エティハド航空、2泊無料でアブダビの魅力訴求 業績改善、隣席確保などの新サービスも

エティハド航空は、東京都内で初めてとなる記者懇親会を開催し、稲場則夫日本支社長が現状を説明した。

日本路線は現在、東京/成田〜アブダビ線と名古屋/中部〜北京〜アブダビ線の2路線を運航している。東京/成田線にはボーイング787-9型機、名古屋/中部線には今夏スケジュールからボーイング787-10型機を投入している。当面は新路線を開設せず、2路線の運航を継続する見通し。

子供向けのサービスを提供する「フライングナニー」や、「フードビバレッジマネージャー」といった資格を保有した客室乗務員が、必ず1名乗務する。日本へは投入していないものの、個室タイプの「ザ・レジデンス」では、サボイホテルでトレーニングを受けたバトラーがサービスを提供するなど、他社との差別化を図っている。

2018年度の搭乗率は、東京/成田線は74%、名古屋/中部線は79%。東京/成田線は主にアウトバウンド、名古屋/中部線は中国からの観光客の利用が好調だといい、名古屋/中部線では日本発の航空券の予約が取りづらい状況が続いており、機材を大型化した理由の一つとした。

2017年3月から、東京/成田の出発時刻を午後9時台から午後5時台に早めている。これにより、アブダビでの乗り継ぎ時間がより短くなる一方で、欧州には早朝時間帯に到着してしまうため、ビジネスマンを中心にアブダビで乗り継ぎ時間を開けて到着時間を調整するという人もいるという。

アブダビでのストップオーバーを訴求

現在の日本からの観光客は、ほとんどがアブダビで短時間で欧州や中東、アフリカ各地へ乗り継いでいるという。アブダビで入国した人は、大半が旅行会社のツアー客で、ドバイに向かうケースが多く、アブダビの魅力を訴求することで、利用者を増やしたいとしている。

その取り組みの一環として、4月21日から7月15日までにアブダビで途中降機(ストップオーバー)する乗客に対し、5つ星ホテルの宿泊を2泊プレゼントするキャンペーンを実施する。航空券の購入期間は4月10日から6月15日までで、エティハド航空のウェブサイトのほか、旅行会社経由で購入した航空券も対象となる。対象となるホテルは、コートヤード・バイ・マリオット、インターコンチネンタルホテル、ル・メリディアンなどの15軒。

このシーズンは非常に暑いシーズンではあるものの、シェイク・ザイード・グランド・モスクやルーブル・アブダビ美術館、新しく公開されたカスール・アル・ワタン大統領官邸といった建築物、アラビア砂漠やビーチなど、アブダビで楽しめるアクティビティなどの魅力を訴求することで、再訪を促す。

一方で、航空券の検索時にはアブダビでの乗り継ぎ時間が短い、もしくは価格が安い順に結果が表示されるなど、アブダビでのストップオーバーを促す構造になっておらず、エティハド航空や旅行会社のサイトでは、周遊検索など、アブダビでストップオーバーを考慮した形での検索を利用者自身で行う必要がある。

新ブランドプラットフォーム「賢く選ぼう。」

日本線のエコノミークラスには、今秋にも、シートピッチが約91センチと足元が広い「Economy Space(エコノミー・スペース)」を導入する。この他に、空席の1席から3席を購入できる「Neighbour-Free(ネイバーフリー)」、エコノミークラスでもシャンパンを飲むことができるサービスをはじめとする機内販売メニューも充実させる。これらはエティハド航空のウェブサイトのほか、旅行会社でも販売できるようにする。

「Choose Well(賢く選ぼう。)」のキャッチフレーズは、マーケティング資料やスポンサーシップ、イベントなどで、これまで使用していたスローガン「From Abu Dhabi to the World(アブダビから世界へ)」とともに使用する。

創立15周年、再建プロセス途上で業績は改善傾向

エティハド航空は2003年7月に、アブダビ首長国の国王令(Emiri)によって設立。アラブ首長国連邦(UAE)は7つの首長国から構成されており、アブダビ首長国は構成国の一つ。アブダビ首長国は原油を産出しており、日本との取引が昔から多く、日系石油元売りなどが出資したアブダビ石油などの会社があるほか、日本人学校も存在しているという。ビジネス上の繋がりが大きいことから、駐日アラブ首長国連邦大使は、代々アブダビ政府から派遣されているという。

航空アライアンスに属せず、出資によるパートナーシップを強化。アリタリア‐イタリア航空、エアベルリン、ニキ航空、エアセルビア、セーシェル航空、ジェットエアウェイズと、買収の上で改称したエティハドリージョナル(旧ダーウィン・エアライン)の8社で350都市にネットワークを広げていたものの、多くの会社が経営破綻に陥り、中核を担うエアベルリンや、インドのジェットエアウェイズも運航を停止し、アリタリア-イタリア航空は新たなスポンサーを探している最中。エティハド航空自体も赤字が続いており、経営再建途中にある。エティハド航空では日本支社の規模を縮小し、人員は33名から15名に半減した。今後は出資を伴わず、共同運航(コードシェア)を通じた提携を模索する。

2018年の業績は、旅客収入は500億米ドル(前期同)、貨物収入は8億2,700万米ドル(同5,000万米ドル)で、当期純損失は12億8,000万米ドル(同15億2,000万米ドル)に改善した。座席利用率は76.4%に前期比2.1ポイント減少している。日本線2路線の座席利用率は、ほぼ平均を維持している。

現在は世界49カ国84都市に就航しており、エアバスA380型機を10機、ボーイング787-8型機とボーイング787-9型機を26機など、102機を保有している。2017年末には115機を保有しており、機体数は減少した。年内は機体数を維持する見通しで、その後に確定発注している機体の受領を再開する。

今後5年間で、新たにエアバスA350-1000型機を5機、エアバスA321neoを26機、ボーイング777-9型機を6機導入する。今年第2四半期には、エアバスA320型機とエアバスA321型機に、人間工学に基づいた座席やストリーミングサービスを導入することを予定している。

年末には、アブダビ国際空港に「ミッドフィールドターミナル」を開設する。建物はX型の構造で65ヶ所のゲートを設ける。大きさは北京の新空港やドバイに次ぐ規模となる見通し。延べ床面積は70万平方メートル、年間2,700万人から3,000万人の利用に対応する。

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