あなたは知ってた? ひっそり廃止のパスポートの“裏ワザ”、駆け込みで使ってみた

知る人ぞ知る、あるパスポートの“裏ワザ”がひっそり廃止された。筆者は廃止される前に駆け込みで利用できたので、惜別も兼ねて書き記しておこう。

“裏ワザ”的存在、パスポートの「増補」

今回取り上げる“裏ワザ”とは、公式には裏ワザでも隠されたものでもなく、正式な制度として存在していたパスポートの「増補」である。わかりやすく言えば、パスポートの査証欄(いつも出入国のスタンプが押される欄である)を増やすために、そのパスポートにページを足す制度である。

この「増補」は、ひっそりと今年3月27日付で廃止された(「旅券の増補、来年3月27日から廃止 改正旅券法施行」)。

「駆け込み増補」してみた

たまたま筆者は古いデザインのパスポートを持っており、増補したことはなかったので、せっかくの制度を利用して増補してみることにした。

増補は、パスポートの発行と同じく、パスポートセンターで行うことができる。基本的には住民登録をしている都道府県などのパスポートセンターに申請することになるようだ。

増補は、査証欄が少なくなったときに行うものであるとされているが、パスポートの現在の状況に関係なく、1回ページを足すことができる。正確に言えば、増補されるページは一番後ろの査証欄であり、そこにビザが貼られるなどして増補できないことがあるようだった。

筆者は、1月下旬の平日夜、住民登録のある東京都は有楽町のパスポートセンターに赴く。センター内は撮影禁止なのだが、センターをしっかりはみ出すほど行列ができている。どう考えてもキャパオーバーのようだ。例年この時期は春休みやゴールデンウィークを見据えて申請が込み合う時期らしいが、特に今年はコロナ禍で失効してしまった人が、本格的に海外旅行を再開しようという動きも重なり、大変込み合っていた。

センター内は、申請をしようとする人と、申請書類を出して確認を待っている人で、おそらく200人以上が待っている状況。増補も同じ列で待つのか、と思うとうんざりしたが、実際のところは増補は特別扱いらしく、端のあまり人がいないレーンに回された。結婚などで姓が変わった人と同じ窓口で処理するらしい。

申請には約5分。パスポートの一部が隠れてしまうが良いかと費用の確認で、そのあと番号札を渡された。通常のパスポート申請と別扱いで、資料を確認するらしい。

この待ち時間が15分くらい。通常のパスポート申請の待ち時間がこの日は1時間以上だったから、こちらもはるかに速い。資料の確認が終わり、パスポートの引換券が渡される。

パスポートは翌朝には受け取れるとの説明だ。こちらも、ごった返したセンターの様子と異なりなんともスピーディだ。

費用は2,500円。国の収入印紙が2,000円と都道府県への費用が500円。まあ安くはないけど、躊躇するほど高くもないといったところだと思う。

後日受け取りのときは、通常のパスポート受け取りと同じ待ち列だったが、待ち時間は10分ほど。これにて増補完了だ。

増補してどうなったのか

当たり前な話だが、分厚い。40ページ分の厚さが増えたので、その分だけ分厚くなるというわけだ。ただ、重さはあまり感じない。別にパスポートに軽さを求めたことはないので気にしたことがなかったからか、増補されて重さが増えたという感じはない。

分厚くなったので、するっとパスポートを落としてなくしてしまうという事はなくなるのではないかという気がする。万が一落としても、より鈍くなった音で気づく、と期待したい。

筆者のパスポートの場合、増補されることで隠れてしまうスタンプなどもなかったので、増補して不満は特になかった。

どちらかといえば、激込みのパスポートセンターで特別扱いされる優越感が味わえて楽しかった(なんとも安上がりな人間である)ので大満足だ。

増補の必要性は特に感じない

筆者は、増補の必要性は特に感じなかったものの、好奇心から増補した。最近は日本出入国時のスタンプも省略されるようになり、韓国など近隣国でもスタンプが押されないことも増えた。査証欄をわざわざ増やす必要性は、増補してもあまり感じていないのが率直なところだ。

この記事が出るころには、増補が廃止されているかとおもうが、実際のところ増補していなくても大きな問題は生じないだろうから、読者の皆さんは引き続き手元のパスポートを大事にして、万が一査証欄がなくなったら、潔く新しいパスポートを発行してほしい、というところで、幻の“裏ワザ”、「増補」に別れを告げたい。(2020年旅券の増補に関する表記を削除しました)