試験車両なのに営業仕様 日本初の水素電車「FV-E991系 HYBARI」、車内の様子は?

JR東日本は、トヨタ自動車、日立製作所と共同で、水素をエネルギー源とした燃料電池試験車両「FV-E991系」(愛称:HYBARI)を開発した。

脱炭素化に向け、JR東日本の鉄道車両設計・製造技術、JR東日本と日立製作所が共同で開発した鉄道用ハイブリッド駆動システム技術、トヨタ自動車の燃料電池技術を融合して開発した車両で、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーで走行できる。水素を燃料とした車両はドイツですでに実用化されているが、JR東日本によると、コンパクトな設計が必要となる狭軌車両としては世界初だという。3月下旬から南武線や鶴見線で走行試験を始め、東北地方の非電化区間などへの投入を視野に、2030年度をめどとして実用化を目指す。

FV-E991系は試験車両のため営業運転に投入されることはないが、インテリアは営業車両を意識して設計された。今般行われた報道公開では車内に入ることができたので、インテリアを詳しく見ていく。なお、外観等に関しては別稿をご覧いただきたい。

車体は烏山線で実用化されている蓄電池車両「EV-E301系」がベースで、総合車両製作所(J-TREC)のブランド「sustina」を採用している。車内に足を踏み入れると、鮮やかなグリーンのシートが目につく。グレー基調のインテリアでシックなイメージのEV-E301系と比べ、明るい印象だ。シートには自然のエネルギーを表現した緑色をベースに、愛称「HYBARI」にちなみ、春を告げる鳥と言われるヒバリが飛び交う様子をデザインした。青色は水素発電で発生した水が自然に還る様子をイメージしている。床面のカラーも山間の小川に見立てたブルー系だ。特徴は客室の窓に取り付けられた横引きカーテン。夜間走行試験に備えたものだという。

車端部に車いすスペースも設けられている。妻側上部にはEV-E301系と同様、電力の供給状態などを示すモニター装置がある一方、行き先などを表示する情報装置はない。

運転台もEV-E301系がベースだが、機器配置はE233系を踏襲している。運転台横には水素発電システムの起動・停止ボタンが備えられた。操作方法はHB-E300系など従来のハイブリッド車両と同様だという。

FV-E991系が一般の人を乗せて走ることはないが、JR東日本の開発担当者は「いずれ色々な方に見てもらいたいと考えている」と話している。近いうちに“未来の鉄道”を一足早く体験できる機会があるかもしれない。

▲2号車「FV-E990-1」車内

▲1号車「FV-E991-1」車内。2号車屋根上には水素タンクが搭載されているため、1号車のほうが天井がやや高くなっているというが、言われなければ気付かない程度

▲「HYBARI」のロゴマークが散らされたシート

▲優先席もある

▲夜間走行試験用の横引きカーテン

▲電力供給状況を示す妻面のモニター装置

▲1号車「FV-E991系」運転台

▲運転台横のシステム起動・停止ボタン

▲駅名対照表。「FV-E991」「HYBARIロゴ」「水素充填中」などに加え、鶴見線や南武線の行先も設定されている