インバウンド激増でも昭和的に変わらない「ビジネスホテル福助」 【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(20)】

ここ4回、大阪は西成と言っても1泊3,000円台~5,000円の、いわゆる”高級西成ホテル”に宿泊して紹介させていただいたが、生来の「西成ファン」である自分にとって、どうにもむず痒いというか、「じゃない」感に苛まれていた。もちろん2~3泊出来る程の高価格設定ゆえに、物理的な居心地の良さは抜群であった。しかし、どうにも落ち着かない。

尤もホテルのせいでは無い。インバウンド需要も大阪は回復し、日本人客はおろか外国人観光客も戻ってきた。高価格帯と低価格帯のホテルの住み分けがあってしかるべきなのだが。

そんな気持ちを抱いていたので、今回の西成ホテルは原点回帰で低価格路線にした。

宿は「ビジネスホテル福助」。閉鎖された複合施設「あいりん総合センター」の南方という、まさに西成ど真ん中に位置する。今や安全な雰囲気をかなり醸し出している当地だが、それでもドヤ街的な要素は随所に見受けられ、注意するに越したことはない状況の地域だ。

今回、福助を選んだ理由は幾つかあるが、一番の理由はチェックイン開始時刻が早いという点。なんと午前10時30分から入室できると書かれていた(最終は午後10時)。いつも大阪へは、朝に東京で一仕事を終えてから羽田空港もしくは成田空港に向かい、大阪空港もしくは関西空港に午後1時前後に到着する便が殆どで、その後は直接に取材店舗へと向かうので、チェックインは午後8時ごろ。けれど今回はLCCのPeach、成田空港午前8時30分発、関西空港午前10時10分着。そこで昼すぎにチェックインすることに決めたのだった。

関西空港で、少々の用事をこなした後、南海空港線で向かえば新今宮駅には正午すぎに到着した。元の「あいりん総合センター」沿いには、相変わらず野宿者たちがいた。2022年12月14日に、大阪高等裁判所での二審も野宿者立ち退き命令が出されているが、まだ強制執行は為されていない。

その前を通り過ぎ、3つめの角を右へ(南へ)と進めば、この日は仕事をしていないと思われる日雇い労働者たちなどがうろうろと歩いていた。束の間の静寂的な雰囲気も感じつつ、ホテルへと辿り着いた。

午前10時30分からチェックイン開始と書かれていても、実際は夕方からしか入室できないのでは?という不安をよそに、フロントで名前を告げれば、あっけないほど何の問題も無く、キーをくれた。本当にあっけない。宿帳に記入すら、しない。(笑)

連載では書かなかったが、実は福助にはコロナ禍以前に宿泊した事がある。その当時はルームキーを受け取るのにデポジット(保証金)が500円必要(キー返却時に返還あり)だったが、そのシステムも無くなっていた(キー紛失の場合は1,000円)。チャックアウトの際は、フロント前のBOXに入れればOKのようだ。

そして、以前はエントランスで靴を抜いてスリッパで館内を歩くのは同じだが、部屋番号の書かれたシューズボックスが設置されて、部屋まで靴を持っていかなくてもよくなった。これは鍵がかからないので自己責任ではあるが、監視カメラも作動しているので、まぁ、大丈夫だろう(不安ならば部屋まで持っていく事を推奨)。ちなみに宿泊は男性専用。禁煙ルーム&喫煙ルーム。外国人客は、おそらく皆無。拒絶しているわけでは無いようだが、ほぼオールジャパン。

客室は1階~7階。今回は4階の部屋をアサインされた。

エレベーターを降りれば、廊下の棚にちょっとした書籍も置いてあった。自分は1泊なので必要ないが、長期滞在などであれば重宝するのかもしれない。照明が暗めで、鉄扉が整然と並ぶ昭和的な雰囲気は、なんとなく物悲しくも思えるが清潔感は保たれていた。

ルームキーを回して部屋に入れば、畳仕立ての3畳一間(もちろんバストイレは共同)の和室があった。久々の和室。まさに「The 西成」である。以前に宿泊した別のホテルの和室で、虫が次々に出てきた時のトラウマがまだあるのだが、こちらのホテルは清潔感が保たれていて、チェックアウトまで大丈夫だった。

1泊素泊まり1,700円(税込)。部屋自体は何の申し分もない。

テレビ、冷蔵庫、簡易だがテーブルも。独立型のエアコンもあり、天井のライトも明るい。

しかも多くの西成ホテルでは2つなのに、こちらはハンガーが3つ!

コンセントは1か所しかないが3本使用できる電源タップ(いわゆるタコ足)があらかじめ設置されていた。無料のWi-Fiも各階ごとに提供されていて、試しに下り速度を測定すれば280Mbpsも出ていた。自宅よりもずっと快適。

唯一の欠点は、ドアスコープはあるが、カバーが無い点。いつも通り、シールでホールドした。

試しに布団を敷いてみた。3畳あるので、もちろん余裕だ。第4回で紹介した1.5畳の「ホテル ダイヤモンド」を覚えているだろうか。それに比べたら余裕の空間。

飲食店の取材先へ向かうのは、まだ時間があったので、恒例の館内探検へと向かった。

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