日系航空会社のイスラム教徒向け機内食を食べてみた 妙に甘いおかきやハラールの水も【さかいもとみの旅力養成講座】

お水はマレーシアからの輸入品

ハラール機内食の全容。お水もハラール。(写真:さかいもとみ)

続いていよいよ機内食が登場します。

わざわざ「ご注文のイスラム教のお食事持って参りました」とまで言われて届けられたこともあり、ある種の肩身の狭さを感じました。しかもMOML(ムスリムミール)のステッカーがバチバチ貼ってあるのがなんとも異様。自分だけ全く違うモノを食べるという疎外感があります(偏見ありすぎ?)。

「妙な特別視対応」はそれだけではありません。他の方の分が全く配られる前に食べ終わってしまうほど早めにサービスされましたから、「あの人ナニ?どうして先に食べてるの?」と周りの「一般客」の方はきっと思っていたことでしょう。特に何も言わないでフツーのタイミングで持ってきて欲しいです。

さて、機内食の中身を見てみましょう。ちなみに今回紹介するハラール機内食(MOML=ムスリムミール)は香港で積まれたものです。

目を惹くのは、「お水がハラール」だったことです。マレーシアで最も産量の多い「SPRITZER」をわざわざ輸入してきて機内食と共に供給しているようです。これはマレーシアでも食の都として知られるイポー(Ipoh)近郊のタイピンという街で採取されるブランド水ですが、飲めばタダの水です。とはいえ、サントリーのペットボトル水を補充してもらうムスリムが普通にいるのではないでしょうか。

メインはラムカレーのスイートポテト添えでした。マレーシアにあるインド系ムスリムレストラン「ママ(Mamak)」でフツーに出てくる類のメニューですが、妙に凝った怪しい白身魚の洋食メニューよりはずいぶんと作り込んであります。しかし、ハラールメニューとしては、ムスリムの人にとっては当たり前すぎて日本らしさが感じられません。

一般メニューには冷やしうどんが付いていましたが、これのハラール版が待たれます。おそらく、お酒やみりんの成分なしで作るタレの調合が難しい(日本人が食べると多分美味しくないものになる)ところではないかと推察します。

試しに食べてみる価値はある!

メインのラムカレー。東南アジアのムスリムには慣れた味では?(写真:さかいもとみ)

日本国内にあるムスリム向けレストランを探して「ハラールミール」をわざわざ食べに行くのはなかなかハードルが高いと思われます。一方、機内食のスペシャルミールはおおむね出発の48時間前までに注文したら応じてくれます。

ネットでチケット予約した人なら、予約番号さえわかれば航空会社各社のサイトを通じ、予約確認画面から「ハラール(イスラム教徒向け)特別食」を選択するだけとなる。特段の追加料金が取られるわけでもありませんので、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか?

特に東南アジアのムスリム接客をなさっている方は、彼らが現地でどんなものを食べているか知る良い機会にもなるでしょう。是非一度試してみて下さいね。

■プロフィール
さかいもとみ(トラベルライター兼ジャーナリスト)

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドン拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。
旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かして次期開催国である日本に向け発信している。
著書として、中国からのインバウンド旅客接遇について論じた『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)。主な共著に、自身のコラムが書籍タイトルとなった『なぜ南武線で失くしたスマホがジャカルタにあったのか(「鉄道最前線」ベストセレクション 東洋経済オンライン編、集英社)』がある。

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