遠隔診療&ドローンで薬配送 ANAら9者が旭川で実証実験、一般道の横断飛行も

ANAホールディングスやエアロセンスなど9者は、旭川市でオンライン診療や服薬指導と連動した、ドローンでの処方箋医薬品の定温配送による非対面医療の実証実験を実施し、7月19日に報道陣に公開した。

旭川医科大学病院でのオンライン診療による処方箋に基づき、アイン薬局旭川医大店で薬剤師によるオンライン服薬指導を行い、医薬品を近くの特別養護老人ホーム緑が丘あさひ園までの約540メートルを、途中一般道を横断しながら、ドローンで届けるもの。これら一連の流れを一括で行うのは、日本で初めてだという。1年前からプロジェクトを開始し、当初は3月の実証実験の実施を予定していたものの、新型コロナウイルスの感染拡大により延期していた。

ドローンは、旭川医科大学病院の屋上から道路の手前まで自動で飛行し、車や人の通行がないことを地上の補助員が目視で確認して横断。その後は自動で緑が丘あさひ園前の芝生まで飛行、着陸した。届けた医薬品は「インスリン」とペン型注射器の注射針「マイクロファイン」で、合わせて95グラム。インスリンは一般的に2度から8度の間で保管する必要があるといい、医薬品保冷ボックスによって定温に保ち、温度ロガーによってクラウド上から温度を確認できるようにした。

冒頭の挨拶で、アインホールディングス業務サポート本部の土井由有子上席執行役員は、「医療問題は北海道だけでなく、日本全国で深刻な問題になりつつある。いままでの医療は100%マンパワーに依存していた」と現状の医療体制に限界があることを説明。オンライン診療や服薬指導、ドローンを組み合わせることで、深刻な問題になりつつある医療問題の解決につながるとした。ANAホールディングスのデジタル・デザイン・ラボの久保哲也チーフディレクターも、「コロナ禍の情勢で社会的な要請にこたえる意義のあるプロジェクト。将来的には事業化を果たした先に、北海道各地、日本各地への展開も視野に入れていきたい」と意義を強調した。

通院による新型コロナウイルスの感染リスクのほか、深刻化する過疎地での医療の提供、10年で訪問診療数が3.5倍となっている一方で、医療従事者が不足していることなどの様々な課題を克服することも目的としている。

今回の実証実験では、現行の航空法に基づいてドローンを飛行させるため、出発地と到着地にフライトディレクターが1人ずつ、補助者が8人の計10人必要だった。事業化にあたっては、安全性を担保し、国の許可を得た上で補助者をなくすことや、現在の飛行ルートごとに申請をするのではなく、エリアごとに許可を得られるようになる必要性もあるとした。

ドローンは計画に基づいた自動飛行のほか、手動による飛行も可能。飛行禁止領域への侵入防止や、自動帰還・着陸といった安全機能も備えている。飛行時間が最大20分、動作環境温度がバッテリーを除いてマイナス10度から40度であることなど、実運用時にネックとなる部分もあった。

事業主体は経済産業省北海道経済局で、事業の取りまとめとドローンの運航をANAホールディングス、オンライン診療を旭川医科大学、オンライン服薬指導と配送対象物の提供をアイン薬局が担った。ドローンや技術者はエアロセンス、温度管理サービスはトッパン・フォームズが提供し、日通総合研究所が事業支援、旭川市と緑が丘あさひ園が実験に協力した。