
フィンエアー、ストライキで約100便を欠航 5月5日に
「株主優待券、持っていても使わないんだよな…」と、知人は言う。全日本空輸(ANA)も日本航空(JAL)も、上級会員ほどは搭乗しないものの、出張でもプライベートでも利用するが、ここ数年「株主優待」は利用しなくなったという。
国内航空各社は、航空券の運賃が割引となる株主優待制度を実施している。特にANAとJALに絞っていえば、国内線がおおむね普通運賃の半額になる、株主優待運賃の存在が最もよく知られている。
だが、その株主優待が今人気がない。なぜか。いくつか理由があるが、「航空会社の都合」によるものを挙げよう。
株主優待券で搭乗できる席数は各航空会社が決めており、設定基準は公表されていない。このため、人気のある便の空席は基本的に株主優待がないと考えるのが定説。そして人気がある前後の便は、普通の割引運賃は設定されているのに、株主優待で乗れない、というのもザラだ。株主優待券を入手すれば、必ず飛行機に半額で乗れるわけではなく、実際には「航空会社の都合」に大きく左右されるのだ。
だが、これは今に始まった話ではなく、少なくともここ10年くらい変化がない話である。では、なぜここ1〜2年で人気がなくなったのだろうか。
ANAとJALは、コロナ禍以降、定期的(ほぼ毎月のペース)で国内線のセールを実施している。直近でのセールでは、ANAとJALが4月上旬に実施した。ANAは東京~大阪間の株主優待運賃(大人・普通席)を12,600~13,800円で設定しているが、4月上旬のセールでは7,000円に設定した。JALもほぼ同様の株主優待運賃に対して、セールでは7,700円だった。
もちろん、株主優待運賃とセール運賃は大きく異なる。株主優待運賃は購入後の変更ができるのに対し、セール運賃はできない。セール運賃は通常1〜2か月、ないしはそれ以上先の日程に設定されることが多いが、株主優待運賃では空席がある限り、いつでも予約することができる。
大きく利便性が違うことから運賃を一概に比較することは難しいが、とはいえ予約した便に乗ったら、受けられるサービスは同じ。株主優待券を持つ人限定の株主優待運賃よりも、誰でも(セール用の空席があれば)購入できるセール運賃のほうが大きく安価というのは、立場が逆転しているようにすら見える。
セールのお得感と充実した株主優待制度の両立ができるか、航空会社も悩んでいるのではないだろうか。
結果として、ANAとJALでは「株主優待離れ」が急激に広まっているといえよう。金券ショップでは両社の株主優待券が多く取引されるが、軒並み数百円程度で販売されている。買取価格は100円に満たないこともあるなど、明らかに人気がなくなっている様子だ。
とはいえ、両社ともにマイナーチェンジこそすれど、基本的な株主優待制度は変えていないままだ。セールのほうがお得に見えてしまう中、希望の便の席が取れるかどうかわからない「株主優待」が復権することはあるのだろうか。