「Go To トラベルキャンペーン」をより効果的にする5つの提言【永山久徳の宿泊業界インサイダー】

2020年9月10日 木曜日 2:05 午後

Go To トラベルキャンペーンのスタートから1カ月半が経過した。開始後1ヶ月で420万人が利用したというが、これは昨年の国内旅行者数のせいぜい1割に過ぎず、せっかくの巨額の予算もこのままでは半分以上余ってしまう計算だ。勢いのつかない理由を現段階で整理しておきたい。

(1)Go To トラベルキャンペーンを使いたくない声の存在

キャンペーンの展開で最も難しいのは、利用したくない人の声の方が利用したい人の声を上回っていることだ。スタート時の世論調査でもキャンペーンを利用したい人は18%に過ぎなかった。

批判の一つはそもそも補助金の規模が大きいのではないかというものだが、例えばリーマンショック後に10%以上販売台数の落ちた自動車業界を救済するために導入されたエコカー減税は初年度6,000億円規模だった。1台につき25万円の補助だったので単純に240万人、国民の2%が恩恵を受けた計算だ。しかしこの政策に対して、特定業界との癒着であるとか、富裕層優遇であるとか、自動車免許を持ってない人には不公平などといった批判が拡がった記憶はない。補助金とはそもそも「消費を牽引できる一部の事業者や消費者に対して、お金の使い先にバイアスをかけ、その産業にレバレッジをかける」ためのものであり、使える人、使いたい人は限定されるのが当然の考えであり、公平の原則とはそぐわない政策だからだ。

既に自動車産業に次ぐ規模に成長した観光業界が90%というレベルで冷え込んでいる状況下で、この規模の補助金はレバレッジ効果を狙うには最低限レベルのものであり、一部の識者が主張する直接給付ではこの数倍の予算が必要になることから、Go To トラベルキャンペーンに無駄遣い批判が起こるのは全く筋違いだった。

もう一つの批判は「開始が早すぎる」というものだ。「ブレーキとアクセルを同時に踏む行為」と揶揄され、新型コロナウイルスの感染への漠然とした恐怖から、そもそも旅行に興味が無い層にまでこの政策に対する批判を許してしまった。これにより、通常の補助金のように経済状況が許される消費者を対象にすれば良いだけではなく、ゼロではないリスクを許容できる「合理的判断のできる利用者」という条件が付加されてしまった。

例えば、私であっても感染した場合にリスクの高い既往症のあるお年寄りにGo To トラベルキャンペーンを勧めることはしない。大人数の親族旅行もまだ早いだろう。交通機関の乗り継ぎの多い行程や、混雑が予想される商業施設やテーマパーク中心の旅行も家族や同行者とのリスク感の共有が必要だろう。いずれにしても旅行者の属性と行先に対するリスクの見極めが必要であり、その判断は行政に求めるものでなく、買い物や出勤と同じく自己判断であるべきなのを、自治体や識者が問題視し、それに不安を感じた層が「自分は旅行には行かない」「旅行者には来て欲しくない」と、一斉に反対に回ってしまった。

そもそも自動車の運転において、アクセルとブレーキはどちらかではなく、数秒ごとに切り替えて使うものであり、今この瞬間運行している数百万台の自動車全てがブレーキを踏んでいることは有り得ない。Go To トラベルキャンペーンはアクセルでもブレーキでもなく、信号機のタイミング調整に過ぎない。「安全軽視、経済優先」との声は感情的なものであったにもかかわらず、それに対して効果的な説明ができず、宿泊施設での検温や安全対策など、目に見える対策を前面に出したことがかえって不安を増長させてしまった側面もあるだろう。

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