「カンガルールート」の名が無くなる? 豪州〜欧州間直行便、ついに就航【さかいもとみの旅力養成講座】

各社入り乱れ大混戦のカンガルールート

エミレーツ航空 搭乗記 エコノミークラス

オーストラリアから欧州へ行くのに、直行便が物理的に飛ばせない、となるとどこかで給油、もしくは乗り換えをしなければなりません。そこで航空各社はどこか適当な経由地を作って、運航を行なっているわけです。

オーストラリア〜イギリス間は長年にわたって、双方のフラッグキャリアであるカンタス航空とブリティッシュ・エアウェイズが英連邦のシンガポールを経由地にして、大量のフライトを飛ばしていました。ブリティッシュ・エアウェイズの一部の便は、かつて英領だった香港を経由したりもしていました。

そこへ割って入ったのが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイをハブとするエミレーツ航空でした。カンタスとオーストラリア線、イギリス線でそれぞれ共同運航(コードシェア)契約を締結、乗り継ぎ地をシンガポールからドバイに引っ張り込み、さらにブリティッシュ・エアウェイズとの提携を打ち切らせるという大勝負に出ました。折しもエミレーツ航空は、二階建てのエアバスA380型機を大量投入し、「一度はあの巨大機に乗りたい」と思う旅行客を一気に取り込んだのです。

ところがこのオーストラリア〜イギリス線での需要を満たすには、カンタス航空+エミレーツ航空連合だけでは不十分で、シンガポール航空やマレーシア航空、タイ国際航空といった東南アジア各社のほか、エミレーツ航空と常に競争関係にあるアブダビのエティハド航空やカタール航空などがシェア争いに参戦。さらに、キャセイパシフィック航空や比較的運航経費が安いとされる中国各社、ベトナム航空までも入り乱れる大混戦となっています。ちなみにロンドンでは全日本空輸(ANA)が日本経由のシドニー往復を販売していますが、やや遠回りになることから残念ながらそれほど活発に使われている感じがしません。

カンタス航空(チャンギ国際空港)

なお、カンタス航空はこの夏ダイヤから、ロンドン線の運航をシンガポール経由のルートに戻しています。これにあたり、シンガポール政府観光局、チャンギ国際空港の3者は、3年間に渡るマーケティングパートナーシップ契約を締結し、カンタス航空の利用を促進する活動に取り組みます。カンタスグループのアラン・ジョイス最高経営責任者(CEO)は、「シンガポールはカンタス航空にとって、オーストラリア以外で最大のハブになる。」と話しており、経由地を戻すにあたって、多くの駆け引きがあった可能性もあるでしょう。ちなみに引き続き、エミレーツ航空のドバイ経由便は運航されています。

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