関西国際空港、低コスト海上輸送でアクセス大幅向上 スイス新興MobyFly、大阪湾での導入に期待

スイスの電動水中翼船(ハイドロフォイル・フェリー)開発企業、MobyFlyは、大阪・関西万博のスイスパビリオンでパネルディスカッションを開き、日本での今後の展開について説明した。

電動ハイドロフォイル・フェリーは、船体下部に設置された水中翼が生み出す揚力を利用し、船体を水面から浮き上がらせて進むフェリー。水による抵抗が減少し、高速かつエネルギー効率が高い航行ができる。従来船と比べ、エネルギー効率は最大80%、運航コストは最大60%減少し、ゼロエミッションや騒音の削減に貢献するという。電動船であることから、太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用が可能で、エネルギーの地産地消も見込んでいる。

MobyFlyが開発する12人乗りの小型シャトルモデル「MobyFly S」、60人から120人乗りの主要モデル「MobyFly M」の2つのタイプを設け、将来的には最大350人乗りにまで対応できるという。最高速度は時速81.5キロで、波高2メートルまで運航ができる。

パネルディスカッションには、MobyFly共同創業者のスー・プタラズ氏、在大阪スイス領事兼スイスネックス・ジャパンCEOのフェリックス・メスナー氏、PlanairCEOのリオネル・ペレ氏、関西エアポート代表取締役Co-CEOのブノワ・リュロー氏が登壇した。

リュロー氏は、関西圏の3つの空港を管理する関西エアポートとして、大阪だけではなく、淡路島や和歌山、四国などの広範囲に住む人々にアクセスを提供する必要性を強調し、関西国際空港と神戸空港は海上空港であることから、海上輸送が最も合理的であるとした。船舶サービスには、悪天候でも運航できる高い回復力、波の影響を受けずに快適な移動を提供する快適性、小規模都市への航路を経済的に運航可能とするコスト効率の3つの重要な要件があると話した。淡路島や四国などとのアクセスが飛躍的に向上し、国際ハブ空港としての競争力が大幅に高まることを期待している。

関西国際空港は、国際線の出発客、到着客が1日あたりそれぞれ3万人から4万人程度利用し、ほぼすべての利用者が鉄道もしくは車によって連絡橋経由でアクセスしている。関西国際空港と神戸空港は海上シャトル「神戸ー関空ベイ・シャトル」で結んでいるものの、1日約30便のみでは不十分であるほか、約4%の確率で欠航するなどの問題があるとした。

電動ハイドロフォイル・フェリーのような、エネルギーコストが低く、高速で運航できる船舶であれば、1日に多くの便の運航が可能となり、その分設備投資の回収が早まるほか、これまでは商業的に不可能であった淡路島や徳島、姫路などへのアクセスが経済的に可能になると期待を寄せた。

MobyFlyは、2026年から商用船の納入を目指し、資金調達を終えた。日本市場での具体的なプロジェクトは現状ないものの、日本では過去に旧式のハイドロフォイル・フェリーを運航していた実績があり、技術への理解度が高いものの、燃費の悪さから運航を停止した例もあることから、運航コストが低い電動船への転換ニーズは極めて大きく、複数の主要都市が点在する大阪湾でのポテンシャルは非常に高いとみている。