修学旅行だけではもったいない 今巡るべき奈良の「うまし うるわし」

日本初の厄除け寺「岡寺」で鐘を撞く

「つつしむべき年にて、すぎにし きさらぎの初午の日、龍蓋寺へ まうで侍り(厄年の二月の初牛の日は、龍蓋寺へお参りに行きましょう)」。鎌倉時代の書物「水鏡」の冒頭に、このような文があるという。

日本初の厄除け霊場と言われる岡寺は、明日香村唯一の重要文化財指定建築。正式には龍蓋寺(りゅうがいじ)というが、岡の上にあることから岡寺と呼ばれるようになり、今はその名が定着している。

本尊は如意輪観音の塑像(粘土などの像)で、土の仏像としては日本で一番大きい。約1300年前、奈良時代前半に作られたと考えられており、見える範囲はほぼ1300年前のままの姿だという。土でできた像が当時の姿で残っているのは奇跡的だ。昔はこの如意輪観音坐像、長谷寺の木造十一面観音像、東大寺の盧舎那仏像が日本三大仏と呼ばれていたそうだが、時代とともに変わっていったという。

鐘楼の厄除けの鐘は自由に撞くことができる。鐘をよく見ると、不思議な7つの穴が空いていた。副住職の川俣海雄さんによれば、これらの穴は戦時中の供出のために鐘の成分調査の目的で空けられたものだと言われているという。幸いこの鐘は供出されることなく戦火を逃れ、その所以から厄除けの鐘として多くの人が訪れるようになった。

奈良の新名物を堪能「ほうせき箱」

奈良と言えば鹿や大仏。それに続く”奈良ならでは”としてかき氷を広めたいと考えるのが、かき氷専門店「ほうせき箱」代表の平井宗助さんだ。奈良には氷の神様として知られる氷室神社がある。全国的にかき氷の人気が高まり始めた2014年、「何か面白いことができないか」と考えた平井さんは、かき氷の祭り「ひむろしらゆき祭」を主催した。それがきっかけとなり、翌2015年に「ほうせき箱」がオープンした。

「ほうせき箱」で提供するかき氷には、奈良の水を72時間かけて凍らせた日乃出製氷の氷を使用。かき氷の上に乗せられたエスプーマ(泡状のムース)に使われる素材の果物や抹茶、牛乳、蜂蜜も奈良県産のものを使用するこだわりだ。

▲店内ではオリジナルかき氷グッズも販売している。

観光客の滞在時間が短いと言われる奈良。平井さんによれば、かき氷ファンは1軒で2〜3杯食べるだけでなく、複数のかき氷店をはしごする傾向があるという。「飲食店は普通、近隣に同業店舗ができると競合となるが、かき氷の場合は近隣に良い店ができればできるほど、お客さんがたくさん来てはしごしてくれる。それがかき氷のおもしろいところ」と平井さん。将来的には奈良全体にかき氷を広め、他県から宿泊を兼ねてかき氷巡りができる街になることを目指している。

芸妓プロデュースのお店「つるや」でランチ

▲菊乃さんと愛媛出身の舞妓 菊愛さん。

食事も奈良らしいお店で楽しみたい。かつて栄えた花街、元林院町に位置する「つるや」は、芸妓の菊乃さんが経営するお茶屋。お昼はコースのランチを提供している。夜の営業では、1階は会員制のカウンターバー、2階は誰でも利用できる料亭となる。

最盛期の昭和初期にはおよそ200人の芸妓がいたという元林院町。現在お茶屋として営業しているのは「つるや」だけだ。菊乃さんは花街としての元林院町再興を目指す活動も行なっている。

1 2 3 4