リクライニング論争に終止符? ピーチが最初から15度傾いている新シートを導入、実際に乗ってみた

座席をリクライニングする際に一声かけるか否か、ネット上で時々論争が繰り広げられている。筆者は短距離ではそもそも使わない、使う時には勝手に倒す派で、その分、他者には寛容なはずなのだが、LCCに至っては、ちょっとイラッとするのも事実だ。

座席の前後間隔を狭くして多くの座席を配置しているのがLCCの特徴で、前の座席の背もたれがそもそも目の前にあるにもかかわらず、より近くなることでパーソナルスペースが侵されている感じがする。窓側から通路に出る時には、リクライニングされた状態だと立てないという人もいるだろう。

世界的には、リクライニング角を浅くする傾向にあるようだ。デルタ航空では、国内線を運航する一部のナローボディ機で、エコノミークラスは4インチから2インチ、ファーストクラスは5.5インチから3.5インチにリクライニング角を削減した。Secret Flyingによると、個人用スペースをより広く取ることが目的だというが、乗客同士のトラブルが多発していたであろうことは、想像に難くない。

そんな中、ピーチが導入した24号機にあたるエアバスA320型機より、新たに「プレリクライニングシート」を設置したという。今回、福岡発東京/成田行きで実際に搭乗してみた。

ドイツのレカロ社が製造したSL3510という短距離路線向きのシートで、通常のシートはリクライニングしない状態ほぼ直角であるところ、このシートは背もたれが15度後ろに傾いている。人間工学に基づき、背もたれには背骨の形状に合ったネッティング材を入れることで、快適さを維持しながら薄型化した。座席数はその他の機材と同じ180席であるため、座席が薄くなればなるほど、足元には余裕が生まれる。ちなみに重量は3席でわずか9キロ、従来の座席と比べると約4割の軽量化を実現したという。一方で、リクライニング機能そのものを廃止した。

筆者は機内でパソコンを広げていることが多いが、リクライニングされると、途端に作業を断念せざるを得なくなる。新幹線やバスでは大して気にならないのだが、どうしてもそれらに比べて前後間隔が狭いLCCでは、より強く感じるので、個人的には歓迎だ。

ピーチが導入した座席は2色展開で、隣席、前後と異なる色合いになっている。足元にはシートポケットが設置されていて、ペットボトルや小物類などを収納できる。全体的には薄くてスッキリした印象を受ける。

実際に着席してみると、シートの前後間隔はこれまでのLCCの座席と、大手航空会社の座席のほぼ中間くらいといった感じを受ける。膝下にはくぼみがあり、スッキリしている。最初から15度傾いているというものの、圧迫感はあまり感じない。よく考えてみると、自分の背もたれも15度傾いているわけで、余裕がある空間自体は変わりないのだ。

テーブルはおよそ11インチのパソコンを置いて作業するのにちょうどいい大きさ、13インチでも作業自体には問題ない。機内食は4月から販売している、「ナポリにないナポリタン」、「天津にない天津炒飯」を注文したが、2つ載せても飲食に不自由ない大きさが確保されている。テーブルは手前に引き出すことができる。

ピーチによると、24号機以降の機材には「プレリクライニングシート」を順次導入していくという。