羽田空港、1タミ北サテライト9月1日供用 1993年以来の大規模拡張、JALとスカイマークが発着
雷や豪雨などの異常気象が激甚化・頻発化する中、日本航空(JAL)グループは対策を強化している。羽田空港では、グランドハンドリングスタッフの退避場所となる牽引式のトレーラーハウスを導入。平常時は熱中症対策のクーリングスペースとして使い、雷雨時には緊急退避場所として活用する。運航面ではAIを活用した被雷回避予測システム「Lilac(ライラック)」を運用し、「空」と「地」の両面から安全確保と安定運航につなげる。
羽田空港では、雷の接近状況に応じて3段階の警報を運用している。空港から半径約50キロ以内で雷雲が観測され、接近する可能性がある場合は「注意報(Thunderstorm Warning)」、約20キロ以内で雷雲が観測されるか、雷鳴や雷光が確認される場合は「警戒警報(Thunderstorm Warning Condition 1)」、約8キロ以内まで雷雲が接近するか、空港付近で雷鳴や雷光が確認された場合は「危険警報(Thunderstorm Warning Condition 2)」を発令する。
Condition 2になると、ランプエリアで航空機の発着に関わる作業をすべて中止し、地上作業者に機内や施設内、車両内への退避を指示する。ただ、広大なランプエリアでは作業場所から建物まで距離があるケースも多く、雷雲が急接近した際に素早く退避できる場所の確保が課題となっていた。
加えて、夏場のランプエリアは強い日差しを遮る場所が少なく、航空機の到着を待つ間などに体を冷やせる場所も限られる。近年の猛暑を受け、熱中症対策も大きな課題となっている。
そこでJALグループは8月13日、羽田空港に牽引式の「退避用トレーラーハウス」を導入した。主にターミナルから離れた駐機スポット付近に配置し、平常時は休憩やクーリングスペース、雷雨時には緊急退避場所として使う。
車体は全長4.56メートル、幅1.96メートル、高さ2.39メートル。室内にはベンチシートのほか、エアコンや冷蔵庫、充電用コンセントなどを備える。雨具を着たまま入ることを想定し、床面には防水処理を施して排水口も設けた。平常時は6〜8人、緊急時には約10人の収容を想定している。
電源には容量13.4キロワット時のリチウムイオンバッテリーとソーラー発電を採用した。バッテリーだけでもエアコンを最大約10時間連続運転でき、省電力モードでは約24時間の冷房運転が可能としている。使用後は既存の充電設備につなぎ、約8時間でフル充電が可能。
導入を担当したJALグランドハンドリング企画部BPR推進室企画グループの市村優マネージャーは、夏場は熱中症や雷への対策、冬場は暖を取る場所として、年間を通して活用できると説明する。
導入初日には実際にCondition 2が発令され、地上作業者が車内へ避難した。市村マネージャーによると、利用したスタッフからは、車内の涼しさや、作業場所の近くに退避場所がある安心感を評価する声があったという。
まずは羽田空港に1両導入して稼働時間や使い勝手、快適性などを検証し、2027年以降の本格導入につなげる。2027年6月以降には大阪/伊丹、東京/成田、福岡への展開を予定しており、札幌/千歳への導入も検討している。
一方、運航面ではAIを活用し、航空機への被雷を回避する取り組みを進めている。
航空機が飛行中に被雷すると、到着後に機体の点検が必要となり、損傷が見つかれば修理や代替機の手配が発生する。遅延や欠航につながることもあり、特にボーイング787型機やエアバスA350型機など、炭素繊維複合材(CFRP)を多用する機材では修理が大規模になりやすい。JALでは、被雷による修理費や機材が使用できない間の逸失利益などを含め、年間数億円規模の損失が生じているという。
2024年度から運用を始めたLilacは、航空機が雷の発生する可能性が高い領域に進入することで引き起こされる「誘発雷」のリスクを予測する。通常の気象レーダーでは弱い雪雲や雨雲としてしか映らない場合でも、Lilacでは被雷する可能性が高い領域を事前に把握できるのが特徴だ。
予測した被雷リスクは、文字を組み合わせて図として表現する「ASCII ART(アスキーアート)」に変換して航空機へ送信。パイロットは機上のウェザーレーダーや目視による情報と組み合わせ、必要に応じて進路を変更して高リスクのエリアを避ける。
冬季には、雷雲としては弱く見える雪雲でも誘発雷のリスクが高い場合がある。2026年1月15日の新潟周辺では、雨雪レーダーで強く表示される範囲よりも広く、Lilacが70〜80%以上の被雷ポテンシャルを検知したという。
実際の運航でも回避に活用されている。8月12日の東京/羽田発シドニー行きのJL51便(ボーイング787型機)では、出発前に被雷ポテンシャルの高い積乱雲を確認。離陸後すぐに進路を変更し、対象エリアを避けて飛行した。
Lilacの運用開始以降、JALと日本エアコミューター(JAC)の被雷件数は減少傾向にある。2023年度の75件から、2024年度は56件、2025年度は43件となり、それぞれ前年比25.3%、23.2%減少した。整備件数も2024年度の178件から2025年度は96件に減り、特に787型機では71件から28件まで減少した。
JALオペレーション安全・品質推進部の松澤弘樹主任は、複数の要因が影響するため、減少のすべてがLilacによる効果とは断定できないとしながらも、「一定の効果があると判断している」と話した。