「Go To トラベルキャンペーン」をより効果的にする5つの提言【永山久徳の宿泊業界インサイダー】

国際通り

(3)Go To トラベルキャンペーンをより効果的なものにするには

キャンペーンの実施にもかかわらず、9月以降の予約状況の冷え込みに対して、さすがに危惧する声が大きくなってきた。私の考える「修正策」を列挙したい。

・自治体対応の統一
自治体によっては、キャンペーンに上乗せ補助をしていたり、逆に来て欲しくないアピールを続けているケースもある。例えば「我々の町では医療体制が脆弱で高齢者が多いので来訪を控えて欲しい」と発信するのはまだ良いとして、これとキャンペーンの是非は別問題だし、自治体レベルでキャンペーンそのものへのネガティブキャンペーンを繰り広げるのはおかしい。移動制限が発出されている状況ならともかく、個々の良識と判断に委ねられている現状で、各自治体の発する情報を基に旅行の行き先を判断するのは利用者であり、キャンペーンの中止や変更でバイアスをかけるものではない。逆に自治体が「陽性者が発生した場合営業停止を勧告する」とか「観光従事者にPCR検査を実施する」など事業者、利用者双方の不安を煽る見当外れの発言をしているケースがあることも混乱を助長していることを肝に命じて欲しい。

・宿泊施設の担当分け
「無症状の陽性者はホテルが積極的受け入れるべき」と言われたり、「陽性者が1人でも泊まったら営業するべきではない」と脅されたりするのが今の宿泊施設の実態だ。ホテルを利用するのは観光客だけではない。帰宅を躊躇する医療従事者、県外移動することで物流やインフラ維持、経済活動を続ける技術者やビジネスマンが日々リスクを抱えながら移動している。これらをひとつの宿泊者として捉えることに無理が出ているのであり、陽性者受け入れ施設や医療従事者や帰宅困難者については自治体がホテルを指定することも必要だろう。その場合、従業員の安全対策を一段階引き上げることも忘れてはならない。

・旅館業法の改正
今回のGo To トラベルキャンペーンによる宿泊施設での検温義務付けにより、一般にも「宿泊施設は旅館業法で発熱者の宿泊拒否ができない」ことが知れ渡ることとなった。70年以上前の世の中では、いわゆる行き倒れを防止するため、外見による差別を防ぐために(明らかに伝染病と認められるとき等以外は)宿泊拒否をしてはならないという条項が必要だったとは推察されるが、現在の社会では全く無用なルールだ。しかも、昔の伝染病とは、天然痘やハンセン病など外見的症状のあるものを指すのであって、インフルエンザやノロウィルスなどの感染症は想定していない。発熱即宿泊拒否を求めるものではないが、他の宿泊者や従業員の不安とリスクの軽減のため、宿泊施設側に相応の権利を与えることこそが旅行そのものの安心につながるはずだ。

・利用者の利便性向上
コールセンターに日々集まる質問や苦情から、利用者が使いづらいポイントもはっきりしてきた頃だろう。まず、利用者に対して登録宿泊施設であることの明示は最優先で改善するべきだ。各宿泊施設のウェブサイトに、統一マークや屋号と企業名の併記を義務付けるなど、今からでもできることはあるはずだ。また、旅行会社や予約サイトで利用者IDを付与し、2回目以降のキャンペーン利用では本人確認や居住地確認、決済や還付口座の登録を簡略化するなど、今後の旅行需要の創出につながる手法はたくさんある。キャンペーン中のアップデートと、キャンペーン後のレガシー構築は今なら十分可能なはずだ。

・利用者の協力を求める
逆に、これだけの税金を投入するのだから、利用者にも何らかの協力を求めることも検討するべきだ。例えば、接触確認アプリ「COCOA」への登録義務付け(スマホを持っていないというなら貸し出してでも利用を促すべきだ)、出発前・帰宅後の健康チェック表提出なども不安解消や万一の場合の対応の迅速化には有効なはずだ。また、この機会に偽名や架空の住所でも旅行会社やサイトで予約が可能な仕組みを改善することも必要だろう。

Go To トラベルキャンペーンが軌道に乗るまではまだ時間がかかるかもしれないが、修正されることでより有意義なキャンペーンになるはずだ。キャンペーンへの正しい理解による利用拡大、円滑な運用による事業者の負担軽減、キャンペーンにより露呈した業界課題の解消により、業界救済がスピーディーに成されることを切に願う。手遅れになり巨額の税金を「ドブに捨てる」結果になってしまうことだけは避けねばならない。

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