電話でお茶に誘われる JALオペレーター流、笑声の「おもてなし」

-コンタクトセンターにはどんな電話がかかってきますか?

JALナビア,田仲真愛

電話応対のほか、現在はオペレーターのフォローや教育にも携わっている田仲さん © Toshio Tajiri/Flight Liner=15年5月

 JALナビアは主に航空券の予約・発券業務を行い、一般的なお問い合わせやマイレージ関連にも応対しています。オペレーターの人数は約800名で、1日で国内線は約8,000件、国際線は約4,000件のお電話をいただいています。

 最近は、特典航空券の交換・空席状況確認などの問い合わせ内容が多いと感じます。電話は朝と夕方が比較的込みやすいのですが、東京・大阪・福岡・札幌、計4拠点の空いている回線に入電が割り振られるなど、これまでの状況を分析して電話が混まないよう工夫しています。
 
-田仲さんの一日の仕事の流れを教えてください

JALナビア,東京予約センター

天王洲本社にある東京予約センター。全国4拠点あわせて1日平均約1万2000件の問合せがかかってくる © Toshio Tajiri/Flight Liner=15年5月

 出社後、まず運航状況をチェックします。その後に周知事項の確認、ブリーフィング(打ち合わせ)を行っています。ブリーフィングを終えたら、電話応対です。私の場合、1日約7時間半で30本以上、1時間あたり4本弱の応対ができるよう心がけています。

 その日のよって仕事内容がかわり、今ではお客さま対応以外に教官とSV(スーパーバイザー)業務という役割もいただいています。
 
-教官とSV業務とは?

 教官はオペレーターのスキルに応じた研修・教育を行い、入門と基礎1~3の全4回で構成されています。はじめの入門は、敬語や応対用語、ビジネスマナーを学ぶ目的を中心に、敬語やクッション言葉などの練習問題。入社3か月後から1年以内に行う基礎1~3では、お客さまに寄り添った言葉遣いやマニュアル的ではない心からの言葉などを学んで、応対品質の向上を目指します。

 SV業務はお客さま応対を行うオペレーターのフォロー全般です。オペレーターの質問を受けたり、オペレーターが行った応対内容や予約処理に間違いがないか等のチェックも行っています。

 オペレーターの予約記録を二重にチェックするのは、JALをご利用いただくお客さまに迷惑をかけないためです。処理や案内事項に少しでも不安があれば、些細なことでもチェックする体制を整えています。
 
-電話応対のコツってありますか?

JALナビア,田仲真愛

オペレーターは2台のパソコンを使い、的確な情報を利用者に伝える © Toshio Tajiri/Flight Liner=15年5月

 お客さまの問い合わせ内容をしっかり聴くことだと考えています。これは普通のことですが、私も常に心がけていて、新人の応対教育の時にも何度も繰り返し教えています。

 私はこれまでの経験で、お客さまが話し始めた入電直後に「きっとこうして欲しいんだろうな」と感じることがあります。様々なことをお話しされる中で、私が直感的に感じたことが、本当にそうしたいのか確認して初めてわかることもあるし、お客さまから発せられる言葉や声のトーンからもお客さまの状況を把握することができます。
 
-話しは『聴く』。『聞く』ではNG

 私たちが応対するときは、『聞く』ではなく、『聴く』姿勢が大事です。

JALナビア,田仲真愛

会話は心で話を受け止める「聴く」姿勢が大事と語る田仲さん © Toshio Tajiri/Flight Liner=15年5月

 ただ単に話しを聞くだけではお客さまに寄り添うことができません。『聴く』という漢字の構成をみると、「耳だけではなく、十四の心をもって話しを受け止めましょう」という意味にも捉えることができます。

 電話口からは色んな情報が伝わってくるんです。今どういう状況・場所でお電話されているのか、お客さまから発せられる言葉や声のトーン、電話から聞こえてくる生活音など。

 お話している時にいきなり赤ちゃんが泣いてしまったら、「お時間を空けて折り返しましょうか?」と提案してお客さまを気遣うことも大事です。

 お客さまのご希望と、どういう状況で電話してくださっているのかしっかり聴いて、お客さまの心を掴む。「理解をするためには、まずは聴くことから始めましょう。心でお話を聴きましょう」と、みんなにも伝えています。
 
-他の企業でも使えるような第一印象をよくするコツはありますか?

 色々ありますが、一つは声のトーンですね。電話がかかってきた直後の挨拶で、「お電話ありがとうございます。担当タナカです。」と言う場合、抑揚が上がり口調で終わると安っぽいイメージになってしまう。

JALナビア

社内各所にスローガンを掲げ、全社一丸となって世界最高のコンタクトセンターを目指している © Toshio Tajiri/Flight Liner=15年5月

 ”お電話ありがとうございます、担当”までは声のトーンをあげ、自分の名前を名乗る最後は声のトーンをキープするなど、電話応対には抑揚をつけて話すことも必要です。朝なら「おはようございます」と、時間帯に応じた挨拶も心がけています。

 国内部に在籍していた時は、短い時間の中でいかにお客さまに安心していただけるか、「JALに電話してよかった」と思っていただけるような応対を本当に大切にしてほしいと、すごく言われていました。時には先輩に呼び出されて、レコーダーを使った練習をしたこともありました。その経験をこれからもみんなに伝えていきたいですね。
 
-人が好き、JALが好き

 マニュアルでは、基本は「こうしましょう」とありますが、実際に現場で働いているみんなは心から湧き出る思いや言葉を大切にしています。

 JALのオペレーターには人が好き、JALが好きというスタッフや、お客さまに喜んでもらいたいと心から思う人が多い傾向にあります。マニュアルは当然ありますが、顔の見えない会話で、お客さまの気持ちをくみ取っている。応対に慣れてお客さまとの距離感が縮まると、心から自然と湧き出る思いが言葉になって、お客さまのご状況に合う寄り添った言葉が出てくるようになると思います。

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