驚愕の「トルクメニスタン200ドル激安ツアー」 謎に満ちた2泊3日弾丸ツアーの全貌(後編)

利用者1人につき8万円(?)かかっている超絶豪華空港ターミナル

総額約2,450億円をかけたアシハバード国際空港はとにかく美しかった。ピシメという揚げ菓子を持ち、ツーリストを歓待する女性が待ち受ける。(写真:橋賀秀紀)

川崎重工背広組はみな目の前のVIP、CIP専用の入口に吸い込まれていった。我々ビンボー旅行者組はバスに乗せられて遠く離れたところに連れて行かれた。そのあたりの「区別」は明確なのだ。だが、ターミナルに入り目を見張った。2016年に完成したこの建築は白と緑を基調としており、きわめて洗練されている。こんなに美しい空港に遭遇したことはちょっと記憶にない。

だが、美しいものは金がかかる。この空港の建設費は約2,450億円だったらしい。日本ではザハ・ハディドの設計した国立競技場の建設費が2,520億円で高すぎると非難轟々で取りやめになったことがあるがそれとほぼ同額。年間1,700万人の利用客を処理できる能力があるというアシガバート国際空港の年間利用者数は推定で10万人。ちなみに羽田空港は8,750万人である。

ハヤブサを模した空港のデザイン。近くには同様の形状をした大統領専用ターミナルも存在する。(写真:橋賀秀紀)

仮にこのターミナルの寿命が30年間と仮定した場合、2,450億円を30年間の利用者の300万人で割ると1人81,700円ほどになる。つまり利用者1人につき、8万円以上の空港使用料を徴収しなければペイしないという計算だ。利用者1人あたりのコストでは、こちらこそギネスブックものである。グーグルマップの航空写真を見ると、近くにやはり鳥の形をした「大統領専用ターミナル」というやつもある。この国の唯一絶対的な存在、ベルディムハメドフ大統領のトップダウンで物事が決まるこの国で、そもそも1人あたりのコストなどという概念は意味がないということを後々思い知らされることになる。

何はともあれ長く美しい動く歩道の突き当たりには顔認証システムがあり、入国審査も瞬時に終わった。入国審査官はにっこり笑いながら「コンニチハ!」の一言。アメリカの無愛想な入国審査官も見習ってほしい。

グーグルもフェイスブックもツイッターもLINEも使えない

税関を抜けると地元テレビ局のカメラが待ち構えていた。どの道全員揃うまでは身動きがとれないわけだからインタビューを受けることにする。質問は「トルクメニスタンについてどのようなことを知っていたのか」「トルクメニスタンと日本の友好について一言」といった定番もの。返答する場合も芸がないと思いつつ、ありきたりな返事を返すことしかできない。もっともヘンな回答をしたところで使われるわけもないのだが…。

ちなみに空港の到着ロビーにはSIMが売られていた(1GB25ドル・4GB50ドル)。もっともこの国ではグーグルもフェイスブックもツイッターもLINEも使えない”中国状態”である。

さて、トルクメニスタンの見どころといえば、大きく分けて2つある(というかその2つ以外にはあまりない)。その一つが首都アシハバードの美しくギネス認定連発の建築。もう一つが砂漠のなかにぽっかりと空いた地中の穴で天然ガスが漏れ、ひたすら火が燃え続けている「地獄の門」である。1日目は午後に着き、博物館や市内観光、2日目は朝から「コンサート」、昼にモスクなど、午後から深夜にかけて「地獄の門」へ。3日目は朝空港に向かうだけ。事実上1.5日しか与えられていなかった。

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