門限もなく、大浴場&シャワールーム付きの格安ホテル「ホテル ビーバー2」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(11)】

今回は大阪在住の友人と待ち合わせをしている。僕はフードジャーナリストの傍ら、2003年に商業施設のなんばパークスにオープンしたフードテーマパーク「浪花麺だらけ」の名誉館長もしていた。その頃からの付き合いゆえに、もう20年近くになる。

とても居酒屋などアルコールを提供する店舗に詳しい方ゆえに、今回もどこに連れていってくれるかワクワクした。そして向かったのが、動物園前駅から徒歩数分のジャンジャン横丁にある「佐兵衛すし支店」。同じ通りに本店もあるが、今回は支店のほう。

昼から夜まで通し営業で、長年続くお寿司やさん。最近はミシュランで星を獲得するような数万円クラスの寿司コースを提供するA級寿司店も花盛りだが、こちらは真逆ともいえるリーズナブルさを売りにした1軒。「西成泊まりの人にもぴったり」と友人が笑う。

確かにメニュー表をみれば、まぐろ3貫で220円とか、回転ではなく一般寿司店にしてはお得な価格設定で安心した。

特に面白かったのは「あのな巻き」。ごはんの無い巻物で、海老や穴子、かんぴょう、椎茸、厚焼き玉子、高野豆腐、キュウリ、でんぶなどを薄焼き玉子と海苔で巻いたもの。さまざまな食材の美味しさが、時間差で伝わってくる。これで480円だから恐れ入る。ちなみに数の子が加わると「あのね巻き」は520円になるそう。

コロナも落ち着き、こうしてまた友人と語らえる時が来たのは、喜ばしいことだ。さまざまな話をした。約20年も知り合いだと、それこそ多種多様な話題が出る。日常から仕事に役立つようなことまで、本当にさまざま。そして、

「〇〇さん、亡くなったって」

病気だそう。まだ60歳。コロナ禍以前から、ポツポツと同年代やちょっと上の知り合いが旅立つようになった。コロナでも知り合いや友人の妹など、数名が亡くなった。当たり前だけれど、年を重ねるごとに、そんな経験値はUPしていく。こうして自分の覚悟も、少しずつできていくのかもしれない。

その後、数軒をハシゴして、僕は友人と別れ、西成への帰路についた。

今回も門限がないホテルなのは、とても助かる。他の宿泊客に迷惑がかからないよう、最新の注意を払いながら、部屋へと戻り、眠りについた。

翌日、チェックアウトタイムは午前10時まで。大浴場はもちろん使用できないが、嬉しいのはシャワールームが2つあり、午前6時から午後11時までOKな点。ゆえに、起床後にゆっくりとシャワーを浴び、フロントでカギと交換で1,000円を返却してもらい、チェックアウトと相成った。

外は今回も晴れていた。西成の人通りは、コロナが落ち着いたこともあり、以前のような活況を取り戻しつつあった。今後また海外からのインバウンドも見込まれる。外国からの観光客が西成に戻ってきて、また華やかな西成が形成される日も、そんなに遠くないと思った。

■プロフィール  
はんつ遠藤
1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊

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