修学旅行だけではもったいない 今巡るべき奈良の「うまし うるわし」

穴場夕日スポット「東大寺 二月堂」から市街を一望

大仏殿の東側、丘を少し登ったところに建つのが二月堂。毎年3月に東大寺修二会が行われることで有名だが、実は奈良の市街地を望める場所でもある。遠くに見えるのは生駒山。この日はあいにくの曇り空だったが、晴天の日は美しい夕焼けが広がる。

「安倍文殊院」で文殊菩薩の威容に圧倒される

「阿部」さんや「安部」さん、全国には多くの「あべ」さんがいるが、全ての「あべ」さんのルーツだと言われているのが奈良県桜井市阿部の地だという。そこに大化元(645)年、左大臣の安倍倉梯麻呂によって創建されたのが阿部文殊院。華厳宗東大寺の別格本山だ。本尊は文殊菩薩で、唐獅子に乗っているのが大きな特徴。4人の脇侍を伴って雲海を渡りながら説法し、人々を救う旅に出る姿と言われ、渡海文殊菩薩群像として国宝に指定されている。

「三人寄れば文殊の知恵」という諺もあるように文殊菩薩は知恵を司っており、この安倍文殊院には受験シーズンを中心に多くの学生が祈祷に訪れる。また、文殊菩薩は「降魔の剣」を右手に持ち、人々に降りかかる魔を払ってくれるという言い伝えから、災難除けの仏として古来からたくさんの人が手を合わせてきたという。

境内の浮御堂は、参拝者が災厄を払うための「七まいり」をする場として公開されている。一生の内に7度訪れるといわれる災厄を除けるため、七難即滅・七福即生を願いながら御堂の回廊を7周まわり、7枚の札を1枚ずつ収めていく。

浮御堂の対面には、お寺の境内としては珍しく古墳が存在する。文殊院西古墳と呼ばれ、649年に亡くなった阿倍倉梯麻呂の墓だと考えられている。全国で約60件のみの特別史跡の一として指定を受けている非常に珍しい古墳だ。因みに古墳で特別史跡の指定を受けているのは9件のみで、うち5件が奈良県に存在しているそう。文殊院西古墳は一枚岩の花崗岩の天井を左右対称の石組みが支えている構造で、1,000年以上前に作られたものとは思えないその仕上がりには驚かされる。

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