大国町のマンションリノベホテルは、超お値打ちだった「ホテルリリーフなんば大国町」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検特別編】

前回、「はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検」7回目では、1泊素泊まり1,500円(税込)のホテルから逃げ出し、別のホテルへと移った話を書いた。では、どこに変えたのか?今回は、それを「特別編」で紹介させていただく。

日頃から西成のホテルに宿泊しているのは、1,000円~3,000円程度と低価格な点もあるが、もうひとつは大阪メトロ御堂筋線なんば駅からも2駅の動物園前駅からすぐという立地の良さもある。翌朝にホテルを出れば、そこには日雇い労働者さんたちのパラダイスが広がっているものの、すぐに電車に乗れば、すでに日常の大阪。即座にOFFとONを切り替えて、仕事へと向かえる。

とはいえ、今回ばかりは別の街に移りたくなり、でも、さほど離れていない駅周辺で、すぐにチェックインできるホテルが欲しい。そこで僕は、いつもの楽天トラベルで検索。すると驚くことに、隣の大国町駅にしては激安のホテルを、すぐに発見してしまった。

大国町駅は動物園前駅となんば駅の間で、ここからでも徒歩数十分で着く距離。とはいえ、時刻は午後8時半すぎ。僕は一刻も早くに到着したかったので、動物園前駅から1駅、地下鉄に乗り、大国町駅に向かった。

それは「ホテルリリーフなんば大国町」。駅から北(なんば方面)へ徒歩約5分。くら寿司やパチンコARROWを超えた先で、国道26号線に面した大きめのホテルだ。

建物を見た瞬間、夜という事もあり、暗がりに燦然と輝く「HOTEL RELIEF」の文字とマークの煌びやかさにめまいすら覚えた。エントランスもスタイリッシュで、フロントの男女も素敵な爽やかさを醸し出していた。

これが、西成のある動物園前駅の隣駅に存在し、しかも当日というのもあるが、料金は1泊素泊まりで2,240円(税込)という低価格(通常は約2,500円)。

どうして、こんな低価格であるのか?僕は気になって検索すれば、グランドオープンは2014年6月。もともとは沖縄に本社のあるフェリーチェの運営だったが、2020年3月に破産。現在は大阪のStay Factoryが運営しているようだ。

ともあれ、僕からすればリーズナブルに真っ当な部屋に宿泊できれば、それにこしたことはない。カードキーのスタイルで、エレベーターもカードキーをかざさないと動かないシステム。安全面でも申し分ない。

そして部屋のあるフロアへと降りて気づいたのだが、真ん中が吹き抜けになっている回廊型の建物。もともとワンルームマンションなどだった建物をホテルタイプにリノベーションしたものだ。

ドアをあけて部屋に入れば、昔ながらのキッチンがあった。そしてセパレート型のバス、トイレ。

さらにドアを挟んだ奥の部屋には、きちんとリノベーションされたツインルームが(今回はシングルユース)。2014年創業ゆえに、数年が経過している感は確かにあるが、それでも丁寧にリノベーションされた室内で、価格からいえば何の文句も無い。

エアコン、テレビ、電気ポット、ドライヤー、スリッパなど一通りのものは揃っていて、ハンガーは4本なので2名だったら6本は欲しいところだが、シングルユースなので充分。

しかも木のタイプとともにステンレスタイプも設置されているのが好印象だ。(低価格のホテルに宿泊する人たちは、衣類を洗濯する事も多いため)

しかも、アメニティも充実である。

重箱の隅を突くように、あえてマイナス点を言えば、最近は西成のホテルにも多くなった“使い捨てスリッパ”もあると、衛生面から言ってとても嬉しい。

が、さきほどのホテルから逃げ出してきた僕にとっては、もはや天国を通り越して極楽である。さらに、今回は行かなかったがサウナつきの大浴場まである!(2021年8月6日時点では、コロナ禍ゆえに休止中)。

心が落ち着いたところで、僕は少しだけ館内を探索することにした。

エレベーターが1基しかないので、チェックインやチェックアウトなどで混みあった時は少し困るかなと思いきや、外階段があり、外に出ることは可能なようだ。

また、2階には広々としたダイニングもあり、朝食会場になる。その他、コインランドリーも。さらに1階にはコンビニのファミリーマートまであり、至れり尽くせり。

緊急事態宣言中で、外呑みもままならない大阪ゆえに、またアルコール類などを購入して、部屋飲みを開始。いつしか眠りについた。

翌朝、目が覚めれば、やはり部屋はスタイリッシュで素敵な空間が広がっていた。とはいえ、もともとマンションだった感は、部屋の窓を開けて日常の大阪を眺めれば、なんとなく伝わってくる。けれど、窓を閉めれば、また室内は素敵な空間。

チェックアウトの際のフロントの方も爽やかだった。これが2,240円ならば、同価格帯の西成のホテルに泊まる意味など、もはや無いかもしれない。

そんな事を考えながら、僕は荷物を部屋に置きっぱなしにしている西成のホテルへと、今度は歩いて戻った。隣駅とはいえ、徒歩約30分。徐々に西成的というか、日雇い労働者感が強まっていくさまざまな光景は、朝のちょっとしたアトラクションにさえ、感じた。

■プロフィール
はんつ遠藤
1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「Ontrip JAL」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊