新型コロナの”機内感染”、前後2列で確認か ドイツの研究者まとめる

新型コロナウイルスの世界的感染が継続している。また、このパンデミックの中で、感染状況にについて科学的知見が得られつつあり、ドイツの研究者らは、国際線の航空機内での新型コロナウイルスの感染についての研究をまとめている。

3月9日、イスラエルのテルアビブからドイツのフランクフルトまで運航された航空機に、1週間前に感染者と接触した旅行者のグループが搭乗した。旅行者らは搭乗前に新型コロナウイルスの検査は行っておらず、マスクも着用していなかった。

搭乗した航空会社などの情報は明らかにされていないが、この機体は単通路機のボーイング737-900型機で運航されたとしている。乗客は102名であったとしている。

同区間を定期的に運航している2社の航空会社のうち、同型機を保有しているのはエル・アル航空。同社のページによれば、ビジネスクラス16席、エコノミークラス159席の乗客定員175名。座席配置図なども一致しており、エル・アル航空便であった可能性がある。

Coronavirus 乗客 感染状況

旅行者のグループは24名で、フランクフルト到着時にPCR検査を行ったところ、このうち7名が無症状を含め、感染していた。

グループ以外の78名の乗客については、9割強の71名に調査を実施していた。

乗客の感染状況

調査を実施した71名の乗客のうち8名には新型コロナウイルス感染を示唆するような症状があったほか、1名はPCR検査で陽性であり、フライトの前後では新型コロナウイルス感染者と接触していないとしている。この乗客については機内感染の可能性が高いとしている。

そのほかの症状があった7名の乗客はPCR検査や抗体検査などで陰性であり、これらの乗客は機内で感染していないとしている。

残りの63名は新型コロナウイルス感染の症状は出なかったが、このうち1名はPCR検査と抗体検査で陽性であり、機内感染の可能性が高い。また、63名中46名については、PCR検査・抗体検査ともに実施していないため、無症状の感染がおきていた可能性を排除できないとしている。調査を実施できなかった乗客7名や乗務員についても同様である。

日本の航空各社は、航空機内の空気の循環について周知している

日本の航空各社は、航空機内の空気の循環について周知している(画像:定期航空協会)

機内感染した可能性が高い乗客は、感染していた旅行者の前後2列以内に座っていた。この研究では、飛行前や飛行後での感染の可能性も否定できないとしながら、飛行中の感染であっても、天井から床、前方から後方への空気の流れが、感染率の低下につながっていた可能性があるとしている。

また、感染していた旅行者を含む乗客がマスクをしていたならば、感染率はさらに低くなっていたと推測している。しかし、SARSやインフルエンザの研究から、この新型コロナウイルスの感染でも、2列以上離れていた乗客からの感染や、空気感染の可能性も排除できないとしている。

この研究は、ドイツのフランクフルト大学のSebastian Hoehl氏らによりまとめられており、研究内容は英語で読むことができる