「Go Toキャンペーン」延期で想像以上の悪影響 廃業や倒産は不可避か【永山久徳の宿泊業界インサイダー】

2020年6月12日 金曜日 11:45 AM

ちなみにインバウンドの中断も、一般の方には「バブルで増えた外国人が減って元に戻っただけ」と見えるだろうが、ここ数年でインバウンドは日本有数の「輸出」産業になっていた。GDPだけで比較すれば、日本の国防費、もしくは教育関連予算がまるまる吹き飛ぶくらいの影響があったのだ。その分を国内旅行者の内需で賄うことは一朝一夕では無理だ。だからこそ国内需要の再スタートアップにあたり大規模なキャンペーンが望まれていたのだ。

キャンペーン実施が1日遅れることで巨額の経済損失が生まれる。数ヶ月遅れれば、日本中でその間に消える金はキャンペーン予算をはるかに超えるものとなるだろう。過度の中抜きを肯定するものではないが、急ぐためには相応の経費、委託費はどうしても必要だ。

例えば、旅行補助に1兆円が回るとして、そのうち30%を地域共通クーポンに充てるとする。3,000億円分の偽造防止策の施されたクーポンの印刷にどのくらい時間と予算が必要か、即答できる人が読者の中にどれくらいいるだろうか?全て1,000円券とすると印刷枚数は3億枚となるが、日本における千円札の発行枚数が今年度は18億枚弱だ。千円札2ヶ月分の印刷が即受注可能な業者を今から選定するというのに、元請けの入札すら中止しているのだからまるで現実味がない。その印刷業者だって緊急事態にあたり、製造ライン構築やスタッフ求人を行うので印刷費は相当割高なものになるだろう。ついでに言えば3億枚のチケットはどうやって全国に配送するのか?まさか郵便局には頼めないので警備会社の出番となる。全国の銀行に出入りする現金輸送車の2ヶ月分の予算に匹敵する費用がかかるはずだ。委託費が3,000億円と聞くと脳が沸騰する気持ちは理解できなくはないが、そのコントロールが可能な事業者にはスピード感も含め特殊な業務調達スキルが必要であることを考慮すれば、総予算の2割という委託費にはある程度の根拠があることを理解できるはずだ(過度の中抜きを肯定するものではないと再度念押ししておく)。

新幹線に乗るには在来線と比べてそれなりに割高なコスト負担が必要だ。人力車の方がコストは安いがトータルの便益でははるかに及ばない。指摘によるスキームの見直しにより、恐らく事務局費は大幅に削減されるだろうが、その代償は貴重な「時間」だ。委託費予算に反対した人はもう一度、事業の便益計算をすると共に委託費の妥当性を検証してみると良い。

「Go Toキャンペーン」の遅延は、「観光事業者=地方在住者」の今後に決定的な影響を与えることは間違いない。キャンペーンによる需要回復を条件に資金調達をしていた事業者はこれで確実に死ぬことになる。廃業、倒産が加速することも不可避だ。「Go Toキャンペーン」を政争の具にされることで、我々は生殺与奪の権を彼らに与える訳にはいかない。

1 2

メールマガジンを受け取る

以下の情報をお届けします
  • 選りすぐりのデイリーニュース
  • メルマガ限定クーポン
  • 激安セール開催の案内