山手線、1乗務でドア操作は何回? JR東日本が今夏始める「オンライン自由研究」

新型コロナの感染拡大が止まらない。残念ながら少なくとも緊急事態宣言地域に住む人は、この夏も気軽に外出できる状況にはならなそうだ。大人はさておき、夏休みを迎えた子どもたちは退屈な毎日を送っているかもしれない。

そうした中でJR東日本とびゅうトラベルサービスは、「夏休みの自由研究をテーマにしたオンラインイベント」と銘打ったコンテンツの展開を始めた。首都圏の乗務員区の社員らが独自に考案したテーマに沿って、普段はなかなか見られない車掌の仕事の裏側を1時間の生配信で紹介するというものだ。舞台は上野車掌区、さいたま車掌区、宇都宮車掌区、大宮車掌区、池袋運輸区の5か所。「目指せ 鉄道博士!! 〜夜も駆けるカシオペア・特急列車〜」、「車掌のひみつ探検〜車掌の謎を解き明かす旅〜」など、各乗務員区がそれぞれ趣向を凝らしたテーマでコンテンツを用意した。

「300 回の全集中!!~ドアさばき達人への道~」と題したコンテンツを企画したのは、首都圏交通の中枢・山手線を担当する池袋運輸区。世界的に見てもトップクラスの運行頻度を誇る同路線のドア操作を紹介するという。ちなみに「300回」という数字は、1乗務あたりにドアを操作する回数。山手線は全30駅で、各駅で開扉と閉扉の操作が1回ずつ。1乗務は5周なので、30×2×5で300回というわけである。1乗務で300回もドアを操作するのは「山手線以外ではなかなか見られない」(同運輸区の車掌)という。

生配信の中では、車掌役のほか利用客役とMC担当の社員が登場し、同運輸区内にある訓練用シミュレーターを使ってドア操作の一連の流れを実演。もちろん単純にドアを開け閉めするだけでなく、ホームの出発反応標識(レピーター)や、ドアの開閉状態を知らせる車側灯の説明など、自由研究の材料になりそうな要素も盛り込まれている。

▲寸劇でレピーターの役割を説明する車掌

オンラインの先には“リアル鉄旅”

一見、夏休みシーズン恒例の車両基地公開に行けなくなった鉄道好きの子どもたちに向けた企画かと思いきや、ターゲットは“幅広い世代”だという。イベントを主催するびゅうトラベルサービス ツーリズム推進本部の平松佑・地域連携部長は、今回のようなイベントを「鉄旅オンライン」としてシリーズ化する計画だと話す。展開の狙いは「鉄道が持つ魅力や身近さを感じてもらうこと」だ。

山手線 E235系

まずは第1弾として、「コロナ禍でも子どもたちの夏休みの思い出を少しでも楽しいものにしたい」と夏の自由研究を軸に据え、鉄道の仕事の裏側を見せることを考えた。旅に出ることが難しくなっている今、こうした新たなアプローチによって、子どもたちに鉄道旅行の楽しさを忘れないでほしいという思いがあるのだろう。各乗務員区の生配信は8月10日から順次始まるが、それに先立つ7日には、女子鉄アナウンサーの久野知美さんとホリプロマネージャーの南田裕介さんが、寝台特急「カシオペア」の車内から列車の魅力を熱く伝える無料生配信も行う。

今後は車掌だけでなく、駅や設備の仕事の裏側を紹介するコンテンツも構想中。平松部長は「鉄道だけにとらわれず、旅に誘うものであれば見せていきたい」と話す。「鉄旅オンライン」の先にはもちろん、“リアル鉄旅”の復活を見据えている。