物価はハワイの半分? スーパー台風直撃から回復したグアムを歩く【レポート】

5月24日に猛烈な台風2号が直撃し、大規模な被害を受けたグアム。ほぼ全土で停電や断水が発生したほか、浸水によって空港の運用も停止され、観光客も足止めされた。

この影響で、回復基調にあった観光客数は大きく減った。4月には日本から7,304人、韓国から35,397人が訪れたものの、6月には日本から2,434人、韓国から2,871人に急減。観光業が主要産業のグアムでは復興を急ピッチで進め、7月にはそれぞれ10,989人、26,984人に戻っている。一方で、コロナ前の2019年同月の来島者は約14万人で、いまだ3分の1程度にとどまる。1月から6月のホテルの稼働率は63.7%、平均客室単価は197米ドルと、まだ空室も多く、割安だ。

2020年7月には、ケン・コーポレーションがグアムに島内最上級を謳うラグジュアリーホテル「THE TSUBAKI TOWER(ザ ツバキ タワー)」を開業。星野リゾートも2022年3月にオンワード・ビーチ・リゾート・グアムを買収し、今年3月に「星野リゾート リゾナーレグアム」にリブランドオープンするなど、日系企業によるテコ入れも目立つ。

日本から近いものの、なかなか食指が動かない人が多い印象のグアムではあるが、日本からの所要時間は約3時間半と近く、時差はわずか1時間。2019年のグアムへの来島者は約166.6万人で、このうち約4割が日本人と実は多く、韓国人をあわせて約8割。日本からの短期の渡航ではビザは免除されており、アメリカの電子渡航認証システム「ESTA」を利用することもできる。すでに検疫要件は撤廃されている。

ユナイテッド航空が東京/成田から週25往復、名古屋/中部から1日2往復、大阪/関西から週10往復、福岡から1日1往復を運航。日本航空(JAL)も夏季のピークシーズンのみ、東京/成田から週4往復を運航している。チェジュ航空のチャーター便を合わせると、ピークの8月と9月には、日本路線に4万席が供給されている。

台風直撃から約2か月経った7月中旬、台風被害からの回復と、現状をこの目でみてみようと、グアムへ向かった。

週末絡みでも往復400米ドル台が魅力

往路は成田発の夕方便、復路は仕事のため福岡着のユナイテッド航空便を利用した。成田からのフライトの多さと地方都市への路線展開は、離れて暮らす親戚や友人との旅行にも便利。現地集合、現地解散も容易だ。

成田発着のエコノミークラスを利用した場合、週末絡みの日程でも往復総額400米ドル台、ビジネスクラスは同700米ドル台が底値。燃油サーチャージの高騰が続く昨今でも、気軽に手が届く範囲の価格帯といえる。

7月20日、成田を午後5時25分に出発するUA865便のゲートには、浮かれた家族連れが目立った。ビジネスクラスとエコノミークラス合わせて166席は満席。客席はビジネスクラスはソファーのような分厚いシートで「2-2」、エコノミークラスは「3-3」配列で、飛行時間を考えるとエコノミークラスでも十分だ。

ビジネスクラスは2種類から選べ、メインのほかパンとサラダ、デザートがワンプレートで提供される。アルコールも無料だ。機内食を食べて一眠りしていると、あっという間に深夜のグアムに到着する。

タモン湾を望む絶景新築ホテル

今回宿泊した「ザ ツバキ タワー」は、タモン湾のガンビーチ沿いの高台に位置する。グアム国際空港から車で15分、タモン中心部へも徒歩圏内。

全340室がオーシャンビューの新築ホテルで、客室の広さは45平方メートル以上と余裕がある。広いテラスからはタモン湾を一望でき、インフィニティプールやプールサイドのバーからも開放的な眺めが広がる。日本語に対応したスタッフも多い。

アクセス権を付けることで利用できる高層階のラウンジは、大きい窓で開放感あふれる空間。朝食、アフタヌーンティ、カクテルを時間帯に応じて提供していて、一日中楽しめる。

運営するケン・コーポレーションは、隣接するホテルニッコーグアムのほか、ヒルトングアムリゾート&スパ、ハイアット・リージェンシー・グアムなど、グアムで合わせて6軒のホテルを運営している。いずれも「大人のグアム」をテーマとしてホテルを運営しており、この中でも実勢価格は1室5万円台と最も高い価格だが、子連れのファミリーよりもカップルや老夫婦のような客が目立つ。(2022年5月の栁澤GMインタビューはこちら

台風の被害からは概ね回復

ホテルから車で約10分、人気観光地の「恋人岬」に向かった。タモン湾の北に位置し、展望台や「恋人たちの鐘」が有名だ。レンタカーで訪れる観光客がちらほら見受けられ、日本語も聞こえた。被害も大きかったというが、インスタ映えスポットとしても人気がある「ハートロックウォール」も健在だ。

グアムの観光名所「恋人岬」の人気スポット「恋人たちの鐘」。3回鳴らすと幸せになるとの言い伝えがあるとのこと。航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏にも幸せが訪れますように。

免税店のTギャラリア グアム by DFS、グアム・プレミア・アウトレットなどのショッピングスポットは通常営業をしており、最大70%が割引に。スーパーでは大行列状態だった。

タモンビーチや周辺の観光地では、携帯電話の電波がうまく入れない場所も見受けられ、折れた木はちらほら見受けられたものの、それ以外は至って普通に戻っている。

物価はハワイの半分程度

1皿10ドル台なので、気兼ねなく暴飲暴食できるのがポイント。

同行していた、グルメな航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は、「グアムの食事は値段が高くておいしくない」と力説していたが、どのレストランでもご満悦の様子。チャモロバーベキューやロコモコ、パンケーキを楽しんでいた。

今回訪れた、グアムのローカルレストラン「PROA」では、前菜やサラダが10米ドル台、メインが20米ドル台で、4人以下の利用では15%のサービス料がかかる。海辺のバー「The beach」ではシグネチャーカクテルが15米ドル、人気カフェの「PIKA'S CAFE」ではフレンチトーストが11米ドル、クラシックバーガーが15米ドル、タモンのコンビニではジャンボホットドッグが2.59米ドルだった。

コロナ禍で4回ハワイを訪れ、円安と物価高のダブルパンチを受けた筆者としては、ハワイの半値程度という感覚を受けた。ハワイではいかにして食事を安く済ませるか、を考えてしまうが、グアムでは食事を心からエンジョイできる。

ちなみに日本のカップ麺はコンビニで6米ドル近く。1,000円近いことを考えたら、部屋でラーメンをすするよりもレストランに行ったほうが良さそう。

地方都市へのフライトも嬉しい。

最終日の4日目は、午前6時55分のUA165便で福岡へ。市街地と空港間が近いので、朝4時半にホテルを出発しても間に合うのは嬉しいポイント。この便は午前10時10分には福岡に到着するので、半休を取れば午後から十分出社できる。この日は30分以上早着し、午前11時前には市内の目的地に到着できた。金曜に出発し、月曜帰りの”4日間満喫コース”も負担が少なく実現できるだろう。

朝食のパンケーキはふわふわだった。

グアム政府観光局では9月30日まで、指定旅行会社でのグアム旅行の購入で20米ドルのクーポンがもらえる「GOGO!GUAM SUMMERキャンペーン」を実施している。ジェーシービー(JCB) では、グアムの主要観光地やホテルを結ぶ「赤いシャトルバス」を、JCBカードの提示で無料とするキャンペーンを再開している

円安、物価高、燃油サーチャージの高騰が続く昨今、日本から最も近いアメリカンリゾート、グアムへの旅行も検討してみてはいかがだろうか。(取材協力:ユナイテッド航空、ザ ツバキ タワー)