「”真のLCCモデル”の事業を展開」 エアアジア・ジャパン、小田切義憲社長単独ロングインタビュー(1)

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7月1日に、日本での第二幕のスタートを宣言した、エアアジア・ジャパン。昨年10月に、日本国内線の空から消えた”赤い翼”は、楽天という強力なスポンサーとともに、日本に舞い戻ってきた。

同社の小田切義憲(おだぎり・よしのり)代表取締役社長に、同社の課題と今後について聞いた。6回シリーズでお送りする。

ー今後の就航までのスケジュールについて、決まっていることはありますか。

まだ案ですが、今回プレスリリースさせていただいて、次は売り出し開始のお知らせになると思う。スケジュールとしては年明けくらいと思っている。そこがひとつの山。

ー就航時期は来年の夏とのことだが、具体的な時期は決まっていますか。

航空局の指導を仰ぎながら、安全に一切妥協しない強固な運航体制を構築していきたい。
その上で、可能な範囲で、夏休み前には就航したいと思っている。

ー保有機材は2機からのスタートとのことですが、当初の就航路線としては2〜3路線からスタートする計画ですか。

まず国内線をやって、その後国際線という形になる。

ー他のLCCが苦戦していますけれども、その理由をどう分析していますか。

他社のことはコメントする立場にない。

旧エアアジア・ジャパンでの課題については、十分我々なりに検証し、そこを改善することをポイントに置いている。

ー日本にLCCのビジネスモデルを根付かせるには、いったい何が必要と考えていますか。

実際にLCCを日本で定着させるには、LCCはこういうものだと利用者が正しく理解し、旅行のスタイルに合わせてうまく活用していただくのが重要だと思う。

例えば、フルサービスキャリア(FSC)の子会社LCCはあまり定着していない。経営している人がFSC出身または出向で、FSCの「マインドセット」が残っていたり、会社としてもDNAを引き継いでしまう。

今現在、日本で運航しているLCCは、少なからずがFSCの介入を受けており、マインドセットの切り替えが果たして出来ているかというと、疑問。「お客様のためにここまでしましょうよ」という部分が残っていたり、お客様側もフルサービスキャリアのグループ会社だからという期待感を持っている人も多い。

世界を代表するLCCであるエアアジアがこれまで築き上げてきた文化、ビジネスモデル、本来あるべき”真のLCCモデル”にしたがって事業を展開し、お客様に丁寧に説明し、お客様にもそれをご理解いただいた上で、使っていただくという点を重要視したい。

ー旧エアアジア・ジャパンの時の課題となる部分は具体的にはどこだと思うか。実際はよく言われるウェブサイトだけではないと思う。乗った人からも、機内食やサービス、定時運航率のような品質にがっかりしたという声も多かったが。

環境の部分を言うと、成田空港の運用時間の問題で、遅い時間に返ってこれずにキャンセルになるというオペレーションのリスクがあった。また、自責の部分では、日本の空港では各種制約により実行が難しい25分でのターンアラウンド(折り返し)で、現実的には回しきれないところもあり、遅れが玉突きで重なった部分もあった。

運用時間制限の少ない空港を狙っていくなど、自責と他責の課題両方を改善していく。

ー欠航や遅延時の対応で、成田ベースの他社と比べられたという点もある。その点の対応も世界基準のものとなるのか。

そうですね。他社は他社のやり方があると思う。我々は今までの仕組み、エアアジアでの成功した仕組みを導入しようと思っている。その上で、競争環境を考えると、他社の対応や保険制度等の研究をして、さらに発展させていく必要があると思っている。

ー旧エアアジアジャパン時代の「負のイメージ」がどうしても利用者としてはあると思う。それをどのように払拭していくのか。

ウェブサイトについては機能向上を継続している。現在もエアアジアXは同じサイトにて稼働しており、可能な限り日本のお客様に満足いただけるよう日本からインプットを行っている。

オペレーションに関する基本品質の点での改善策は検討しており、手順に落とし込んでいく。

ー現在のエアアジアXのウェブでの広告についても、日本語としてまだまだ違和感があるものが多いと思う。旧エアアジア・ジャパンの際にもそういう物が多かったと思うが、今後はどうしていくのか。

従来は日本語のものをマレーシアで直していたが、今はこちらで作るか校正する体制を構築するなど改善をしている。

また、マレーシアにウェブの責任者として、日本人が配置されている。日本の航空会社として、マーケットに合わせるべく、常に改善する取り組みをしっかりやっていく。

ープレイヤーが増える中で、新エアアジア・ジャパンとしてどう差別化を図っていくのか。

差別化はポイントとして認識している。エアアジアのブランドを強みに利用者に訴求していく。

また現時点では言えないが、他社にはない全く新しい取り組みの導入を準備している。

ー日本では、エアアジアよりも、CMを多く打っており、イメージキャラクターに桐谷美玲さんを起用したジェットスターや、口コミで広まったピーチのほうが知名度としては上だと思うが、エアアジアとしてどの点が具体的に強みになるのか。

ひとつは、日本に入ってきたのは2年前ですが、アジアでは13年目。アジアでの認知度やブランド力は充分あるので、インバウンドでは非常に強み。

日本では、認知度をどんどん高めていく必要があるので、いろいろなことをやっていく。グループ方針として広告宣伝費をいっぱい使ってというわけではなく、むしろユニークな取り組みを行うことによってメディアの方に取り上げていただくという戦略を継続していく。(2)に続く