グアムに出現した24時間営業の“ドンキ村” 島の新たなナイトスポットに【レポート】

みなさんは「ドン・キホーテ」は好きだろうか。筆者は狂信的“ドンキフリーク”だ。学生時代は都内各地の店舗に週8ペースで通っていたし、今でも地方に行ったときは「視察」と称して現地の店舗に足を運ぶ。数年前にシンガポールへ遊びに行ったときは、当時オープンしたばかりの東南アジア1号店に真っ先に行きたいとせがんで同行者に呆れられた。ちなみに自宅にはドンペンのぬいぐるみもいる。「ドンキに通えば社会がわかる」とは筆者が今勝手に考えた格言だが、実際のところ、ドン・キホーテの販売・マーケティング戦略からは学ぶことが多い。

▲東南アジア1号店のDON DON DONKI オーチャードセントラル店

そんな筆者が愛してやまないドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が、グアムに「VILLAGE OF DONKI」なる巨大施設を4月25日にオープンした。ドン・キホーテの海外型店舗「DON DON DONKI」を核テナントとするショッピングモールで、東京ドーム約1.8個分の広大な敷地はPPIHグループ最大規模だという。

DON DON DONKIは米国圏には初進出となる。「あれ、ドンキってハワイにもあるよね?」と思った人もいると思うが、実はドン・キホーテの海外店舗には複数の業態がある。ハワイに3店舗ある「Don Quijote(ドン・キホーテUSA)」は、現地企業から取得した店舗をリブランドしたものだ。一方、今回グアムに進出したDON DON DONKIは主に東南アジア向けの業態。「ジャパンブランド・スペシャリティストア」という位置づけで、日本市場向けや日本製の商品をメインに取り揃えている。

さっそく“ドンキ村”に行ってみた

リゾートホテルが軒を連ねるタモン地区から車を走らせること5分ほど。幹線道路の1号線からグアム空港方面へと続く10A号線に曲がる交差点の角に、件の“ドンキ村”があった。空港からも約5分と好立地だ。

ドン・キホーテといえば、黒と黄色の警告色の看板のイメージがあるが、VILLAGE OF DONKIは大人しいブラウン系の外観になっており、現地の景観や雰囲気を損なわないように配慮されているようだ。メインエントランス側の柱は、グアムの古代チャモロ文化の象徴であるラッテ・ストーンがモチーフになっている。

核店舗のDON DON DONKIに入ると、まずは広いの一言。日本の店舗を含めても最大級の売場面積だという。ジャングルのように所狭しと商品が並ぶ日本の店舗とは違い、全体のレイアウトに余裕がある印象だ。まとめ買いが基本の現地の習慣に合わせて、カートが通りやすいように通路もかなり広くなっている。

正面入り口付近には、日本製の商品が並んだ日用品売り場と、その隣に土産物売り場が並んでおり、ローカル客にも観光客にも足を運んでもらいたいという意図が見て取れる。土産物売り場にはチョコレートやクッキーといった定番の商品だけでなく、グアムで日焼けした(?)ハローキティやマイメロディのぬいぐるみなど、サンリオとのコラボ商品も。シュールなデザインのTシャツも揃っており、ドン・キホーテらしい“カオス感”が感じられる。

あのカオス感を演出する要素の一つに、「ドンキ文字」と言われる独特なフォントを使った手書きのポップがある。日本では多くの店舗に専属の「ポップ職人」がおり、店舗ごとに独自でポップを作っているという。ここでも件のポップが各所に見られるが、一体誰が描いているのだろうか。担当者に質問すると、「シンガポールのポップライターに来てもらい、地元スタッフの研修をしました」とのこと。今はグアム店専属のライターが作っているという。

さて、店の奥に進んでいくと食料品売り場が現れる。メイン動線となる通路の片方が日本製商品、もう片方が米国市場向け商品と分けられている。

ここで積極的に行われているのが実演販売だ。食文化や食習慣が日本と似ているアジア圏と違い、グアムの現地住民からすれば日本の食品は見慣れないものも多い。そこでまずは日本の食品を店頭で試してもらい、親しみをもってもらおうという狙いだ。この日は急須で淹れた玄米茶とほうじ茶の試飲が行われていた。

生鮮食品も充実している。なかでも品揃えが豊富なのが精肉コーナー。日常的にバーベキューをする現地の習慣に合わせて、厚切りサイズの牛肉や豚肉が多い。しゃぶしゃぶやすき焼き用といった日本スタイルの薄切り肉も揃う。海鮮コーナーに並ぶ刺盛りも現地住民にとっては魅力的だろう。

惣菜コーナーには対面販売ブースもある。店内調理のローカルフードが並べられ、好きなものを選んでランチボックスを作れる。担当者は「どちらかというとローカル客向けですが、グアムらしいものを食べてみたい観光客にもおすすめです」と話す。白米に関しては日本から玄米を取り寄せ、店内で精米しているという。

地下は酒類などの飲料売り場。背の高い棚が並んだバルクセール(ケース売りコーナー)もあり、まるでコストコのような雰囲気だ。焼酎やジャパニーズウイスキーも豊富に揃う。日本酒売り場を眺めていると、担当者が「驚くようなお買得商品もありますよ」とこっそり教えてくれた。

帰国直前のお土産探しにも最適

本来はジャパンブランド特化型のDON DON DONKIだが、グアム店では販売する約25,000種類の商品のうち、約4割がグアムオリジナル商品や北米向けの商品。担当者は「米国本土のプロダクトを求める地元住民のニーズもカバーしたい」と狙いを話す。

オープン当初は午前6時から翌午前0時までの営業だったが、5月13日からは24時間営業が始まった(地下フロアは午前9時から翌午前2時まで)。「深夜営業については、ローカル客のニーズというよりは観光客向け。夜中にどこか行きたい人に来てもらえれば」と、現地に少ないナイトスポットとしてPRしたい考えだ。

市街地と空港の中間地点という立地を活かし、帰国直前のショッピングのニーズも狙う。モールの2階には、空港のカードラウンジのような有料の休憩スペースがオープン準備中だ。利用料は2時間20米ドルの予定で、ソフトドリンクバーが飲み放題。別途有料でアルコール飲料や軽食類も提供するという。帰国便までの時間調整に活用できそうだ。

▲「ドンキと言えば」の焼き芋売り場もご覧の盛況

このほかモール内には、ダイソーやマツモトキヨシを誘致。博多ラーメン店や韓国系のスイーツ店などが並ぶフードコートや、PPIH系列の寿司店、グアムでポピュラーなカフェ「Infusion Coffee & Tea」などの飲食店も出店する。9月には丸亀製麺とCoCo壱番屋もオープン予定だ。

筆者にとって海外での悩みのタネはお土産選びである。グアムのようなリゾート地は特に難儀するのだが、DON DON DONKIができたことで選択肢が広がった。今回は誰かにプレゼントしようと、カタカナで大きく「グアム」と書かれた愉快なデザインのドンペンTシャツを買って帰ったのだが、結局人にあげるのが惜しくなって自分用にした。今度グアムに行ったときはまた買いたいと思っている。みなさんもぜひ。(取材協力:グアム政府観光局)