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ANAグループと札幌市、車いすでバリアフリーを学ぶワークショップ「WheeLog!」を開催
札幌市と全日本空輸(ANA)、ANAあきんどは、北海道・札幌にて9月4日、車いすに乗り、街のバリアやバリアフリーを学ぶ体験型ワークショップ「WheeLog!(ウィーログ)in札幌」を開催した。
イベントの運営はバリアフリーマップの「WheeLog!」を開発し提供している一般社団法人WheeLogが担当。WheeLogの公式サイトで参加者をつのり、当日は地元札幌も含め全国から約50名が参加しており、車イスの利用者だけでなく、車イスに乗ってみたい健常者も多く参加していた。
札幌市民交流プラザ SCARTSコートを会場として、ワークショップはスタート、参加者を9つの班にわけて課題にチャレンジ。今回は札幌市の観光地を決められた順に車イスで回り、観光スポットや公共施設などのバリアフリー調査をチェックしていくというもの。複数の目的とルートが用意されており、公共交通機関を使わずに回れるコースから、地下鉄とバスで乗り継いでいく必要があるコースなど様々。目的地が遠いコースに高い得点が設定されており、各班どのコースを選ぶかもポイントとなっていた。
車イスの貸出しも行われ、ルートの移動時には、各班の健常者のうち1~2人が車イスを使用。健常者が車イスで街中を移動することで、どんな不便があるのか体験できるイベントにもなっている。
各班はルートを回りながら、スマートフォンにインストールした「WheeLog!」のアプリからスポット投稿を実施。たとえばトイレがあった場合は、GPS機能を使った正確な位置とともに、コメントや「十分な展開スペースはあるか?」といった評価が投稿できる。この投稿した情報をシェアすることで、車イス利用者が移動しやすいマップを作り上げるのが「WheeLog!」の目的。今回はこの投稿数もワークショップでの得点として加算される。
▲札幌市内の観光地を回って「WheeLog!」でのスポット投稿を行う
4時間ほどの街歩きのあと、札幌市民交流プラザに戻ってきた各班は、街歩きで振り返り、「ハード面のバリアフリー対応」と「心のバリアフリー対応」に関してた気づきを書き出して、今回のまとめを作成。それぞれの班の代表が2分間のプレゼンを行い、今回の体験について発表した。
参加者の意見には、「札幌は地下歩行空間が充実しており、段差や傾斜、車の往来など気にせず移動出来ることは魅力的」といった、札幌ならではの良さをピックアップ。また「思っていた以上に車いすを気にかけてくれている」という声も上がっていた。
ただ普段車イスに乗り慣れていないせいもあり、「歩いていると気づかない程度の歩道の傾斜が車イスでは思うように進めず困難」や、「垂直移動(エレベーター等)を探すの時間がかる」など、車イスの利用者が普段どんな苦労をして移動しているか、実感できて良かったという声も多く出ていた。
最後に各班の得点を集計。優秀なチームから順番にANAから提供されたキャップやメモ帳といったノベルティーグッズがプレゼントされた。
今回のイベントは、札幌2030大会招致を契機とした共生社会の実現に向けて「Universal MaaS」の共同プロジェクトの実証実験のひとつとして位置づけられている。イベントを主催した札幌市のまちづくり政策局政策企画部長 浅村晋彦氏は「札幌市は2030年の冬期オリンピック・パラリンピックの承知目指しているが、こうしたユニバーサルのまちづくりを官民あげて加速させていくいいきっかけになるのではないか」とイベント開催の目的について説明している。
またANAでは、WheeLog!のデータを自社アプリの「空港アクセスナビ」に活用している。イベントに登壇した全日本空輸 未来創造室 MaaS推進部 部長 鈴木謙次氏は「ANAは世界にトップレベルのユニバーサルがサービスを提供するエアラインを目指している。すべての人に優しい空ということを目指し、ハードとソフト面で改善に取り組んでいる。今回の実証実験では、車イスのお客様の課題解決に取り組んでいるが、将来的にはすべての人にとって便利な移動サービスを作り上げていきたい」と話している。
さらにANAあきんど執行役員営業統括室地域創生部池田暢也部長は「札幌市が目指す共創社会の実現に向けて、地域の皆さんと連携をして、心も含めたバリアフリー化に取り組む。このことが、世界的な観光地として札幌が抱える地域特有の課題解決、国内外のお客様の受け入れ態勢整備や推進にも繋がると考えています」と話し、今後のインバウンド需要も見据えた、ハード、ソフト両面でのバリアフリー化を課題としてあげていた。
こういったバリアフリーに関するスポット情報は、自治体や特定の人の活動だけでは予算や人手もたりず難しいところ。WheeLog!のように、車イスユーザーだけでなく健常者でも投稿できる集合知で、「すべての人にとって便利な移動サービス」ができることを期待したい。