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東京メトロは5月30日、銀座線の“レトロ車両”に乗って丸ノ内線の中野車両基地に向かうイベント列車「夢の冒険列車 ルート銀丸」を運行した。
銀座線の車両は大規模な定期検査などの際、溜池山王〜赤坂見附駅間に存在する「連絡線」を経由して丸ノ内線に入り、中野富士見町駅付近の中野車両基地に入場する。今回のイベント列車は、通常は非営業列車しか通らないこのルートを、乗客を乗せてたどるというものだ。
「夢の冒険列車」という名称は、1987年に当時の営団地下鉄60周年を記念して銀座線・丸ノ内線直通で運行されたイベント列車「夢の冒険列車 ルート34」をオマージュしたもの。ちなみに、「ルート34」は、銀座線と丸ノ内線の都市計画上の名称がそれぞれ「3号線」「4号線」であることに由来する。なお、この連絡線を一般の営業列車が走った例としては、1990年代に隅田川花火大会に合わせて設定されていた臨時列車「花火ライナー」がある。
出発地の上野検車区に集まった102名の参加者が乗り込んだのは、銀座線開業当時の旧1000形をモチーフにしたレトロ仕様の1000系第40編成。深緑色のシートモケット、木目調の化粧板、真鍮色の手すりや握り棒、バネの力で跳ね上がる「リコ式」をイメージしたつり革など、旧1000形の雰囲気を細部まで再現した特別仕様車で、1000系全40編成のうち2編成のみの存在だ。車内では、地下鉄開通当時の復刻制服を着用した乗務員が出迎えた。
列車は午前9時35分に上野検車区をゆっくりと出発。入出庫線と道路が交差する「国内唯一の地下鉄の踏切」を通過しながら入れ換えを行い、検車区の地下にある車庫に入った。車内での案内によると、この地下車庫に乗客を乗せまま入庫するのは今回が初めてという。
地下車両基地を出た列車は一度地上に顔を出したあと、55パーミルの急勾配を下って再び地下へ。上野駅の2番線に入線し、進行方向を変えて浅草方面へと走り出した。
浅草駅は銀座線の終着駅だが、イベント列車はさらに「その先」へと進む。実は浅草駅の終端側には、車両の留置も可能な折り返し線があり、2024年には2編成分の線路を増設。この折り返し線に乗客を乗せた列車が入線するのも、今回が初めてだ。
折り返し線で進行方向を変えた列車は、今度は渋谷方面に向けて走り出す。途中駅には止まらないノンストップ運転だが、通常の列車の合間を縫って走るため、先行列車との間隔調整のための短い停車を繰り返しながら進んでいく。
走行中は、電気供給が切り替わるポイント(セクション)を通過する際に車内照明が一時的に消灯し、壁の予備灯が点灯する場面も。これは2000形から01系への置き換えが完了した1993年まで見られたシーンを再現したものだ。
列車は午前11時4分頃、溜池山王駅に到着。ここから連絡線に分岐し、赤坂見附駅では丸ノ内線のホームに姿を現した。駅で列車を待っていた一般の利用者は、丸ノ内線のホームに入ってきた銀座線の車両を不思議そうに見つめていた。
赤坂見附からは丸ノ内線の線路を走り、世界屈指の巨大ターミナル・新宿駅すらも通過して荻窪・方南町方面へ。午前11時19分頃、中野坂上駅に停車すると、そこからは方南町方面に進み、中野富士見町を過ぎると中野車両基地への入出庫線に分岐。勾配を上って、地上にある中野車両基地に午前11時30分頃到着した。
車両基地では、2017年に引退し、現在は基地内で乗務員訓練などに使われている銀座線の01系と、1000系を並べた撮影会も行われた。
今回のイベントは、レトロ車両を活用したイベントを開きたいと、銀座線乗務管区の社員が主体となって発案。浅草車掌事務室の江口直人乗務助役によると、2024年のゴールデンウィークに通常の営業列車で室内照明を暖色系に変更し、予備灯を点灯させて走行するイベントを実施したところ好評だったことから、今回の企画につながったという。
企画が立ち上がったのは2025年9月ころ。丸ノ内線乗務管区、中野車両管理所、上野検車区、銀座駅務管区など、社内のさまざまな部署の協力を得て実現にこぎ着けた。浅草車掌事務室の山田真大朗2級車掌は「正直、完売するのか不安もあった」と振り返るが、発売開始から数時間で完売。「本当にありがたい。必ず成功させなければという気持ちになった」と話し、今後、イベント第2弾開催への意欲も見せた。(以下、写真13枚)