日本人の受け入れ準備を進めるハワイ、ANA・後藤勝ホノルル副支店長に現状を聞く【インタビュー】

アメリカ本土からの渡航者急増で、観光需要が急回復するハワイ。日本からの渡航には、帰国後14日間の自主隔離などの制約はまだ残るが、ワクチン接種が進むとともにワクチンパスポートが導入されれば、これまでのように気軽に渡航できる日も近い。

コロナ前まで、全日本空輸(ANA)では、520人乗りのエアバスA380型機「FLYING HONU(フライングホヌ)」を、東京/成田〜ホノルル線に1日2便投入し、多くの乗客で賑わっていた。日本からの観光客がほとんど消えた今、観光需要の回復に向けた取り組みを、ANAホノルル支店副支店長、ANA Sales Americasホノルル支店支店長の後藤勝氏に聞いた。(実施日:5月24日)

ー日本からハワイへの観光客の渡航は去年の3月から止まっています。これまでの状況を教えてください。
「コロナが広がって、ハワイ州知事が「ハワイに来ないでください」と発表したので、それを受けて運航を停止した。中には1泊で帰って頂いた人もいた。3月28日が最後のフライトになった。社員の大半も一時休業の状態で、休業中の従業員は失業保険がもらえる。旅行会社は家賃と人件費が大半なので、固定費がだいぶ軽減された。厳しい運営の中で、一助になっている。」

ーコロナでロックダウンしていた中、ハワイでは様々な整備が進められていたと聞きます。
「観光整備を行っていて、なくなったビーチの砂を沖からワイキキビーチに、東京ドーム1個分を10年ぶりくらいに運んでビーチの幅が広くなった。ハナウマベイも閉鎖していた間に綺麗になって、透明度が上がった。今は予約制になったものの、魚も増えていると思う。観光客に早く戻って欲しいという私達のような人もいれば、観光客に来てほしくないという人もいる。レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)を発展させていく必要性もある。」

ー観光需要が復活しているハワイ、どんな状況でしょうか。
「レンタカーは元々7割ぐらい稼働していて、駐車場が3割くらいしかない。観光客がいなくなって置き場に困って、結局船で本土に持っていてしまった。中古車のニーズが高いことから売却してしまい、半導体不足で新車の調達もままならない。観光客が戻ってきてレンタカー不足になってしまい、取れても1日200ドル、高い時には500ドル、マウイ島では1日1,000ドルというのがニュースになった。個人間カーシェアで儲けているという人や、引っ越し用のトラック借りて観光している人もいる。」

ー秋には日本路線の運航が再開されました。
「日本からのフライトが復活したのが10月5日、その時は月に2便。12月以降は週に2便くらい飛ばしている。日本からハワイ、ハワイから日本へそれぞれ留学生が多く、家族の往来も多い。ホテルで働いている方々にはフィリピン系の方が多く、フィリピンへの直行便が限られているので、日本で乗り継いで帰国する人もいる。間違いなくニーズがある。」

ーワイキキのラウンジも閉鎖し、トロリーや電気バスの運行も停止しています。いつ頃再開を予定していますか。
「ハワイではワクチンの接種が進んで、6フィート離れるとか、ソーシャルディスタンス、マスクの着用といった規定が緩和されている。日本からツアーが再開された時、どうなっているかはわからないものの、きちんと守った形で営業を再開したい。コロナで非接触という話が進んでいるものの、情報の大切さも改めてクローズアップされている。最新の情報を現地で得られる、情報拠点としてラウンジを活用していきたい。日本出発前にも情報を入手できるよう、ウェブサイトやアプリと連動して情報提供をしていきたい。」

「飛行機のデイリー運航が再開され、観光旅行が可能になれば、ANAエクスプレスバスの運行を再開したい。バス会社ともそのように話している。トロリーも3社が走らせていたが、これは日本から150万人が来ていた時のサービス。今後は需要に合わせ、間引きや統合も進んでいくかもしれない。ANAトラベラーズの利用者の7割は、DFSとアラモアナセンターの往復なので、ある程度はANAエクスプレスバスで網羅できる。」

ーワイキキビーチには、随分本土からの観光客が戻っているようです。日本からの観光客に頼らなくても客室が埋まるようになれば、今後の仕入れにも影響があるのでは。
「思っている以上に、日本市場の回復を待っているホテルは多い。いろんな理由があるが、1つはオーシャンビューやダイヤモンドヘッドビューなどを選んでくれる人が多く、単価が高いこと。あとは、日系旅行会社が大量送客を可能とする仕組みを作ってきて、それがうまく回っている。例えば、空港からワイキキへの送迎がウーバーやタクシーに偏ってしまうと、これだけ多くの人が来るのが難しくなる。日本から渡航できるタイミングで、ジャパン・ハワイ・トラベル・アソシエーションを通じて、他社とも連携していきたい。アメリカ本土から、本当はメキシコやカナダ、カリブ海、クルーズに行きたいという人も今は行きづらく、ハワイに流れているという側面がある。これらが徐々に解禁されると、ハワイの人気がしぼんでしまう可能性がある。それまでに日本市場が回復してもらえれば、と思う。」

ー8月の夏休みシーズンの日本人の動向はいかがでしょう。
「日本市場向けに、とても良いレートを出してくれているホテルもある。混乗の空港送迎も復活するつもり。専用車では片道150ドルくらいかかるが、混乗なら25ドル程度になる。皆が専用車となると、車が足りなくなる恐れもあり、選択肢を増やしていくことが必要だろう。ワイキキのラウンジもオープンし、日本人の渡航者をサポートしていく。PCR検査の事前予約、忘れている人にはラウンジで手配のサポートもする。必要なものは全部提供できるようにしたい。」

ーツアーにはツアーの良さがあると思います。今回のホノルルへの渡航、わからないことが多くて大変だった。そういった部分を現地でサポートできるという強みをどう生かしますか。
「ハワイ全体の渡航者のうち、約6割がツアー客(ハワイ州観光局の2019年の資料によると58.5%)。ずっと7割くらいだったが、徐々に下がっている。背景には安心安全が当たり前になって、簡単、便利、安いという方向に価値を求める人が多くなった。これからは、安心安全のためにパッケージツアーをあえて選ぶという人も増えてくるのではないか。絶対に必要になるものは、なるべく含んだ旅行商品を販売していきたい。紙の陰性証明書が必要なら、検査を含んだ旅行商品、レンタカーや取れなかったり、タクシーが捕まらないということであれば、そうしたものを含んだ商品に価値が生まれる。きちんとメリットを訴えて販売したい。」

ハワイ・ワイキキ

ーハワイに渡航する観光客に伝えておきたいことはありますか。
「飛行機やホテルを予約して、レンタカーは最後でいいや、という人も多い。でも今は見つからないという時代になってしまった。必要なもの、行きたいところの予約は、渡航前に済ませておいてほうがいい。それぞれのサービスが、予約時にどう変わったのかがわかる。例えば、オプショナルツアーは催行していても、送迎を取りやめているというところもある。レンタカーが借りられなければ行けない。最後に、青い海や、青い空、ハワイの基本的な魅力は増しています。ぜひ、しっかり計画を立ててお越しください。日本の皆様にお会いできる日が早く来てほしいと切に願っています。」