東京から“3時間切り” 北陸新幹線敦賀延伸で福井は身近な旅行先になるのか

東京〜金沢駅間を結ぶ北陸新幹線が、3月16日に敦賀駅まで延伸される。最終的に新大阪駅まで繋がる計画の同新幹線が、全線開通に一歩近づく。

新たに開業する金沢〜敦賀駅間は125キロ。途中に小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、越前たけふの5つ中間駅が設けられる。ちなみに、金沢〜小松駅間の一部区間は白山総合車両所への回送線としてすでに機能しているため、新設工事区間は115キロとなっている。

▲JR西日本プレスリリースより

東京駅から敦賀駅まで直通する列車は計14往復。9往復が速達タイプの「かがやき」で、残りの5往復は各駅停車タイプの「はくたか」だ。また、北陸方面の区間列車となる「つるぎ」は、富山〜敦賀駅間で18往復、金沢〜敦賀駅間で7往復設定。敦賀駅で大阪方面の特急「サンダーバード」や名古屋方面の「しらさぎ」と接続する。このほか、特急と接続しない「つるぎ」が朝夜時間帯に上下計5本設定されている。

再速達列車は東京〜敦賀駅間を3時間8分、金沢〜敦賀駅間を41分で結び、東京・名古屋・大阪の三大都市圏〜北陸方面間の所要時間が短縮される。例えば、現在は特急「サンダーバード」が最短2時間31分で結んでいる大阪〜金沢駅間は、敦賀駅での乗り換えという“一手間”が増えることになるものの、22分短縮の2時間9分になる。

一方で、東京〜敦賀駅間は延伸後も米原駅経由のほうが早いためメリットは限定的だが、東京〜福井駅間を見ると現在の3時間27分から36分短縮され、2時間51分に。「関西の奥座敷」と呼ばれる芦原温泉も同じく東京から2時間51分と、ぐっと近くなる。所要時間が3時間を切れば、日帰り旅行先としても視野に入ってくるだろう。福井県は「東京をはじめ沿線地域との移動時間が短縮し、離れて暮らす家族との往来や、上京、帰省等が容易になる」と特に東京圏との往来拡大を意識している。

2月1日、開業に先立って行われた報道試乗会で、一足早く新区間を体験した。

観光客の姿が徐々に戻りつつある金沢駅。新幹線ホームの12番のりばから、ピカピカのW7系(W19編成)に乗り込む。

▲シールで隠された隣駅表示の「こまつ」の文字が開業の日を待つ

金沢駅を出た列車は、左手に白山総合車両所を見ながらぐんぐんとスピードを上げ、金沢平野を駆け抜ける。今回の試乗列車の途中停車駅は、芦原温泉、福井、越前たけふの3駅。小松、加賀温泉の両駅は通過する。

▲晴れていれば水郷風景が美しい木場潟(上り列車から撮影)

塩焼きそばが隠れた名物だという小松市。その中心の小松駅を颯爽と通り過ぎると、左の車窓には加賀三湖の一つ・木場潟が広がる。この日はあいにくの天候だったが、天気がよければその奥に白山三山が聳える姿を見ることができるという。木場潟の周辺には約1,300本の桜並木が続いており、開花の時期には水郷と白山三山、満開の桜が織りなす絶景を車窓から見られるかもしれない。

▲芦原温泉駅。東京駅から最短2時間51分でアクセスできるようになる

加賀温泉駅を通過して約6分、列車は芦原温泉に到着。温泉街らしさイメージしたという駅舎は地元産の木材が活用され、「和の趣」が強調されている。

▲新幹線・道路一体橋梁の九頭竜川橋梁。車窓からはかろうじて県道の照明柱が見えた

芦原温泉〜福井駅間では、福井県を代表する一級河川・九頭竜川を渡る。ここに架かる九頭竜川橋梁は、北陸新幹線とそこに並行する福井県道268号が橋脚を共有する、日本初の「新幹線・道路一体橋梁」として建設された。新幹線が県道の上下線に挟まれる形で走っているのだが、線路両脇の防音壁が高く、車窓から自動車との並走を見ることはできなかった。

▲福井市観光交流センターの屋上が“棲家”のフクイティタンの夫婦

福井駅は、再速達便も含めて全列車が停車する駅。「恐竜王国」らしく、駅舎は悠久の歴史と自然がコンセプトだという。停車中の車窓の外では、福井県内で化石が発掘された恐竜「フクイティタン」の夫婦が卵を見守っていた。

▲越前たけふ駅。地元の越前市は、大河ドラマ「光る君へ」の主人公・紫式部ゆかりの地として盛り上がりを見せている

福井駅を出ると、約9分で越前たけふ駅に到着した。延伸区間で唯一の新設駅かつ新幹線単独駅となるこの駅は、在来線の武生駅から東に約2.7キロ離れた場所に位置する。その隣には、名物の越前ガニ料理を提供する飲食店や観光案内所を併設した「道の駅 越前たけふ」が、駅よりも一足早い2023年に開業している。

▲シーズン中は道の駅にも越前ガニが並ぶ

駅前には約600台の無料駐車場が整備されており、新幹線開業に合わせてレンタカー店もオープンする予定。駅から約600メートルと至近の北陸自動車道・武生ICを活用することで、嶺北エリア観光の拠点としても機能しそうだ。

▲金沢平野や福井平野など、平坦な地形が続く金沢〜越前たけふ駅間(写真は福井〜越前たけふ駅間)

▲嶺北・嶺南エリアの境となる木ノ芽峠を中心に、山がちな地形になる越前たけふ〜敦賀駅間

金沢〜越前たけふ駅間は比較的平坦な地形を走っていたが、この先の越前たけふ〜敦賀駅間はやや山がちなエリアに入り、トンネル区間が増える。越前たけふ駅を出発して3つ目のトンネルは、延伸区間で最も長い全長19.76キロの新北陸トンネル。既設の鉄道トンネルとしては国内6位となる長さで、北陸新幹線では飯山〜上越妙高駅間にある飯山トンネル(全長22.251キロ)に次ぐ2番目の長さだ。金沢〜敦賀駅間は125キロのうち約38キロがトンネル区間だが、新北陸トンネルがその半分以上を占めていることになる。北陸新幹線はこのトンネルを最短5分で駆け抜ける。

新北陸トンネルを出れば、終点は目前。やがて敦賀市の街並みが見えてくると、列車は真新しい敦賀駅にゆっくりと滑り込んだ。北前船がモチーフというこの駅舎については、また別の機会でレポートしよう。

かつて上野〜福井駅間を結んでいた急行「能登」が姿を消してからは、東京圏との関係性が薄くなっていた福井県。敦賀延伸で以前よりも“身近な場所”になるだろうか。北陸新幹線がもたらすその効果に注目したい。