徳島〜香港線が欧州からの誘客のカギに? OAGがセミナー開催

OAGは都内で、「航空関連データから見るインバウンドトラベル」と題したセミナーを開催した。

OAGは英国に拠点を置くデジタル航空情報会社。最新のフライトスケジュールやフライトステータス情報などをデータベースとして保持し、航空関連のマーケティングデータを関係企業・機関などに提供している。

マーケティングに有効な3つの航空データ

講演した同社リージョナル・セールスマネージャーの山本洋志氏は、セミナーの冒頭でまず、マーケティングに有効な航空データとして「スケジュールデータ」、「マーケットサイズデータ」、「コネクションデータ」の3つがあると紹介した。

「スケジュールデータ」はその名の通り航空機のスケジュール情報だが、このデータには各便の機材情報、つまり座席数が含まれている。各航空会社が公表するロードファクター(有償座席利用率)のデータと合わせることで、各航空会社・路線の輸送人員数がおおまかに推測できる。また、機材大型化・座席供給数増加などの傾向を見ることで、各国の経済状況を読み取ることができるという。

「マーケットサイズデータ」は、旅客の流動データ。一般的には国交省や日本政府観光局(JNTO)が発表する出入国者数がマーケティングに利用されているが、OAGではMIDTデータやBSPデータと呼ばれる、入国者数に加えて”旅行会社の予約数を元に”作ったデータを提供している。このデータで旅行客の利用航空会社や国籍、シートクラスを見ることで、ピンポイントなマーケティングができる。

「コネクションデータ」は乗り換えのデータ。特に地方空港のマーケットに有用で、ある都市からある都市を経由した場合、どこに飛ぶことができるかを見ることでマーケティングの可能性を広げられる。

訪日外客4,000万人に向けて800万席増席を

OAGのデータによれば、2018年の日本における国際線総座席数は約5,900万席。路線別に見ると、大阪/関西~ソウル/仁川線が1位、その後に東京/成田~台北/桃園線、大阪/関西~香港線が続く。政府は2020年のインバウンド4,000万人達成を掲げているが、2017年の実績では国際線の総座席数は約5,630万席。入出国者数は国交省のデータで約4,660万人となっており、残り約970万席が利用できる。

ところが、2017年はインバウンドが約2,870万人と発表されており、4,000万人達成には差分として約1,100万の座席数が必要となる。つまり、「座席数だけで見ると2017年の数字をキープしても4,000万人には達しない」と山本氏は指摘する。

一方、2017年から2018年にかけては340万席増加していることから、「インバウンドだけが利用するのであれば4,000万人は現実的」としたものの、「2020年に向けて800万席増やすのが安全牌。かなりの数だ」と述べた。

航空データを基にコンサルティング

続いて山本氏は、先述した3つのデータの活用事例を紹介。

スケジュールデータは「供給データ」と捉えることができ、航空会社ごとの座席供給数の伸び、時間帯ごとの離発着本数がわかる。これらは、ターゲットを絞ったマーケティングに活用できるほか、インバウンドの到着時間帯を研究することで効率的な言語対応に役立てられるという。

マーケットサイズデータについては、人の流動をグラフなどに可視化して利用する事例を紹介した。山本氏によると、例えばシンガポール~東京/成田線の約8.4%の利用客が成田到着後、千歳に移動しているという。従って、北海道へシンガポールから誘致したい場合は直行便を開設するだけでなく「東京/成田~札幌/千歳線を強化すれば人の流れをつくることができる」と説明した。このように、流動データを見ることで、新たな人の流れを考えるということもマーケティングに必要だという。

コネクションデータは「可能性のデータ」と見ることができる。山本氏はこのデータの説明にあたって、12月にキャセイドラゴン航空が開設する徳島~香港線に触れた。同路線の開設により、香港経由で欧州からの誘客の可能性も期待できるという。また、アジアではハブ空港を利用するという考えも根強いことから、「直行便を飛ばしたいか、ハブを利用したいか、データを見ながらターゲットを絞って誘致するのも一つのポイント」と説明した。

山本氏は「日本においてスケジュールデータは非常に重要」と話す。島国の日本の場合、基本的に出入国は航空機または船舶となるが、国際定期船は航空機に比べ非常に少ない。つまり、航空機の座席数をそのまま日本出入国のトータルキャパシティとして見ることができる。

OAGではこれらのデータの他、海外市場のトレンドや就航先視点でのアドバイス、空港のスロット(発着枠)、新規路線のトレンドなどのデータを提供できるという。山本氏は「データから見える部分と、データに表れない影の情報を提供することで、より深いコンサルティングを提供することができる」と締めくくった。

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