ANAとJAL、無人運転で貨物搬送 牽引車「自動運転レベル4」、羽田で実用化

全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)らは12月15日、空港内で貨物コンテナを牽引するトーイングトラクター(TT車)の完全自動運転を羽田空港で開始し、運用の様子を公開した。

両社は空港内での無人貨物搬送の実現に向け、ANAは豊田自動織機、JALはロボットインフラ事業を手がけるベンチャー企業・ROBO-HIと丸紅の合弁会社であるAiROと連携し、2021年度から羽田空港で段階的に試験運用を進めてきた。ANAは2024年度、JALは今年度から、完全自動運転となる「自動運転レベル4」での試験運用を実施。今般、揃って実用を開始した。

ANAは豊田自動織機製のEV「3ATE25」を3台導入。国内貨物上屋〜第2ターミナル60・61・65番スポット間の片道約1.5キロ(所要時間7〜8分)で、国内線定期便向けの貨物コンテナを搬送する。最高速度は15キロ(手動時25キロ)、最大牽引重量は13トン(同27トン)で、最短2〜3時間で満充電可能。空港内の様々な環境・条件変化に対応できるよう、路面パターンマッチング(RSPM)、高精度衛星測位(GNSS)、3D LiDAR、磁気誘導の4技術を組み合わせ、自己位置推定や障害物検知の精度と冗長性を高めている。

一方のJALは、ROBO-HI製のV「RoboCar Tractor 25T」を1台導入。東貨物地区〜西貨物地区間の片道約1キロ(所要時間5分30秒)で、貨物コンテナを搬送する。中国の空港車両メーカー・威海広泰空港設備製の車両をベースにROBO-HIが開発したもので、最高時速は15キロ(手動時20キロ)、最大牽引重量30トン。満充電時の航続距離は245キロ(非牽引時)で、最短3時間で満充電できる。GNSS、3D LiDAR、カメラ、慣性計測装置(IMU)など車両に搭載したセンサーのみで、自車の位置を把握して自動走行が可能。ROBO-HIのロボプラットフォーム「ROBO-HI OS」と連携し、空港のカメラシステムを活用した交通制御を行うことで、遠隔オペレータ1人で最大10台の車両を管理できるという。

JALはこのほか、成田空港にTractEasy製の自動運転TT車を2台導入し、12月15日から第2ターミナル本館〜サテライト間の受託手荷物の搬送を開始した。

▲JALの担当者から説明を受ける国土交通省航空局(JCAB) 宮澤康一局長(右)

国土交通省航空局(JCAB)の宮澤康一局長は、「羽田空港といった大空港では搬送業務に多くの人手を要しており、これらを自動化するインパクトは非常に大きい」と評価しつつ、導入拡大には企業や官民の枠を越えた取り組みが不可欠だと指摘した。ANAとJALは今後、自動運転TT車の導入台数や運用ルート、走行エリアを段階的に拡大し、他空港への普及も進める。

ANAは今年度中にさらに3台を追加して6台体制とする計画。同社の井上慎一社長は、2030年をめどに羽田空港で約50台を導入し、国内主要6空港への展開も目指す考えを示したうえで、「(展開拡大には)充電設備等の空港インフラの環境整備や車両コストなど、乗り越えなければならない課題がある」と指摘した。

JALは羽田空港で2026年夏頃に3台、成田空港で同年4月頃に6台体制とする計画。同社の鳥取三津子社長は「両空港は交通量が極めて高い環境であり、ここで無人化の技術が実現すれば他空港への横展開も大変スムーズに進められる」と話し、5年後に約50台規模としたうえで、さらに2〜3空港への拡大を目指すとした。