日本初公開のMD-10“空飛ぶ眼科”、機内には教室も 一体何に使われる?

機内に眼科手術室をもつオービス・インターナショナルのMD-10型機「フライング・アイ・ホスピタル」(機体記号:N330AU)が関西国際空港に飛来し、日本で初めて公開された。

機内に眼科治療設備を整えた世界で唯一の飛行機で、世界中で眼科医療活動を行うNGOのオービス・インターナショナルが、フェデックス・エクスプレス(FedEx)から寄贈されたMD-10Fを改造して2016年から運航している。

▲世界的にも数少なくなった三発機のMD-10型機。垂直尾翼を貫通するように取り付けられたエンジンが特徴

かつては貨物専用機だった機体は数年かけて全面的に改造され、機内には前方から順にクラスルームエリア、オフィスエリア、AV・IT管理室、レーザー治療・シミュレーショントレーニング室、手術室、手術前後のケアルームが設けられた。

フライング・アイ・ホスピタル(=空飛ぶ眼科)と言っても、機内で患者の診察・治療を行うことが主目的ではなく、医療技術が十分に発達していない国に飛び、ボランティアの医師や専門家、臨床スタッフが知識と専門技術を伝える「眼科教育病院」の役割を持っている。

クラスルームエリアは46の座席が設けられており、教育病院として医師の研修に使われる。手術室で行われている施術映像をライブでモニターに映し、双方向の音声システムで外科医が詳細を説明したり、研修生が手術について質問したりできるという。

レーザー治療・シミュレーショントレーニング室はその名の通り、レーザー治療のほか、練習用の機器を使ったトレーニングを行うために使われる。その様子は講評のためにクラスルームに配信することもできる。

手術室は白内障手術(水晶体再建術)など高度な医療にも対応。医師用と研修生用の2つの接眼レンズがある顕微鏡を備える。安定性を確保するために主翼の真上に設けられているのが“機内手術室”らしいところ。

手術前後のケアルームでは、現地の医療スタッフがオービスのスタッフとともに手術準備や回復期の管理などにあたり、患者ケアのスキルアップを図る。

これまではテクニカルランディングで日本に飛来したことがあったが、国内で機内を公開したことはなかった。今回は日本親善ツアーの一環で、報道陣やパートナー企業などを対象に4月25日まで見学会を行う予定。

航空機の位置情報を提供するサービス「Radarbox」によると、機体は4月18日にフィリピンのクラーク国際空港を出発し、関西国際空港には同日午後3時31分に着陸している。FedExによると、関西国際空港までの運航は元同社パイロットで現在はオービス・インターナショナルに所属するシンディー・バーウィン氏が担当したという。(以下、写真24枚)

▲クラスルームエリア

▲オフィスエリア。パートナーとの打ち合わせに使うほか、各国の医療プログラム用の諸設備を管理している

▲AV・IT管理室。機内での活動を世界各国の医療従事者に配信する

▲レーザー治療・シミュレーショントレーニング室

▲手術室

▲手術室は安定性の高い主翼の真上にある

▲手術前後のケアルーム

▲機内最後方にあるラバトリー