海外旅行前に要確認 MySOSのファストトラック機能が廃止、Visit Japan Webでの手続きをレポート

日本帰国時にこれまで利用できた入国者健康居所確認アプリ「MySOS」の検疫(ファストトラック)機能が11月13日で終了し、14日以降に入国する際のファストトラック機能は入国手続きオンラインサービスの「Visit Japan Web(VJW)」に完全移行される。これにより、検疫・入国審査・税関申告の3つの手続きがVJWに統合されることとなり、同サービスを提供するデジタル庁は「入国時の必要手続をひとつのサービスでスムーズに行えるようになります」と謳っている。

これまでのMy SOSでの入国手続きと比べて、使い勝手がどう変わったのか実際に利用して確かめてみた。なお、過去の情報となるが、My SOSでの帰国レポートについてはこちらの記事を参考にしてほしい。

VJWでのファストトラック申請の流れ

Visit Japan Web

そもそもファストトラックとは、海外から日本に帰国する際に空港で実施する検疫手続きの一部を、帰国前にウェブ上で済ませることができるというものだ。利用するにはワクチンを3回接種していることが確認できる証明書か、現地出国前72時間以内に検査した陰性証明書を取得していることが前提となる。

VJWを初めて利用する場合、まずはメールアドレスを登録してアカウントを新規作成することが必要だ。続いて、氏名や住所、パスポート番号など、利用者の情報を登録する。原則的に一人ずつ登録することが必須だが、一人で手続きができない乳幼児などは同伴家族として一緒に登録できる。

アカウントを作成したら、検疫・税関申告に必要な情報を登録していく。入国審査に関しては日本人は登録不要だ。まず、検疫の事前登録に必要な情報は以下の3つ。

・パスポート(顔写真ページ)
・質問票
・ワクチン接種証明書または陰性証明書

パスポートについては、顔写真ページをスマートフォンで撮影して登録。質問票は渡航先や帰国日などをウェブ上で回答する。ワクチン接種証明書は、3回分のワクチンの種類と3回目の接種日を回答したうえで接種証明書の画像(接種証明アプリのスクリーンショットでもOK)をアップロードすることになるので、必要な情報を事前に確認しておこう。

▲画面の指示に従ってパスポートやワクチン接種証明書を登録

すべての情報を登録したあと、内容に不備がないことが確認されれば、画面が審査完了を示す青色に変わる。同時にQRコードが発行され、空港ではこの画面を提示するだけで検疫手続きが完了する。登録の流れは従来のMySOSと全く同じだ。今回は登録から1時間ほどで青色に変わった。厚生労働省のサイトによれば、帰国便の到着予定時間の6時間前までに申請していれば、入国までに審査は完了するとのことだ。

▲申請前・審査中は赤(左)。審査が完了すると青色画面になる(右)

税関申告に関しては、紙の書類と内容は同じ。持込み禁止物の有無などをウェブ上で回答していくだけで完了だ。こちらもQRコードが発行される。

羽田空港で使ってみた

羽田空港 HND

今回の帰国時に利用したのは台北/松山発、東京/羽田行きのNH852便。サテライトの140番スポットに到着して降機すると、搭乗橋からターミナルに出てすぐのところで、VJWでの検疫事前登録が完了した青色画面の提示を求められる。ここではスタッフが目視するだけで、ファストトラック利用有無の区分に使うと思われるB6ほどのサイズのカードを持たされる。この青色画面の表示が従来のMySOSに比べて時間がかかり、15秒程度要することもあったので早めに準備しておこう。

その後は入国手続きエリアに向かってひたすら歩く。これまでは検疫のために遠回りさせられることもあったが、最近は直接進むことができるようになった。

入国審査の前に設けられたブースで先ほどのカードとパスポートを提示。スタッフが機械でQRコードを読み込むと、検疫手続きは終了。帰国後の注意事項が書かれた健康カードを渡される。その後の入国審査はパスポートを使うだけなので、VJWの出番はない。

▲検疫通過時に手渡される健康カード

最後は税関申告。電子申告専用のゲートが設置されているが、ここで注意したいのはVJWで申請しただけではこのゲートを通過できないということだ。このゲートを利用するには、VJWで事前申請してQRコードを発行したうえで、税関検査場にある電子申告端末でQRコードとパスポートを読み取らせ、顔写真を撮影しなければならない。

この手順が周知されていないようで、端末での顔写真の撮影を済ませていない状態でゲートに直接並んでしまう人が多く見られた。税関のサイトによれば、手荷物受取場で自分の荷物が出てくるまでの待ち時間を利用して登録してもらうことを見込んでいるようだが、そもそも端末に並び、ゲートにも再度並ぶという手間を考えれば、従来の紙の申告書を機内で書いて提出するほうが早い気がする(端末の案内スタッフもぼそりと「紙のほうが早いかもしれません」と言っていた)。

手続き自体はスムーズだが――

ちなみに、降機から到着出口までの所要時間は20分弱。午後5時10分に降機し、同35分発の京急線にギリギリ間に合った。ただし、大半は140番スポットからの移動に要した時間だったため参考程度に留めてほしい。

いずれにしても、ファストトラックを利用すれば空港での検疫手続き自体はスムーズで、所要時間はほとんど意識しなくてもいい程度だと感じた。ただ、この“QRコードを確認する”という作業のためだけに動員されている検疫スタッフの数は、筆者が目にしただけでも数十人は下らなかった。海外諸国では空港検疫措置が簡素化される中、多額の人件費を割いて現在の体制を続けている必要があるのかは疑問である。