JALの777-300ER、元JA735Jが離日 フェリーフライト「最後までJALグループで」

日本航空が運航していたボーイング777-300ERの3機目の退役機(機体記号:JA735J)が11月11日未明、羽田空港を離陸し売却先の米国・ツーソン空港に向かった。

JALは長距離国際線の主力機として、2004年から2009年にかけて777-300ERを13機導入。後継となるエアバスA350-1000型機の導入に伴って段階的に退役を進めており、2024年8月20日に1機目(機体記号:JA734J)を、今年5月27日に2機目(同:JA731J)を退役させた。

▲ラストフライトを終え、羽田空港に到着するJA735J(2025年9月9日)

退役3機目となったJA735は2006年7月19日に受領した機体。初フライトは同年8月1日の東京/成田発香港行きのJL731便で、ラストフライトは9月8日サンフランシスコ発、9月9日東京/羽田着のJL1便となった。運航終了後、9月10日から約1か月かけて退役整備が行われ、10月には羽田空港でファン向けの機体の見学ツアーを実施。10月28日に登録が抹消され、機体記号が米国籍を示す「N3243Q」に変更された。JAL機としてのフライトサイクルは9,131サイクル、飛行時間は80,589時間30分だった。

鶴丸ロゴなどJAL機としての塗装が落とされ、白塗り姿となった機体のフェリーフライトは、JAL格納庫前の212番スポットを11月10日午後11時47分に出発。ペンライトを手にしたJALのスタッフに見送られ、11日午前0時1分にC滑走路から離陸した。

売却を担当したJALの航空機材・整備調達部整備グループの沓澤拓也さんによると、通常は退役整備からフェリーフライトまで約2か月の期間があるが、今回は機材繰りなどのため約1か月半で売却先との調整を行う必要があった。沓澤さんはこれまで紙で確認を行っていた作業を電子化するなどして効率化を進めたと説明し、「手間取るところはあったが、結果的にスケジュール変更なくフェリーフライトを成し遂げられた」と振り返った。

▲フェリーフライトの調整を担当した(左から)JALビジネスアビエーション 空港事業部 吉田美咲さん、土屋峻彦さん、JAL 航空機材・整備調達部整備グループ 沓澤拓也さん

退役機のフェリーフライトのアレンジはこれまで他社に委託していたが、コロナ禍以降はビジネスジェットの手配やマネジメント、グランドハンドリングなどを担うJALグループのJALビジネスアビエーション(JALBA)が担当している。今回は売却先とのスケジュール調整をはじめ、発着枠や駐機場の調整、関係省庁への通知などを約2週間で行った。同社空港事業部の土屋峻彦さんは「JALグループで飛ばしていた飛行機は最後までJALグループのスタッフで飛ばしたいという思いがある」と話す。「飛行機が好きで入社したので本当は送り出したくはないが、それでもいつかはこういうときがやってくる」と機体への感謝と労いの気持ちを込めて出発を見守った。

JALは中長距離国際線線用の更新機材として、777-300ERと同数となる13機のA350-1000型機を発注済み。このうち初号機(機体記号:JA01WJ)から10号機(同JA10WJ)までの計10機をすでに受領し、東京/羽田〜ニューヨーク・ダラス・ロンドン・パリ・ロサンゼルス線に投入している。A350-1000型機の増備に伴い、777-300ERは順次退役する見通しだ。

▲フェリーフライトの準備が進む元JA735JのN3243Q