リミット52時間、4,600人の人海戦術 山手線を半分止めた渋谷駅工事の全容

11月17日から20日までの4日間にわたって、JR渋谷駅で山手線の一部区間運休を伴う線路切り替え工事が行われている。総作業時間は約52時間、作業にあたる人の数はのべ約4,600人という大規模な工事だが、どのような内容なのか。

渋谷駅周辺では現在、“100年に一度”とも言われる再開発事業が進行している。これに合わせてJR東日本は2015年9月から駅の改良工事に着手。埼京線と山手線のホームを揃えたうえで、内・外回りで分かれていた山手線ホームを同一化させる工事を、全5ステップに分けて行っている。

今回行われているのは、最後のステップとなる5回目。1月に行われた工事で1面2線化した山手線の線路とホームの高さを最大約22センチ上げたうえで、原宿方(北側)に約26メートル延長する工事だ。

▲工事前の状態

▲工事完了後の状態

これまで山手線と埼京線のホームは高さが揃っておらず、両路線の下を通る東西連絡通路にも最大14%の傾斜ができるなど、バリアフリー面でも課題があった。工事完了後は山手線と埼京線の高さが揃い、高さ約2.6メートル余り、幅員約22メートルを確保した、2本の自由通路が整備される。

▲現在の東西連絡通路。天井高約2.1メートルと低く、窮屈に感じられる

▲工事完了後には新たな東西連絡通路が2本整備される

工事は大まかに、線路の嵩上げ→ホームの嵩上げ・延長→架線の高さ調整の順で行われる。まずは18日に運休する外回りから着手し、19日は内回りを運休させて同様の工事を行う。週明け月曜の20日には、内・外回りとも始発から平常運転に戻る予定だ。

JR東日本建設工事部の伊東寛マネージャーによれば、線路の嵩上げ作業だけであれば、数日に分けて数メートルずつ夜間に作業することで、列車を運休させずに完了させられる。一方でホームの嵩上げ作業は、期間を分けて施工すると部分的に段差ができてしまうため、一気に全ての施工しなければならない。そのため、列車を運休させて日中の作業時間を確保することが必要なのだという。

ちなみに、外回りから先に着手するのにも理由があるという。「今回は山手線のホームを中央で仕切って半分ずつ工事を行いますが、内回り側のほうがスペースをやや広く確保できます。渋谷駅は日曜よりも土曜のほうがお客様の数が多い傾向にあるため、より広い内回り側を土曜(18日)に利用してもらおうというわけです」(伊東マネージャー)

工事が公開された18日午前は、嵩上げしたレールの下に作業員がバラスト(砂利)を入れ、4頭タイタンパーと呼ばれる重機で突き固める作業が恵比寿方(南側)で行われていた。また、反対側の原宿方では、ホーム表面の床材が外され、作業員がそこに木材を入れて高さを調整していた。渋谷を訪れた人からの注目度も高いようで、ホームを見下ろせる近くのペデストリアンデッキでは、足を止めて様子を眺める親子連れや若者がいた。

JR東日本によると、渋谷駅の改良工事では列車の運休を伴う作業は今回が最後。今後は、通常の夜間作業で仮設ホームを本設化する作業や、先般の工事で廃止となった旧外回りホームの撤去、六本木通り(国道246号)の南側に新たな出口を設置する工事などが進められ、最終的な完成は2027年度を目指す。大変貌を遂げる渋谷の街。その「変わりゆく瞬間」を目撃できるのは今しかない。

▲バラストを積んだ作業車両が到着

▲線路に散布されるバラスト

▲散布されたバラストをならす作業員

▲嵩上げのため表面の合板が外された外回りホーム

▲木材でホームの高さを調整する作業員

▲部分的に嵩上げされた外回りホーム

▲嵩上げされる区間は内・外回りそれぞれ約300メートル

▲スクランブル交差点からも作業員の姿が見えた