N700Sがクラシック風に変貌 1日限定で登場した「麒麟百年新幹線」に乗ってきた

東海道新幹線に4月3日、N700Sの車内がクラシックに装飾された「麒麟百年新幹線」が1日限定で登場した。

この列車は、東海道新幹線「のぞみ」を号車単位で貸し切り、車内でイベントなどを開くことができる「貸切車両パッケージ」を活用したもの。JR東海が2022年12月から売り出している。今回は飲料メーカーのキリンビールが、缶チューハイの新商品「麒麟百年 極みレモンサワー」をPRするためにN700Sを1編成(J28編成)丸々貸し切った。

木目調の壁にシャンデリア

▲キリンビールの新商品PRで運行された「麒麟百年新幹線」

外観やデッキこそ普段と変わらないが、客室に足を踏み入れて目を見張った。車内は通常の雰囲気と打って変わり、濃紺とダークブラウン基調のクラシック風。天井や床を商品パッケージと同じ切子細工風のデザインに変えるだけでなく、壁の化粧パネルには木目調のシートを丁寧に貼り、ベルベット風のカーテンやシャンデリアを取り付けるという徹底っぷりで、まるでヨーロッパを走る豪華観光列車のようだ。

▲N700Sの壁にシャンデリアが並ぶ不思議な光景

シャンデリアはもちろんただの飾りではなく、しっかり通電され照明としての役割を果たしている。間接照明がある荷物棚は壁と同じ木目調のパネルで覆われているほか、窓にぴったりと貼られたシートは外からの光を遮っており、重厚なムードを保っている。

▲運行当日の大井車両基地での内装施工の様子(JR東海提供)

一体どれだけの手間がかかっているのかと思わず唸ってしまいそうだが、JR東海によれば、PRに使われた3号車と5号車の2両分の内装を、運行当日の朝から4時間程度で作り上げてしまったというから驚きだ。ちなみに作業は大井車両基地で行ったとのこと。運行翌日の4日には装飾が取り払われて通常の運用に戻っていることが確認されている。

食堂車を彷彿させるイベントも

▲東京駅で行われた出発式では、俳優の西島さん(右)が「麒麟百年、出発!」と合図

「麒麟百年新幹線」は午後2時51分東京駅発の「のぞみ399号」の臨時ダイヤで運行。駅の電光掲示板では「団体199号」として表示されていた。当日は新商品のCMに起用されている俳優の西島秀俊さんが東京駅に駆け付け、16・17番ホームで出発式を行った。

この列車にはメディア関係者のほか、抽選で選ばれた一般招待者10組20名が京都駅まで乗車した。キリンによると、一般招待枠には3,000名以上の応募があったという。車内では、キリンビールの田山智広マスターブリュワーが商品のコンセプトを紹介した後、新商品と食事やおつまみとのペアリング体験会が開かれた。商品デザインに合わせて装飾された背面テーブルにウイスキーグラスが置かれ、食事は黒いタブリエ姿のスタッフが席まで運んできてくれるなど、往年の食堂車を彷彿させる2時間半だった。

▲車内でのフードペアリング体験。濃い目に味付けられた和牛ローストと、鮮烈なレモンの香りが立つサワーとの相性が抜群だ

実は1両から貸切可能。卒業旅行や結婚式も

JR東海によれば、東海道新幹線の貸切車両パッケージが企業のPRイベントに使われたのは初めて。キリンによると、同社が100年以上かけて培った技術を注いだ“新ブランドの出発”となるイベントを、同じく100年以上の歴史があり旅の出発地の象徴である東京駅から行いたいとJR東海に打診。1月頃から調整を重ねて実現した。イベントの様子はメディアでも広く取り上げられ、新商品が世間に強く印象づいたことだろう。

ちなみに、貸切車両パッケージは1編成丸ごとではなく車両単位でも申し込み可能で、企業イベントだけでなく、卒業旅行や結婚式、パーティなどでも利用できる。料金などの詳細はJR東海ツアーズまたはJTBに問い合わせを、とのことだが、一味違う新幹線旅を満喫してみたいという人はぜひ検討してみては。

▲外観は通常のN700S

▲電光掲示板には「団体199」の表示

▲D・E席側の内装

▲壁面に取り付けられたシャンデリア。シートが写っていなければ東海道新幹線だと判別できないかもしれない

▲車端部のテーブル裏までしっかり木目調のシートが貼られていた

▲窓はシートで覆われているのでどこを走っているかわからないが、それもまた一興

▲背面テーブルにもお洒落な切子細工のデザイン

▲パーサーも同乗。カートにはもちろんキリンの新商品だけが並ぶ

▲フードペアリング体験で提供された前菜セット

▲運行当日の大井車両基地での内装施工の様子(以下2枚、JR東海提供)