その噂は本当か? ”日本最低評価の宿”に泊まりに行ってみた【レポート】

風呂から上がると18時すぎ。シロアリと格闘していたため遅くなってしまった。急いで食堂に向かうと、いくつかおかずが乗ったお盆がすでに置いてあった。食事の上を大きなハエが飛んでいるのが気になる。

「ごはんと味噌汁は台の上に置いてあるから自分で盛ってください」。業務用の炊飯ジャーを開けてみると、今朝炊いた残りだろうか、黄色くなったご飯が3合ほど保温されていた。その隣には冷凍の水餃子を温めたようなスープが並ぶ。あまり食欲はわかないが全く食べないのも申し訳ないので、それぞれ少なめに盛り付けて席に置いた。お盆の上に並んでいるのは、焼き鳥、メンマ、ミニトマト、豆腐、キムチ、イカの塩辛、山菜と牛肉を煮込んだもの、ほうれん草とサバを和えた物など。それとは別に骨付き肉が運ばれてきた。

豆腐に使おうと醤油さしを手に取ると、白いものが表面に溜まって気泡が生じていたのでそっと元に戻した。品数は多いが、すべてのおかずが冷めきっているので食が進まない。17時半から置いていたとしてもこんなに冷たくならないと思うのだが。

食堂の横にある扉は「露天岩風呂」というのれんがかかっていた。ホームページの情報によれば風呂は4か所あるはずだが、特に案内されることはなかった。宿泊客が1人だったので仕方ない。

食堂にある大きな液晶テレビを見ながら黙々と食べていると、玄関の方から「ごめんくださーい」という男性の声がした。おばちゃんの応対を聞いていると、素泊まりで来た工事関係の男性4人組のようで、今日から連泊するようだ。彼らは200番台の部屋番号が1人1室割り当てられ、筆者の部屋の方とは違う階段を登っていった。さらにその後、もう1人宿泊の男性がやって来た。

筆者は酷評されるような外資系航空会社の機内食も特に何も思わず食べられるのだが、今回は本当に食が進まなかった。そこまで味が悪いというわけではないと思うのだが、黄色くなったご飯のべちゃっとした感じと冷めたおかずの組み合わせがよくないのだと思う。それでもどうにかほとんど食べ切り、おばちゃんに挨拶して部屋に戻った。その際に明朝の入浴時間を聞いたのだが、「朝は部屋のお風呂に入ってください」との答えだった。

布団は自分で敷かなければならないので、部屋への戻り際、階段裏にあるシーツ類を持って行く。あるシーツ類はどれがどれかわからなかったが、それぞれ1つずつ取ってみた。部屋に戻って見てみると、シーツ1枚の他は全て枕カバーだった。

押入れの右側を開けると、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた布団の山。左側には毛布や枕が入っていた。上の層に掛け布団、下の層に敷布団が偏って詰まっているので、敷布団を取るには下から掘り起こさないといけない。面倒なので掛布団を2枚取って敷布団代わりにすることにした。


▲押し入れの奥には扉があった。

窓を開けると、夜風に吹かれてカメムシの死骸が転がっていく。時折布団に現れる大きなヤマアリを退治しながら過ごす夜は、東北の山に泊まりに来たことを感じさせてくれる。交通量の多い大通り沿いにある筆者の自宅では、窓を開けると車の音ばかりが聞こえる。宿の設備環境はこの際考えないことにして、静かな地で過ごせるのは悪くない。そんなことを考えながら、せんべい布団で一夜を明かした。

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