デュアルハブ戦略は維持、羽田国際新路線は「なるべく早く飛ばしたい」 ANA宮川常務インタビュー【IATAAGM 2022】

6月19日から21日までの3日間、カタールのドーハで、国際航空運送協会(IATA)の年次総会(Annual General Meeting、AGM)が開催される。

開催を前に、全日本空輸(ANA)の宮川純一郎常務取締役に、年次総会の議題であるサステナブルへの取り組みや、日本の水際対策、路線戦略について話を伺った。

ーー今回のIATA年次総会は、3年ぶりの完全なオフライン開催になった。
昨年10月に、ハイブリッドでボストンで開催して、私はボストンにも行ったが、その時はまだ世界の航空業界やコロナの状況はまだら模様で、かなりたくさんの航空会社のトップも参加されていたが、参加されてないところもかなりあった。

今年は本当に久しぶりに完全なフェイストゥフェイスという形でやるので、非常に盛り上がると思う。本当に世界もコロナに関する状況が変わっていくな、という感じがする。

ーー今回の議題は、コロナ、ウクライナ問題、原油高と大きなトピックがある。
これだけ大きい国土の国なので、ロシアの上空を通過できないのは大きい。原油価格などいろんな面で航空業界そのものにも影響与えている。なによりも航空業界そのものが平和の上、経済発展の上に成り立ってる業界なので、航空業界として、ウクライナの問題は非常に深刻な厳しい問題と捉えている。

ーーIATAはコロナ禍を経て、存在意義がどう変化したと感じるか。
この数年で、各企業個社の問題だけではなく、産業界全体で取り組まなければいけない重要課題、脱炭素と国際流動の回復という面で、IATAの存在意義は非常に大きくなったと思う。業界全体として、当然個社の競争もあるが、世界の業界全体を盛り上げていくにはどうしたらいいか。その中で、自分たちが存在感を発揮して、活動に貢献していく、あるいはプレゼンスを高くしていくということを、1つの大きなミッションとしてやっている。

ーードーハと日本を比べると、日本の水際措置の緩和がすごく遅れている感じがする。
日本も少しずつ、水際措置が緩和されてきて、少しずつ海外からの需要も回復途上にある。国際線は1日の入国制限、ビザの必要性、観光も少人数のグループツアーだけという状況で、他の国にはない制約が日本にはある。早く撤廃の方向に持っていってもらえることを期待している。

ーー今の国際線は、北米とアジアを結ぶ三国間需要に支えられている。日本人の需要の戻りはどのような想定か。
日本のローカルの需要より、太平洋路線はアジアとの接続需要が多い。元々の計画では、状況が回復してきてから羽田を優先して戻し、次に成田を戻す予定だったが、乗継需要、貨物需要が旺盛であることから、今は逆になっている。ローカルの需要はだんだん戻ってくると思うが、完全に戻るには時間がかかると思う。

ーー成田ハブが好調な中、アフターコロナの羽田・成田のデュアルハブ戦略をどう考えているか。
国際線のキャパシティを考えた時、羽田と成田の2つのハブを使うという戦略は中長期的には変わらない。今のところ、需要の完全回復は2023年度末くらいになると考えている。

国際線は、年度末までに約45%への回復を前提に計画しているが、実際は上振れの期待もあるものの、それでもコロナ前の半分。来年になると本格的に戻ってくる。国境が開いているところは戻ってきているが、中国がまだ難しい。2019年のインバウンドは3割近くが中国で、中国路線が多い弊社には痛い。

ヨーロッパの新路線(羽田〜イスタンブール、ミラノ、ストックホルム線)は、事業規模を一時的に縮小しなければいけないということで先延ばしにしてきた。貴重な羽田の発着枠を保全していただいている状況なので、なるべく早く飛ばしたい。

ANA Future Promise特別塗装機

ーーSAFやサステナブルに関する取り組みを強化していく必要性がある。2050年の温室効果ガス排出量実質ゼロという目標を掲げる中、どう取り組んでいくか。

国内ではJALと共同宣言、報告書を発表したり、スターアライアンスとSAFの共同調達の取り組みも進めている。脱炭素に対してスターアライアンスで委員会を立ち上げて、具体的な枠組みを検討していくという取り組みをしている。IATAでもサステナビリティのアドバイザリーカウンシルで具体的な政策作りをしていこうということで、1人メンバーを送り込んで、少し業界横断的な取り組みに参画していきたいということで進めている。