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カリフォルニアといえばメジャーリーグでの大谷選手の活躍もあり、ロサンゼルス周辺が注目されがち。とはいえカリフォルニア自体は約42万4千平方キロメートルと日本全体の約1.1倍の大きさ。それだけにせっかくカリフォルニアへ行くなら、ロサンゼルスだけを見て回るのはもったいない。そんなカリフォルニアの魅力を伝えるFAMトリップに参加した。(前編はこちら)
コロラド川に隣接するニードルス市は、州東部からの重要な玄関口のひとつ。歴史的な建造物やルート66に関連するスポットが多く現存する。「ルート66」は2026年に100周年を迎えるため、「アメリカの母なる道」とも呼ばれるルート66が現在再注目されているのだ。
ニードルスの主要な施設の一つであるNeedles駅(El Garces Train Depot)は、歴史的な鉄道駅で、かつてはフレッド・ハーベイが経営したホテルとしても利用されていた。この建物は現在、鉄道博物館として運営されており、鉄道遺物やルート66に関連する品々などを収蔵。第二次世界大戦前には、クラーク・ゲーブルやアルバート・アインシュタインといった著名人も鉄道旅行中にここに宿泊した記録がある。
その駅の向かい側には、地域の歴史を専門とするニードルス地域博物館(Needles Regional Museum)がある。この博物館は、オールド・ルート66沿いに位置し、展示内容は、ネイティブアメリカンの歴史、サンタフェ鉄道、ハーベイハウス、コロラド川の蒸気船時代、そして鉱業の歴史など、ニードルスやトライステートエリアの豊かな歴史を網羅している。
この博物館で目を引くのが、スヌーピーの兄「スパイク」の大きなフィギュア。実は人気コミック「ピーナッツ」の作者であるチャールズ・シュルツが少年時代に住んでいたのが、ここニードルス。シュルツ一家は中西部出身で、家族の一人が結核と診断された際に、医者から乾燥した気候の場所へ行くように勧められ、非常に乾燥しているニードルスに移住したとされています。ピーナッツのファンなら絶対に訪れたい場所だ。
ニードルス市内には、ルート66に関連する記念撮影を楽しむための場所が複数存在する。特に高速道路沿いに設置された「CALIFORNIA」の巨大なサインや、歴史的なボラックスワゴンもルート66の雰囲気を伝えるスポットとして親しまれている。
ニードルスではハンプトン・イン・ニードルス宿泊。コロラド川の近くに立地し、周囲にはマリーナ、ゴルフコースなどもあり、ルート66の玄関口だけでなく、リゾートとしての利用にも最適なホテルだ。
ニードルズからルート66を西海岸へと向かうと、100年以上前に開校した古い中学校を使った史跡「ゴフス・スクールハウス」がある。この施設はルート66の経路変更により放棄され、倒壊し始めていたものを改修。敷地で見つかった鉄道保守用カート、東モハベのハイウェイやナショナル・オールド・トレイルズ・ロードで使用されていた大型ロードグレーダーや古い駅名標を展示している。
この周辺には第2次世界大戦で活躍したパットン将軍がアフリカ戦線のまえに滞在したトレーニングセンターもあったため、軍関係の展示も多くある。
さらにルートを西に向かったアンボーにあるのが、ロイズ・モーテル&カフェ。1938年にガソリンスタンドとしてオープン後、その姿が映画やミュージックビデオ、雑誌の記事などで何度も登場しているが、実はルート66の衰退とともに廃れていたスポットでもある。
2003年に日系人のアルバート・オオクラがロイズ・モーテル&カフェを購入。観光スポットとして再興を図っており、現在はガソリンスタンドとお土産などを販売する売店を運営している。さらにルート66の100周年にむけて、モーテルとして利用できるコテージを復活予定とのこと。モーテル再開に合わせて訪問するのも楽しそうだ。
ルート66といえば外せないのが、1987年に公開された映画のロケ地となっている「バグダッド・カフェ」。約40年前の作品で筆者自身も高校生の頃に観たきりだったが、映像で確認すると外観は映画のまま。店内に入ると、印象はガラリと変わり、現在はモーテルではばくドリンクやお土産物などを扱う店舗として営業している。
訪問時は取材ということで、オーナーのアンドレアさんやミス・クラシック・ルート66のカーラさんなどが対応。さらに劇中でブーメランを投げている若者として実際に出演していたクレイグさんが出迎え。クレイグさんは現在もブーメランを製作したり、子どもたちに教えたりしているそうだ。
ちなみに、劇中で象徴的に使われている給水塔は、バグダッドカフェの裏手に横たわった状態で保管されている。もちろんきちんとした状態で立っていれば、絶好のフォトスポットになるので、是非ともルート66の100周年にあわせて立て直しを願いたい。
バグダッド・カフェからさらにロスアンゼルス方面に向かうと、たどり着くのがバーストゥという町。この街にもルート66やオールド・カリフォルニアを楽しめるポイントがいくつもある。たとえば、郊外にある「キャリコ・ゴーストタウン」は、炭鉱だったエリアを活用したテーマパークで、西部劇の雰囲気が味わえる。蒸気機関車風のライドなどもあり、子ども連れの旅行にはピッタリだ。
ルート66関連では、バーストゥ駅が鉄道博物館となっており、「ルート66マザーロード・ミュージアム」を併設。こちらはクラシックカーや古いアメリカ製の家電などを多く展示しており、アメリカらしいデザインなどを学ぶにはうってつけ博物館となっている。
さらにバーストゥからさらに南西に30分ほど走ったヴィクターヴィルにも「カリフォルニア・ルート66ミュージアム」がある。どちらもクラシックカーやビンテージものの電化製品など「古き良きアメリカ」を感じられるアイテムが大量に展示されている。
また「カリフォルニア・ルート66ミュージアム」には、ルート66グッズなどの土産物も充実。まとめて2軒の博物館をハシゴすれば、アメリカの歴史を体感できると共に、記念の品も購入できるためルート66を満喫できるはずだ。
ヴィクターヴィルではフェアフィールド・イン&スイート ヴィクターヴィルに宿泊。作業デスクも広く、旅をしながら仕事もしている自分としては、非常使いやすい部屋だった。
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バーストーからの道をたどり太平洋岸へと近づくにつれ、砂漠の乾燥した景色とは打って変わって、現代的ではあるものの、落ち着いた歴史と文化の香りを感じられるパサデナまで移動してきた。
パサデナは、元々は農業コミュニティとして発展し、特にオレンジ畑が有名だった町。「オレンジ・グローブ」という名の通りが今も残っているほどで、街の歴史を感じさせる。観光も古くから盛んで、特に中西部からの避寒地として人気を博していたという歴史も持つ。あの有名なローズ・パレードがここで行われるのも、そうした背景があるからだろう。街全体に漂う上品で静かな雰囲気が心地よかった。
パサデナでの滞在で、まず外せないのがローズボウル・フリーマーケットだ。これは単なる買い物の場というより「体験」そのもの。その規模と活気には圧倒された。
NFLなどの試合も行われるスタジアムのローズボール外苑の広大なエリアを使って開催されるこのフリーマーケットには、レアなアンティーク品、レトロなファッション、一点ものの芸術作品、手作りの工芸品など、見どころ満載の品々が所狭しと並んでいる。
55年以上の歴史を持ち、好奇心旺盛なコレクターから流行に敏感なデザイナー、さらにはハリウッドのセレブまで、2万人以上の買い物客が集まる。会場のあちこちにあるフードスタンド やフードトラック で美味しいものを食べながら、熱気の中を歩き回るの実に楽しい。開催は毎月第2日曜日なので、この日に合わせてカリフォルニアへ訪れるのもありだと感じた。
パサデナにあるノートン・サイモン・ミュージアムへの訪問も、静かで心満たされる時間が楽しめる。「傑作が息づく世界」 というキャッチフレーズがぴったりの場所で、14世紀から20世紀にかけてのヨーロッパ美術や彫刻のコレクションが特に有名。11世紀から現在までの貴重な書籍や写本、写真などの膨大なコレクションも収蔵されている。ドガなの日本人にも馴染みのある数々の素晴らしい芸術作品に囲まれ、静かに鑑賞する贅沢を味わえた。
またハンティントン・ライブラリーも見逃せないスポット。ここは「歴史、文学、芸術、そして自然界が融合し、変革的な体験を提供する場所」と謳われているとおり、非常に多様な魅力がある。
特に総面積約48万6,000平米という広大な植物園は、デザート、日本、中国といったそれぞれ趣の異なったテーマの庭園が12もあり、まるで世界中を旅している雰囲気が味わえ、歩いているだけでも飽きさせない。
街の雰囲気としては非常に歩きやすく、近代的なショップやレストランが、19世紀後半から20世紀初頭にかけての美しい建築物と見事に調和している。街歩きをしていて、アメリカの都市としては安全だというのが印象的で、気軽に街中を散策できる快適さがあった。食事の選択肢も驚くほど豊富で、650以上ものレストランやカフェがあるというから、退屈しないだろう。
宿泊した「AC Hotel Pasadena」は、今年オープンしたばかりの新しいホテル。ちなみにドジャースタジアムはロスアンゼルスとパサデナの中間に位置しているので、パサデナからもアクセスしやすい。
ちなみにパサデナはハリウッド映画のロケ地としても使われることが多く、今回はバック・トゥ・ザ・フューチャーの劇中に登場した「ドクの家」ことギャンブルハウスを訪問。ここ以外にも調べてみると、いくつかバック・トゥ・ザ・フューチャーのロケ地があり、それを回る現地ツアーもあるようなので、興味のある人は調べてみよう。
パサデナから移動した旅の最終目的地はサンタモニカ。パサデナの落ち着きとは異なり、こちらは活気あふれる海岸沿いの街だ。象徴的なサンタモニカ・ピアに立つと、目の前に広がる太平洋に旅の終わりを感じる。
ピアの上にあるパシフィック・パークは、西海岸で唯一桟橋にある遊園地だ 。ここでではルート66をテーマにしたジェットコースター「ウェスト・コースター」や、世界初のソーラー観覧車「パシフィック・ウィール」が楽しめる。パシフィック・ウィール乗ってみたが、サンタモニカの街を一望でき、遊園地の観覧車と行っても侮れない体験だった。
このサンタモニカ・ピアにはルート66の「End of the Trail」の標識が建っており、フォトスポットとして人気だが、実はこの標識は観光用。正式な終着ポイントはサンタモニカ・ピアから2ブロックほど離れた、リンカーン・ブールバードとオリンピック・ブールバードの交差点なので、ルート66が目当てで訪問しているなら、どちらも逃さないようにしたいところ。
この正式な終着点の交差点にあるのが、「メルズ・ドライブイン」というダイナー。ここが撮影として使われたわけではないが、ジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフィティ」の舞台となったダイナーの支店で、古いアメリカを感じながら食事ができる絶好のレストラン。
「ルート66バーガー」という、名物バーガーもメニューにあるので、サンタモニカでは絶対に訪れたいレストランだ。
サンタモニカでは、フェアモント・ミラマー・ホテル&バンガローズに宿泊。バンガロータイプの部屋に宿泊したが、テラスもあり、気候のよいサンタモニカの空の元、ゆったりとした時間を過ごせた。さすがハリウッド・スターにも愛されたホテルだ。
パサデナの歴史と文化、そしてサンタモニカの海岸線の活気とルート66の終点という象徴性。カリフォルニア南部の旅の締めくくりにふさわしい、魅力的な二つの街での体験となった。カリフォルニアに訪れた際は、絶対外せない街で何度も来てみたいと思わせる、魅力的な街だった。
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このカリフォルニア・ルート66を巡る旅は、単に移動するだけでなく、アメリカの歴史、文化、そして多様な風景を深く体験できるものだった。ルート66沿いの象徴的な場所を訪れることで、「マザーロード」がかつて人々の移動や文化交流に果たした役割を肌で感じられる。乾燥したモハーベ砂漠の広大な景色から、歴史的な町並み、カリフォルニア南部の魅力がこれでもかと味わえるルートで、まさに「アメリカ」を象徴するような旅の体験だった。(取材協力:カリフォルニア観光局、グレーターパームスプリングス観光局、カリフォルニアデザート観光局、インランドエンパイア観光局、パサデナ観光局、サンタモニカ観光局)