インバウンド激増でも昭和的に変わらない「ビジネスホテル福助」 【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(20)】

ひととおりの館内探検を終えてまた部屋へ戻り、仕事に必要な荷物だけ持って、取材先へと向かった。

最近は仕事が終わった後はホテルへ向かってチェックインし、近所のコンビニなどで購入した商品などで部屋呑みとなる事が殆どだった。だが今回はすでにチェックインをしている安心感もあり、久々に居酒屋に向かう事にした。今回のビジネスホテル福助には午前0時の門限があるが、時間はまだまだたっぷりだ。

取材先も西成のホルモン焼きだったので、終了後にお客へと鞍替えしてそのまま呑むのも手だったが、ちょっと気になる事があり、以前にも時々伺った、新今宮駅近くの「八福神」へと向かった。それは最近のインバウンド動向。

午後5時すぎ頃だったので、店内は4分の1程度の客数だった。右側がぽっかり空いていたので気になって伺えば「4名の予約がある」そう。酎ハイレモンを呑みながら、名物の肉豆腐を味わっていたら、予約客が入店した。

噂どおりだった。おそらく欧米系の家族でお父さん、お母さん、息子と娘の4名が、同じく欧米系と思われるガイドの男性とともに現れた。

西成は観光地し、このようなインバウンド系が顧客の観光システムが今や存在する。ガイドはメニューをひととおり説明すると帰って行った。家族連れは母国とは違う異空間に興味津々でワクワクしていた。

翌朝は6時ごろ目が覚めた。夜にホテルに戻ったのは午後9時ごろなので大浴場は稼働中だったが泥酔気味だったので自重し、朝にシャワーを浴びる事にした。約9時間の睡眠。

この一連の行動が失敗だった。二日酔いも無くすっきりとした気分でシャワーに向かえば、朝のシャワーは1名分しか無く、先客がいた。時々見に行っても誰かがいた。しかもドライヤーは貸し出しなのだが、午前9時まではフロントがいないので、シャワーを浴びれたところでドライヤーは借りられないというオチまで。

結局、チェックアウトは9時30分までなのだが仕事の関係で8時30分には出発せざるを得ず、シャワーすら浴びられないまま、フロント前のBOXにルームキーを返却して誰にも会わずにチェックアウトした。泥酔気味でも昨晩に大浴場に向かえば良かったと、後悔した。

西成は曇り空だった。

試しに外階段から1階に降りてみたら、外に通じていた。ふと掲示を見たら月額の家賃4万円と書かれていた。長期滞在というよりも居住している方もいるんだ。3畳一間で月4万円は安くは無い気もしたが、共益費や保証金はおろか、水道光熱費もゼロ円ならお得かもしれない。

そして交差点へと向かった。日経平均株価が4万円を突破して過去最高株価になっても、インバウンドでまた外国人観光客が激増しても、朝8時30分の西成の交差点は、相変わらず西成のままだった。

■プロフィール  
はんつ遠藤
1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊

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