「地方都市直行便も考える」 タイ国際航空の日本市場戦略

訪タイ日本人旅行客の増加に向けて「EXPLORE THE UNEXPLORED(まだ知らないタイ探検へ)」をテーマに掲げ、タイのセカンダリーシティ(大都市以外の地方都市)のプロモーションに力を入れるタイ国際航空。今スケジュールでは東京/羽田と東京/成田、札幌/千歳、大阪/関西、名古屋/中部、福岡からバンコクへ、1日最大12便を運航している。セカンダリーシティへは100%持株会社のタイ・スマイルがスワンナプーム空港を拠点として10都市に展開する。

今後の日タイ双方向の地方路線展開や機材計画などについて、タイ国際航空のスメート・ダムロンチャイタム社長と東日本地区旅客営業の山本宏典部長に話を聞いた。

タイの地方都市へ直行便も検討

現在、日本と直行便で結ばれるタイの都市はバンコクのみ。日本からタイのセカンダリーシティへ向かうには、先述のタイ・スマイルに乗り継ぐ必要がある。今後、地方直行便の展開も考えているか尋ねたところ、スメート社長は「実際に実用させてみて、日本側の需要が見込めるようであれば考える」と回答した。まずはチャーター便を飛ばして、日タイ双方のセカンダリーシティ同士を結ぶ路線も検討していく考えがあるという。日本人にお勧めのセカンダリーシティとしてはチェンライを挙げ、「歴史があるし、街並みも綺麗。食事も美味しいので日本の方に好きになっていただけると思う」と話した。

仙台線再開は前向きに検討

タイのセカンダリーシティへの誘客を進める一方、スメート社長は2018年12月から2019年1月にかけて仙台市などを訪問。地元紙の取材などで、運休中の仙台~バンコク線の復活検討に言及している。スメート社長は今回のインタビューで、「日本のセカンダリーシティとして仙台などの紹介をさせていただく可能性も考えている」と発言した。

仙台~バンコク線は2013年12月に就航したのものの、約4か月で運休した。山本部長によれば、仙台からのアウトバウンドは好調だったものの、当時は東日本大震災やタイ国内の情勢不安の影響があり、インバウンドに関しては「機が熟していなかった」という。しかし、2013年にタイ人に対して訪日ビザ免除の措置が取られてから訪日タイ人旅行客は増加傾向。山本部長は、「今はリピーターと、新しいデスティネーションを求めるというスタイルが盛り上がっている」と分析している。現在は主要都市に格安航空会社(LCC)の参入も増えていることから、「差別化を図るということも含めて、新しいデスティネーションをもう一度見直そう」という動きが出ているという。そうした動きの中で仙台は「ポテンシャルのある、両方向(の旅行)を期待できる街」として再就航を前向きに検討中であるとし、「できれば(2019年)冬期スケジュールから運航再開したいとスメートは考えているようだ」と話した。

ポテンシャルある都市には集中的に機材投入

タイと日本の地方都市とを結ぶ路線を巡っては、2018年12月に札幌/千歳~バンコク線が週3便増便。冬期スケジュール期間中は週10便を運航する。山本部長は、「ポテンシャルがあるデスティネーションに対しては集中的に機材を投入して底上げを図る」と話し、増便の背景について「12月以降はタイだけでなく近隣諸国からもインバウンドがフィーダーで入ってくる。そこを期待して、フライトスケジュールにバラエティを持たせることによって送客を図るために違う時間帯で作った」と説明。「日本のお客様にとってもタイのお客様にとっても、フライト時間を選べるというのはアドバンテージだと思う」とアピールした。夏スケジュールからは週7便に戻るが、「次期については機材繰りなどもあるので、まだ考えている」という。

LCCとの棲み分け「楽観視はしていない」

2018年はノックスクートやタイ・ライオンエアなど新たなLCCが日本路線に参入。タイ・エアアジアXも名古屋/中部~バンコク/ドンムアン線を開設した。2019年もLCC各社が大阪/関西や福岡などに就航する予定で、東京以外でもキャパシティーの増加が続く見込みだ。これについて山本部長は、「影響は当然ないことはない」と述べ、「バンコク路線に関しては楽観視はしていないが、我々は我々の強みを全面的に押し出して営業活動を展開していきたい。これは同路線を運航する航空会社すべて同じだと思う」だと話した。LCCとは棲み分けを図るとしながらも、「シーズナリティによっては、お客様の少ない時期になれば、そこも取りに行ける部分は取らなければいけない」と話し、「早い段階でプロモーション料金を出したりして、早期の取り込みをしたりとか、そういう努力をしている」と取り組みを説明した。

東京/羽田線「エアバスA380型機入れたい」

現在、東京/羽田〜バンコク線にボーイング747-400型機を投入している同社だが、世界的に退役が進む同型機の今後について話を聞いた。山本部長は、「ボーイング747型機を退役させる航空会社が多いのは承知している」としながら、「居住性やキャパシティなど、他の機材と比較してまだまだそのメリットも高く、戦略上重要な部分を担っている機材。また、東京/羽田〜バンコク線は堅実な需要を見込める路線なので、可能であれば、エアバスA380型機のような大きな機材を投入したい。本国も同じ考えだ」と述べた。

しかし、羽田空港においてエアバスA380型機は、後方乱気流などの問題でスロットが許可されていない。山本部長は、「ゴールデンウィークや夏休みシーズンを含む夏期スケジュールも、エアバスA380型機の次に座席数の多いボーイング747型機を羽田路線に投入予定」としている。また、「ボーイング787型機は現在メンテナンス中となっており、機材繰りに制限がある」と明かした。