コロナ後のグアムは“大人のリゾート”に 最新日系ホテル「THE TSUBAKI TOWER」栁澤GMに現況と戦略を聞く

コロナ禍が始まって間もない2020年7月、グアムに島内最上級を謳うラグジュアリーホテル「THE TSUBAKI TOWER」が開業した。ハイアット リージェンシー グアムなどを運営している日系のケン・コーポレーショングループが展開する、プレミアホテルグループの新ブランドホテルだ。

真横にグループホテルのホテルニッコーグアムがそびえるタモン湾の高台に建ち、グアム最高層クラスという27階建ての全340室がオーシャンビュー。真っ青な太平洋を見渡せる13平米のテラスでは、グアムのゆっくりとした時間の流れを感じながら朝食を楽しめる。

館内には最上階に高級感あるメインダイニング「ミラノグリル -ラ ステラ-」、ロビー階にオールデイダイニングの「カサ オセアノ」の2つのレストランを持ち、現在はローカルの人々を中心に記念日を過ごす場所として人気を集めている。タモン湾に続くように設けられたインフィニティプールでのナイトプールやファウンテンショーも、特別感ある滞在の演出に一役買っている。

“大人のグアム”を作り上げ、グアムがこれまで取りこぼしていたという準富裕層・富裕層マーケットを開拓しようと意気込むのは、同ホテルの栁澤建ゼネラルマネージャー。開業からこれまでの状況や外国人観光客の動向を聞いた。(取材協力:THE TSUBAKI TOWER)

ローカルとともに歩んだコロナ禍の2年間

▲THE TSUBAKI TOWER栁澤建ゼネラルマネージャー

――コロナ禍真っ只中の2020年に開業。
「当初は3月の開業予定でした。建物が出来上がりチームメンバーもある程度揃った状態で、開業をあまり引っ張るわけにもいかないという実情があり、パンデミックが早急に収束するのではないかという期待を込めて7月にソフトオープンを決めました」

――この2年間の状況は。
「当初、レストランなどの施設は100%の状態で運営するのは不可能に近い状態でした。しかし、ホテルである以上は食事ができる場所を提供しなければいけません。そこで、まずは売店とオールデイダイニングを開け、ローカルの方々をターゲットにしました。『ツバキは素晴らしいね』と思ってくれるようなプロダクトづくりをして、地元と一緒に歩んできた印象です」

▲“グアムの海底”をテーマにしたビュッフェスタイルのオールデイダイニング「カサ オセアノ」

――宿泊に関しては。
「客室が45平米、バルコニーが13平米あるので、ローカルのお客様も宿泊してみたいという意欲があったようです。同時にミリタリーのお客様にもお越しいただき、最近では週末は100室以上稼働するような状況が続いています。本当に感謝しています」

――外国人観光客の状況は。
「昨年、韓国との間で検疫が緩和された時期があり、そのタイミングで韓国のお客様には一度来ていましたが、オミクロン株の影響を受けて12月には元の状態に戻ってしまいました。3月21日から再び検疫が免除されることになり、そこからまた一気に韓国の方の予約が入ってきているという状況です」

――韓国人観光客・ローカル・ミリタリーの割合は。
「現状はミリタリーが7割、韓国の方が2割、ローカルが1割という状況です。この先2〜3か月の予約動向を見ていると、韓国の方が4〜5割に増えつつあります。ミリタリーが3〜4割、残りがローカルです。韓国のお客様が一気に動き始めたようです」

▲57平米のカメリアジュニアスイート。総客室数はスタンダードルーム278室、スイート62室の340室。19階以上はクラブフロアだ

――日本人観光客の動向は。
「長期滞在やワーケーションなどFIT(個人旅行)の方はちらほらとお越しいただいていましたが、日本のお客様は我慢してるのか、周りに気を使ってるのか、ブッキング自体があまり起きていませんでした。日本では3月末までアメリカを感染症危険情報のレベル3に指定しており、帰国時の検疫体制も厳しかったためなかなか動きがなかったのかと思います。4月からはレベル2に引き下げられ、ようやく旅行会社も動き始めました」

プライスリーダーとしてグアム全体を盛り上げる

▲グアムではグループとして初の新築施設となるTHE TSUBAKI TOWER

――グアムではグループ初の新築施設かつ新ブランド。位置づけは。
「グループにおいてはアイコンという位置づけです。グアムを準富裕層、富裕層のお客様にも楽しんでいただけるデスティネーションにしようという目標のもとで動き出しました。グアム政府観光局としても、2020年に観光客を200万人に増やすという『2020年プラン』を掲げ、アッパーマス層や富裕層をターゲットにしたハイエンドのプロパティを新たに作るインベスターを探している状況でした。それなら我々がやりましょうと。我々が考えていた『大人のグアム』を具現化できるプロパティがこのホテルだと思っています」

――富裕層を取り込む。
「グループではハイアットが15年ほどリーダーとしてマーケットをひっぱり、他のホテルも一緒に追随して、付加価値をつけながら客室単価を上げてきました。デュシットさん(デュシット ビーチ リゾート グアム)が開業すると、ハイアットに代わるリーダーとして頑張ってくれました。そして今度は我々がリーダーとして頑張っているという状況です。プライスリーダーになることについては、私はいいことだと思っています。我々はグアムで4割近いシェアを持っているので、グアム全体が盛り上がることで結果的にベネフィットにつながります。プライスリーダーとしてもっと押し上げていかなければいけないと思っています」

食事が美味しいホテルは“色気がある”

▲グアムらしい食材を使ったイタリア料理を提供するメインダイニング「ミラノグリル -ラ ステラ-」。ANAインターコンチネンタルホテル東京の元統括副総料理長がエグゼクティブシェフを務める

――付加価値。特に食事にこだわりがあると感じた。
「客室でゆったり過ごしていただくことを考えた上で、ホテルの中で物事を完結させるためにはしっかりとした食事を提供する必要があります。韓国からも日本からも、舌の肥えた方たちが必ずいらっしゃる。そうなると、朝食でも、お昼のサンドイッチでも、メインダイニングのフルコースでも、ルームサービスでもすべて美味しいものを提供しなければいけません。お客様に『(メインダイニングの)ミラノグリルで食事したいからツバキに泊まろう』と思ってもらえる世界を作れたら“勝ち”だと思っています。食事が美味しいホテルは大抵、“色気がある”と思っています。食事=お酒、お酒=大人の色気。食事がうまくいかなければ、ホテルはなかなか色気が出せません」

――おすすめは。
「食事やお酒を語っておきながら、今のイチオシはスイーツです。日本はコンビニスイーツも当たり前のように美味しい世界です。それがグアムのホテルに来て、コンビニのほうが美味しかったというわけにはいきません。日本の高級なデザートと同じレベルを追求して具現化しました」

▲柳澤GMイチオシのこだわりスイーツがショーケースに並ぶ「ヒネカデリ」

――日本人観光客に向けて。
「滞在型ホテルとして、こだわりある色々なストーリーを準備し、“ジャーニー”を感じていただけるようなプロダクトができていると思っています。お早いお越しをお待ちしています」