次世代航空機燃料イニシアティブ、2020年までのロードマップ公表 安定供給化は技術的に可能

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次世代航空機燃料イニシアティブ(INAF)は7月8日、「次世代航空機燃料のサプライチェーン確立に向けたロードマップ」を公表した。

地球環境問題に対する取組の重要性が世界で高まる中、航空分野においても、国際航空分野からの二酸化炭素排出量を2020年以降増加させない旨(CNG2020)が、国際民間航空機関(ICAO)総会において決議されるなど、カーボンニュートラルな成長が国際公約なっている。一方、米国等において化石燃料に由来しない次世代航空機燃料の供給が始まっている。

これらを踏まえ、日本でも、航空、エネルギー、プラント、商社等の幅広い分野の産官学46組織が参加してINAFを設立し、2014年5月から2015年7月までの約1年間の活動期間、4つの分科会での議論を経て、東京オリンピック・パラリンピックを開催する2020年における次世代航空機燃料の供給を目指したサプライチェーン確立に向けたロードマップを策定し、同日開催された次世代航空機燃料シンポジウムにて概要を発表された。

報告書では、次世代航空機燃料の原料として、都市ゴミ、微細藻類、天然油脂、廃食用油、非可食バイオマス、木質草本系バイオマスの6種類について検討された。6種類の原料は、国内企業が保有または利用可能な製造技術を有し、原料調達および製造技術の観点から製造可能であり、将来の需要拡大に対応できるとされたうえで、2020年度までの次世代航空機燃料の製造とそれ以降の供給量拡大が可能とされた。

2020年までの次世代航空機燃料のサプライチェーンの確立に向けては、燃料製造プロジェクトの事業体を組成、事業計画を策定したうえで、プラントの建設を2019年度までに完了させる必要があるとし、具体案として、2015~2016年度に事業計画を策定、2016~2018年度にプラントの設計・建設、2019年度に試運転開始、2020年度から燃料供給開始といったロードマップが提示された。

また、次世代航空機燃料の製造後、従来型航空機燃料との混合による代替航空機燃料の製造、空港への輸送、航空機への給油に至るまでの過程の整備も必要とされるほか、従来型航空機燃料の取扱と同様に、国際的な指針を踏まえた取扱方法について、2018年度頃までに整備する必要があるとした。このロードマップは、次世代航空機燃料の導入促進に向けた政策インセンティブの存在を前提条件としたうえで、さらなる技術の改良・開発・最適化、副生品の販路確立、従来型航空機燃料と価格面での競争を目指したコスト削減の継続、製造プロセスで多く使用する水素の安定確保等が必要であり、事業化に向けた具体的検討が直ちに開始されることが望まれるとした。

今後の検討課題としては、事業の必要コストから算出される代替航空機燃料価格からは、近年の従来型航空機燃料価格(1リットル当たり約100円)を大きく上回ることは不可避であり、現状のままでは、価格差から当面経済的に事業を成り立たせることは困難であるとした。そのため、価格差を埋める手段として、サプライチェーン各段階の改善よる低コスト化、システム最適化、技術革新、利用者負担、地域負担、公的支援等の各施策の議論を進めるとともに、次世代航空機燃料サプライチェーン確立の重要性、日本が置かれている財政状況等に留意しつつ、幅広い関係者で適切な費用負担の配分に関する議論を深めていく必要があるとした。

結びに、2020年には、日本に今以上の注目が集まり、現在開発中のMRJも飛行していることが予定されているとしたうえで、日本で次世代航空機燃料の製造・代替航空機燃料の供給を開始し、促進することは、観光立国、環境立国、技術立国を標榜する日本の新しいプレゼンスを確立する好機であり、事業推進を加速化させることが望まれるとした。

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