。ハウスキーパーには毎日きちんとチップを置いてもらえ、レストランでもあまり文句を言わない。みんな帰りを待ちわびています」と話す。日本人に人気があるワイキキのホテルでは、いまだに一部客室をクローズするなど厳しい状況で、地元客向けプランを設定するなど、稼働率アップに努める。

日本からの観光客の戻りを予想し、日本人スタッフを業務に戻すホテルや旅行会社も増えている。ANAはお盆に、エアバスA380型機「FLYING HONU」を、東京/成田〜ホノルル線に投入、ZIPAIR Tokyoは7月より、東京/成田〜ホノルル線の運航を再開するなど、観光再開の機運は高まっている。

とあるホテルの関係者は、「いままでにみたことのない予約が増えた」といい、日本人に多くみられた4泊や5泊といった滞在から、長期化する傾向にあると話す。

5月の人口10万人あたりの新型コロナウイルス感染者数は、日本が589人、東京が1,160人であるものの、ハワイでは2,568人と高い状況が続いている。一方、狭い家に大人数で生活している傾向にあるポリネシアン系など、感染者には一定の傾向がみられる。ハワイ州保健局によると、現在、新型コロナウイルスの感染が確認されている人のうち99%が、ワクチン未接種の人だといい、接種会場をショッピングモールなどに設置するなど、接種を促している。接種が進んでいることで、「これ以上悪化することはない」という安心感もあるという。ワイキキ周辺では、感染者が出たという話は最近聞かないという。

日本からの渡航者の本格的な回復には、帰国後14日間の自主隔離が短縮されることが必要だろう。日本人が戻ってくるのはいつになるかという問いに筆者は、「年末には戻るのでは?」と答えていたのだが、実際にそうであって欲しい。そう思いながら、帰路についた。