展望大浴場も魅力の西成高級ホテル「HOTEL SUNPLAZA」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(13)】

旅行業界のコロナ禍における長い冬の時代は、そろそろ解消する感もある。だがJALやANAのマイレージを使用した特典航空券は、以前ならば相当先の日程でないと予約しづらかったのが、現在は直前でも予約しやすい状況。利用側としては嬉しいが、諸手を挙げては喜べない。

とはいえ、海外からの観光客、いわゆるインバウンドは加速度的に回復基調にあるようだ。大阪の黒門市場にも西成にもアジア系観光客が多くなった。

また大阪は西成へと向かった。昼間の案件を終えて大阪メトロ御堂筋線などの動物園前駅に到着したのは夜6時半ごろだった。冬のこの時刻は、すでに暗い。通りには家路に向かう人たちや周辺のホテルに滞在する観光客などが散見される。日雇い労働者の方は早朝から動き出すゆえ、昼間に比べればその数はずっと少ない。

今回の宿泊は「HOTEL SUNPLAZA」だ。連載1回目や前回と同じJUNON GROUPの1軒。1泊素泊まりで3,000円(税込)なので1,000円台を定宿としている自分にとっては通常ならば選択から外れる西成高級ホテルだが、まだ全国旅行支援の最中ゆえに3,000円が20%OFFの2,400円、そして平日なので2,000円分クーポン券が付くので、1泊実質400円とあって、こちらにも宿泊する事にしたのだ。

場所は南海電鉄新今宮駅改札を南側に出た右隣(東側)と、とても分かりやすい立地。JRと平行に東西に走る大通り沿い。通りの向かいには閉鎖されたあいりん労働福祉センタ-(あいりん総合センター)があり、今だ路上生活者が外で寝泊まりしているようだが、反対側ということもあり、さほど物騒な印象は受けない。むしろ、通りにはアジア系の観光客が数名単位で数組がうろうろしていたりして、ちょっとした異国情緒も漂う。
それにしても、美しさすら感じさせるホテルだ。特に夜は、前面がガラス貼りになったロビー(コミュニティースペース)が明るく輝いているのが通りからも見え、周囲に安全感と上質な空気感をもたらしている。

フロントデスクでチェックインを済ませてエレベーターで部屋のある階まで向かった。廊下も清潔感があり、好印象。いつも思うのだが、JUNON GROUPのスタッフの対応やきちんとした掃除の行き届いた雰囲気には敬服する。さすが3,000円。1,000円台のホテルとは“格”が違う。

今回も洋室のタイプを選んだ。部屋は3畳で、前回のSUNPLAZAⅡと基本的には同じ構造。エアコンもテレビも冷蔵庫もある。

ハンガーが2本しかないのも同じ。だが、前回のサイケデリック的な壁紙とは違い、モノトーンでまとめられたシックな雰囲気。あくまで好みの問題だが、僕としては前回のほうが好みだ(笑)

1,000円台のホテルだとタオルすらなく、歯ブラシのみというところも存在するが、こちらはフロントで歯ブラシとタオル、ティッシュの3点セットを受けとるシステム。ちなみにフロントでは延長コードや充電器、耳栓を無料で貸し出してもらえる。バスタオルやカミソリ、洗濯洗剤、傘などは有料販売がある。

さて、恒例の館内探検である。ホテルは11階建てで2階~10階が客室。RF(11階)は男性大浴場。1~10階にはトイレがある。24時間使用可能なシャワーブースは1階(女性専用)、5階、6階、8階、9階、10階。2階~4階にはミニキッチンがあり、ガスコンロを使用する際にはフロントでガスコインを購入するようだ。

トイレは男性用とウォシュレットタイプで清潔感あり。シャワーブースも通常のタイプで、シャンプーやボディソープももちろん備わっている。そして、ブースを出たところにあるパウダールームには、きちんとドライヤーも常備。

エレベーターもステンレスを多用し、無機質だが上級な雰囲気だ。昭和的な激安ホテルになるにしたがって、質が落ちたり、落書きやキズなどの悪戯が増えたりする。エレベーターはホテルの格を瞬時に判断できる一番の鏡かもしれない。

さきほどの1階へと戻ってきた。奥には洗濯機&乾燥機の設置されたコインランドリーがあり、ロビーには電子レンジのほか、フリードリンクコーナーも。アルコール&ソフトドリンクの自動販売機のほか、フロント稼働時にはカップ麺やレトルトカレー、お菓子なども購入でき、外出せずに食料などを調達することも可能。

今回も夕食は部屋で済ますことにした。天気が次第に雨模様になりつつあるというのもあるが、全国旅行支援の2,000円分クーポンで居酒屋に行くことも考えたが、それはやはりお土産に使用することに決めた。ちなみにクーポン(アプリのみ)は近隣の小売店だと、南海電鉄新今宮駅改札内の「551蓬莱 南海新今宮店」や、たこ焼きなどの「てこや 新今宮駅前店」で使用可能。

ホテルを出て西へ向かえばすぐにコンビニのファミリーマートがある。その先には大阪を代表する激安スーパーマーケット「スーパー玉出」まで。弁当やアルコールなどを購入し、前回よろしく部屋で高さの合わないテーブルで、立ち呑み状態となった。

翌朝。チェックアウトは10時だったので、それまでに楽しみにしていたことがあった。それは大浴場。「HOTEL SUNPLAZA」の男性大浴場は10階にあり、公式ウェブサイトによると大阪を一望できる展望風呂なのだそう。素晴らしいのは夕方5時~深夜2時のほかに朝7時から10時までの間も入れる点。チェックインが夜6時半過ぎと周囲が暗くなった時刻だったので、一望できるのを楽しみに朝に向かったというわけ。

だが、考えることは皆同じ。アジア系観光客でごった返し、泣く泣く諦めざるをえなかった。こればかりはホテルのせいではない。インバウンドが回復したと喜ぶべきところだ、と自分を納得させながら、シャワールームを利用した。

チェックアウトをしたら、やはり西成は雨だった。

まだ寒さの残る午前10時。傘をさして歩いていたら、パトカーがいた。どんよりとしたちょっと重苦しい雰囲気の西成も、案外、好きだと思った。

■プロフィール  
はんつ遠藤
1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊