入境制限撤廃も旅行者伸び悩み 香港政府観光局、日本人の「様子見マインド」指摘

香港政府は4月1日、域外からの渡航者に課していた出国前検査義務を廃止。日本から香港への渡航は完全に通常化した。これに合わせて香港政府観光局は4月18日、メディア向けの説明会を都内で開いた。

香港政府はコロナ禍以降、厳しい入境制限を続けてきたが、2022年9月26日に隔離を伴う検疫措置を廃止。ただし、入境後3日間は飲食店などの利用を制限する「医療観察期間」を設定していた。その後、同年12月29日はワクチン接種者を対象に医療観察期間を撤廃、今年2月6日には陰性証明の提示を条件にワクチン接種の有無にかかわらず入境を認めるなど、徐々に制限を緩和。3月1日には全てのマスク着用義務を撤廃、4月1日には入境者に対する出国前のPCR検査義務を撤廃した。

水際対策の緩和に伴い、香港政府観光局は2月2日から、世界から観光客を呼び込むための「Hello Hong Kong」キャンペーンを実施。しかし、3月の日本人旅行者は暫定値で約2万人と、コロナ禍前の2019年同月比で約13%に留まっている。

▲香港政府観光局 マーケティング・広報 蓑口寿生ディレクター

日本人渡航者数が伸び悩む要因について、同局のマーケティング・広報の蓑口寿生ディレクターは、円安傾向や航空運賃・燃油価格の高止まり、海外の物価上昇による「渡航費高騰」、渡航可否の判断を周囲の人に合わせてしまう「日本人の心理的特性」、2019年に発生した民主化デモなど「情勢不安視」という3つの消費者心理があると分析。今後のプロモーション戦略として、「安心して安全な香港へ」をテーマに、インフルエンサーやメディアを介した情報発信の強化や、一般旅行者によるSNS発信を促進する考えを示した。

▲2022年8月27日に車両や駅、施設が全面刷新されたピークトラム

香港ではコロナ禍の約3年間で、ビクトリアピークのピークトラムがリニューアルされるなど、観光面のアップデートが進んだ。西九龍地区にはビジュアル・カルチャー美術館「M+」、香港故宮文化博物館が開業。宿泊施設を見ても、ローズウッド、セントレジス、フラトンなどのラグジュアリーホテルが新規開業し、2023年も7軒のホテルが開業する予定。香港政府観光局の堀和典日本局長は「百聞は一見に如かず。できるだけ早いタイミングで新しい香港を体験してほしい」と呼びかける。

日本政府は5月8日に、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針だ。帰国者に対するワクチン接種証明の提示義務も撤廃される。堀日本局長は「大型連休後はコロナ禍前と同様の環境が整うことになる」と歓迎し、渡航者数の回復に期待を寄せた。同月には、香港国際空港を運営する香港空港管理局が日本人を対象に、香港行きの航空券を無償提供するキャンペーンを予定している。提供枚数や応募方法などの詳細は今後発表される予定だ。