
東横INN、大阪エリア33店舗で「GOGO大阪!応援価格」を設定 5月5日から6月30日チェックインまで
中国の内陸部、四川省北部アバ・チベット族チャン族自治州に位置する九寨溝(きゅうさいこう)。ユネスコの世界自然遺産にも登録されている景勝地で、季節によって表情を変化させる山々と、時間によって色が変化する透き通った湖が魅せるコントラストが人々を惹きつける。
ヒルトンの調査によると、アルファ世代(2010代半ば生まれ以降)とZ世代(1990年代半ば〜2010年代前半生まれ)が旅行のあり方を再定義する傾向があるという。アジア太平洋地域では旅行先として中国が上位にランクインし、休暇シーズンにあたる2024年12月〜2025年1月の中国国内のホテルの予約数にも反映されるなど、人気のディスティネーションになりつつあるという。
日本人に限ってみても、アルファ世代とZ世代の81%が旅行の計画に積極的に関与し、主導権を握る傾向があるという結果だった。若年層の68%が年に1回以上の旅行を計画し、旅行をご褒美や個人の成長機会として捉える傾向にあると分析している。世界的に目を移せば、忙しい日常から離れる「スロートラベル」の支持が拡大し、文化を学ぶ体験を重視することや、アクティブな活動やリラクゼーションを求める傾向が強まっている。
そのようなトレンドを反映した目的地として人気が出てきているという、九寨溝に向かった。前編ではアクセスやホテル、リゾートについて、後編では九寨溝自然保護区やチベット族についてお伝えする。(取材協力:ヒルトン)
■
ヒルトンが主催した今回のプレスツアーは、日本から九寨溝への玄関口である成都に向かい、1泊。翌日に九寨溝へ高速列車で移動して4泊、その後は復路のフライトの都合で成都に1泊する、6泊7日のスケジュール。
東京と成都の間は、四川航空の1日1往復でしかアクセスできなかったが、3月21日から中国国際航空が復便し、現状は週5往復を運航している。かつては全日本空輸(ANA)も運航していたが、運休が続いている。
中国政府は日本人の短期滞在ビザを2024年11月から免除しており、渡航のハードルは低くなった。成田を夕方に出発し、約5時間半かけ、成都には夜9時ごろに到着。空港では至る所でパンダにお迎えされ、パンダの故郷に来たことを実感させられる。
九寨溝へは翌日、成都東駅から高速列車で移動。十数年ぶりの中国での列車移動だったが、いまや長蛇の列の窓口に並ぶことなく、旅行代理店のウェブサイトでチケットを購入し、パスポートを読み込むだけで乗車できる。途中駅にも停車するが、ほぼ100%が九寨溝最寄りの黄龍九寨駅まで行く観光客だった。
陸路でほぼ丸1日をかけるか、非常に高価な空路以外に選択肢がなかった九寨溝へのアクセスは、高速列車の開通と、今年全通する高速道路によって劇的に改善した。高速列車では成都から最寄りの黄龍九寨駅まで最速1時間半、そこからホテルまでは車で1時間かかるが、自然保護のため開発ができなかったことが理由だという。
成都のホテルを出発して約5時間半かけ、午後3時半に九寨溝を代表する高級リゾートホテルの一つであるコンラッド九寨溝に到着。このホテルは中国政府系の中国グリーン開発グループ(CGDG)が開発し、2021年10月にオープン。
九寨華美勝地旅遊度假區(Jiuzhai Beautiful China Resort)の一角を占め、隣接地にはヒルトン九寨溝リゾート、ヒルトン・ガーデン・イン・九寨溝を含む複数のホテルが位置しており、予算や目的などに応じて滞在先を選択できる。
客室数は161室で、26棟のヴィラから構成され、ダイナミックな景色に調和し、チベットやチャン族の文化的要素を取り入れたデザインが特徴だ。コネクティングルームも用意され、グループから少人数の旅行まで対応している。
GMのLarry Gao氏によると、閑散期であっても他のホテルと比べて稼働率は好調だといい、オーナー企業による積極的な投資により高いサービスレベルを維持していることも一因だという。日本からのツアー客は3泊程度が平均で、2019年から日本での営業活動を行っていたことや、直近のビザ撤廃により回復基調にあるといい、「必ずご満足いただける」と胸を張る。
チベット舞踊で歓迎を受け、電動カートで客室に向かう。客室内もチベット文化を取り入れた、落ち着いたデザイン。バルコニーからは雄大な山々を望める。3月下旬は日中は暖かく、バルコニーで過ごすには心地よい気温だった。
自然保護の観点からペーパーレスや使い捨てプラスチックの削減を進めており、紙の印刷物はデジタルに置き換えられている。シャンプーやボディソープは大型ボトルを配置している。固形石鹸は消毒の後に再成形され、年間約672キロの石鹸から670個の新たな石鹸にリサイクルされ、スタッフエリアで活用するほか、寄付も行われている。
客室の使用状況や自然光に応じて明るさや色温度を自動調整する調光システム、電動カートや電気自動車の充電ステーションを設けるなど、グリーンエネルギーやエネルギー効率の向上に向けた取り組みのほか、2024年5月にはボイラー熱回収システムを導入し、ボイラーの排熱を温水や空調システムに活用し、二酸化炭素のほかコストやガス使用量の削減もつなげている。
チベット族の雇用も積極的に行っているほか、障がい者団体とのパートナーシップにより、地元の布製品や刺繍製品を展示・販売するなど、地元コミュニティとの取り組みにも力を入れている。
料飲施設は、オールデイダイニング「M'EAT」と「BAS.IN」の2か所で、どちらも同じ建物にある。客室からは徒歩か電動カートでアクセスできる。
「M'EAT」ではヤクや地元食材を活かしたグリル、「Ba.sin」では朝食バイキングを提供している。どちらも自然光が差し込む、開放的なレストランで、景色を眺めながら食事を楽しめる。はちみつやウツボ、季節の果物や野菜などの地元食材を調達することで、チベット族のコミュニティをサポートする。
■
リゾート施設内には、チベット文化を学び、体験できるチベット・チャン族無形文化遺産博物館も設けられ、チベット文化について学び、体験できるプログラムが用意されている。
チベットの伝統的なお香を作る体験では、高地で採取された紅花、八香、白檀など、通常は5種類から6種類の原料を調合し、原料を魚樹と水を少しずつ加えて混ぜ合わせる。その後、牛の角を使った伝統的な道具を使って成形し、数日間陰干しさせて乾燥させれば完成となる。牛の角を使うことで、薬草の薬効を保護できると考えられているとか。
空気の浄化や殺菌、消毒に役立つとされており、チベット医学でも活用される。かつては病院が遠かったことから、風邪や咳などの病気を治療する主な手段だった。
原料の採取には生態系への配慮や時期にも制約があり、例えば、政府が定めた時期に採取し、一度採取した山では数年間は採取できないという。これは国の保護対象となっている原料があるためで、制約を守らない場合には違法行為として投獄される可能性もある。
こういった手間や制約から、市場で売られている「本物」のチベット香は高価だという。一方で安価なものは、化学的な香料が使われていることがあり、人体に有害なものが含まれている危険性もあるという。
チベット族の貸衣装も用意されており、着用して写真撮影が含まれたプランもある。繁忙期には大人気だという。(後編に続く)