特急「やくも」、新型車両273系運行開始 普通車と同料金のフルフラット席も

JR西日本は4月6日、岡山・山陰エリアを走る特急「やくも」の新型車両となる273系の運行を開始した。「やくも」用の車両としては、1982年にデビューした381系以来、約42年ぶりの新形式となる。

基本コンセプトやデザインを監修したのは、117系「WEST EXPRESS 銀河」などを手がけるデザイナーの川西康之氏。「沿線の風景に響き自然に映える車体」をデザインコンセプトに、車体のベースカラーはブロンズカラーとした。島根・宍道湖に沈む夕陽の鬱金色、出雲地方で盛んに行われた「たたら製鉄」の黄金色、鳥取・大山で毎年6月に開かれる夏山開き祭の松明の銅色、山陰地方でよく見られる赤瓦の赤銅色の4色をベースにつくったオリジナルカラーで、「やくもブロンズ」と呼ばれる。

基本編成は4両で、1号車はグリーン席と2〜4名のグループ用のセミコンパートメント(半個室)席、2〜4号車は普通席となる。インテリアデザインのコンセプトは「山陰の我が家のようにくつろげる温もりのある車内」。

普通席は「2-2」列。シートは沿線の山々をイメージした緑色をベースに、古来から神事に用いられ、人を守る魔除けの意味もある麻の葉模様をあしらった。JR西日本の特急列車として初めてチルト機構が採用されており、リクライニングにあわせて座面の角度が変化する。ヘッドレストの枕は可動タイプ。また、コンセントは全座席の肘掛け部分に設置されている。

グリーン席は「1+2」列で、黄色ベースのシートに縁起の良い積石亀甲模様をあしらった。普通席と同様に、可動式枕とチルト機構が採用されている。座席間隔は新幹線のグリーン車と同等だといい、足元が広々としている。

273系で新たに登場したセミコンパートメントは、2名用と4名用が2区画ずつの計4区画。向かい合う座席は座面を引き出すことでフラットにでき、靴を脱いで小上がりのように利用できる。大型テーブルが設けられ、グループで飲食を楽しみながら乗車できる。2名用は2名で、4名用は3〜4名で利用可能。料金は普通車指定席料金と同じで、追加料金は必要ない。

性能面では、JR西日本と鉄道総合技術研究所、川崎車両の3車が共同開発した国内初の車上型制御付自然振り子方式を採用。運行区間の曲線データと走行地点のデータを連続して照合し、適切なタイミングで車体を傾斜させることで、乗り心地を大幅に向上させている。

▲273系のデビューに合わせて、雲形の駅名標が運行区間の主要駅にお目見えした

4月6日の運行開始当初は4両編成6本を投入。25日までは「やくも」全15往復中、下り出雲市行きは「5・7・11・21・23・27号」、上り岡山行きは「4・6・10・20・22・26」が273系での運行となる。順次増備を進め、最終的には4両編成11本が投入される予定。

273系の導入に伴い、現行の381系のうち、スーパーやくも色編成を含むパノラマ編成は4月5日に運行を終了した。また、国鉄色編成と緑やくも色編成は6月14日をもって運行を終了する。ゆったりやくも色の一部編成は波動用として6月15日以降も残る見込み。

▲273系のデビューに合わせて出雲市駅に新たに設置された待合室「やくもラウンジ」