“そつなくまとまる”的表現がぴったりの「PLAZA IN NANIWA HOTEL」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(17)】

新型コロナが5類感染症に移行してからインバウンドは活性化し、全国の観光地は外国人観光客で溢れることも珍しく無くなった。先日も東京は築地の場外市場へと赴けば、ここは日本なのか?と疑いたくなるほどに様々な言語が飛び交っていた。それに伴ってだろうか、料理の価格もずいぶんと値上がりした。約1万円もする雲丹丼に外国人が行列していた。

西成にもかなり外国人の姿が戻ってきた。と共に、日本人の若いカップルも見受けられるようになり、コロナ禍以前の雰囲気がそこにあった。もっとも治安面では十年前と比べて格段に良くなっている。比較対象が難しいが、今はそんなに危険とは思えない。

毎月のように西成のホテルに宿泊しているのは、街の独特な雰囲気も魅力という点も確かにあるが、一番の理由は低価格だから。一人ゆえに泊まれさえすればどこでも良いというのが本音。と言っても仕事上、カメラ機材一式やノートパソコンなどがあるのでドミトリーやカプセルホテル、ネットカフェでは少し抵抗があり、個室を選んでいる。

今回宿泊したのは「PLAZA IN NANIWA HOTEL(プラザ イン ナニワホテル)」。

結論から言うと現時点ではちょっと違ってしまったのだが、ネットで検索して発見した時は、とてもお値打ちと狂喜したほど。僕が宿泊した日は1泊素泊まりシングルで3,000円(税込)。

場所は大阪府大阪市西成区花園南。南海電鉄新今宮駅から南方向へ徒歩20分。最寄り駅の天下茶屋駅からだと徒歩4分。

到着したのは20時すぎ。小綺麗なビジネスホテルといった外観とロビーだ。常備傘は少し乱雑な感じもするが、廊下も壁も清潔感があり、すっきりとまとまっている。

フロントで記帳をすれば、カードキーを渡された。

やや気になったのは、妙に日本的な絵画が飾られていたり、と思えばLINE FRIENDSの大きなコニーらしきキャラクターがいたりと統一感が無い点。

エレベーター前の人形は、夜中だと怖いかもしれない。

ホテルの良し悪しはエレベーターにも顕著に表れる。荒んだホテルになるにしたがってエレベーター内に傷があったり、落書きされていたり。中には行先を示すボタンが割れていることもある。こちらは全くそういうことがなく、綺麗だ。

そして指定された部屋のある4階の廊下も至って普通というか、清潔。

カードキーを扉のドア上部にあるブルーのライトにタッチすれば、ロックが解除されるシステム。部屋に入れば壁のボックスにカードキーをイン。そうすればライトが点く。

ちょっとちぐはぐだな、と感じたのはカードボックスが漢字表記&英語、それと開・閉が逆。

つまりは開のほうに傾けないと閉められない(汗)。

部屋自体は快適だ。ベッドは簡素な作りとはいえ、いつもの西成ホテル3畳一間バストイレ共同のことを思えば部屋自体の広さも確保されて快適だ。

実は部屋の中を見るまで、少し不安だった。というのは楽天トラベルでもじゃらんでもそうだが、クチコミを見たら「ほこりだらけ」「カビ臭い」などの低評価もあった。だが杞憂だった。もっともクチコミも「良かった」という高評価もあったので、改善されたか、もしくはラッキーな部屋に当たったかは、分からない。

ちなみに「壁が薄い」「通りの喧騒が酷い」的な文字もあったが、僕の宿泊した部屋では特段、感じなかった。

部屋の設備もきちんとしていた。

壁に設置されたテレビ、冷蔵庫はおろか、加湿空気清浄機まで。エアコンは独立型。電気ケトルも、ドライヤーも常備されている。

欠点を言えば、ドアスコープにカバーが無く、手持ちのシールで目隠しをしなくてはいけない点、スリッパが使い捨てタイプでない点、ハンガーが2本しかない点、パジャマ(浴衣、ガウンなど)が無い点。

でも、至る所にコンセントがあり、便利だ。もちろん無料Wi-Fiも使用でき、試しに速度を計測したら、150Mbpsも出ていた。

しかもバストイレ付き。

リンスインシャンプーではなく別々のほうが良いとは思ったが、トイレはウォシュレットだし、なによりカビ臭さが全く無い。

できれば歯ブラシだけではなく、使い捨てのシェーバーも欲しいところだが、金額的には仕方がないか。

さて、恒例の館内探検。とはいえ、ビジネスホテルゆえに洗濯機や乾燥機、炊事場などがあるわけではない。

でも、1階には喫煙所(全室禁煙)があったり、朝食会場(別途500円)があったり。特に楽しさは無いが、宿泊するには十分。徒歩2分のところにはコンビニのファミリーマートもあり、焼肉店や居酒屋なども周りに多い。

いつも宿泊している真の西成C級ホテルに比べれば、同じ西成区でもこんなに違うものかと感じる。まさに天国である。これで3,000円!と書こうと思ったが、9月や10月あたりを検索すれば1泊5,000円からになっていた。

さすがにこの価格だと超お値打ちとは言い難い。でも全国のホテルの相場から考えたら、まあまあお値打ち程度にはなる感じだろうか。あと、楽天トラベルの記載によると門限が23時だそう。

翌朝はチェックアウトが午前10時までなので、9時ごろに出発した。

特に手続きは必要なく、フロントの箱にカードキーを置くだけ。これは改善したほうが良い。性善説で成り立っているのだろうが、防犯カメラがあるとはいえ、置いてある他のカードキーを取って部屋に入って窃盗することも可能。返却は、外から取れないボックスに入れるほうが良い。

西成の朝は快晴だった。ホテルの周辺は住宅だったり、店舗や企業だったりと落ち着いているものの、数分も歩けばいつもの西成が戻ってきた。コンビニの脇では西成的な高齢者が座り込んで談笑していたり、ちょっと進めば露店を彷彿とさせる、洋服や日用品を売る激安商店が賑わいを見せ始めていた。

物価はどんどん上昇している。でも西成の労働者の給料は上がるのだろうか。

そもそも、年金生活者はこれからどうすれば。そんな事を、ふと考えた朝だった。

■プロフィール  
はんつ遠藤
1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊